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アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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中部山岳国立公園 後立山

50件の記事があります。

2021年10月25日白馬五竜高山植物園

中部山岳国立公園 福澤春彦

こんにちは、中部山岳国立公園管理事務所の福澤です。

先日の鹿島槍ヶ岳から五竜岳縦走で遠見尾根を下山しましたが、その際に五竜テレキャビン(ゴンドラ)のアルプス平駅にある白馬五竜高山植物園に立ち寄ることができました。

高山植物園責任者の坪井さんにお会いすることができ、園内を案内して頂きました。

<白馬五竜スキー場のゲレンデ内に造園された植物園>

白馬五竜高山植物園は長野県で初の「(公社)日本植物園協会」加盟植物園で、スキー場のアルプス平パノラマコース上に設園されています。

植物園と坪井さんには環境省も大変お世話になっており、ライチョウ保護増殖事業においてもライチョウの餌となる高山植物の栽培、(公社)日本植物園協会の保全事業として白馬山域における絶滅危惧種の保全、栽培、研究調査にもご協力頂いています。

<手入れ風景>

この植物園は、標高1500mを越えるスキー場の斜面、また白馬山系蛇紋岩の地質から高山植物が好む環境に近い適地だそうです。高山の花のエリアでは、長野県で標高2500m前後に生育するコマクサが見られ、最盛期にはコマクサ通りと名付けられた散策路で淡いピンクの絨毯が間近で観賞することができます。

また吃驚したのは、高低差数メートルの小山の地形を利用して標高3000mまでの植生を再現しているエリアです。その小山の頂上には標高3000mの標柱が建っています。山名は「白馬五竜岳」(有りそうな山名ですが実際はありません)。標柱をよく見ると"3000m相当"と書いてありました。ハイマツ帯があり、その上は森林限界を超えた地帯でイワギキョウ、イワベンケイ、タカネツメクサなど表札が立っていました。この植物園に来れば3000mまで登山した気分になるのは間違い有りません。

<高山の環境を再現した小山>

<標高3000m、相当>

ハイマツ帯にはライチョウも居ました!(ライチョウはくば君)

もう一つの特徴は、絶滅危惧種の栽培です。

北アルプス白馬周辺の限られた場所でしか生育しなくなってしまった植物を環境省と(公社)日本植物園が進める植物保全事業による許可のもと種子を採取し、この植物園で栽培しています。代表的なものは、タカネキンポウゲ、クモマキンポウゲなど。

<絶滅危惧種の栽培>

<様々な希少植物が栽培実験されていました>

このように希少植物の栽培にも実績があり、例えば動物園から餌としての植物栽培を依頼されることもあるそうです。実際、環境省のライチョウ保護増殖事業における餌を資源を確保する面からムカゴトラノオの提供をお願いしています。

<栽培されたムカゴトラノオ>

坪井さんにトラノオの栽培地を見学させて頂きました。そこは植物園を降りた里山にあり、マルチシートが張られた畑に栽培実験が始められていました。

高山植物は高山の厳しい環境でのみ育つと思っていましたが、標高1500mでも地質や斜面や手入れ次第でその環境を再現でき栽培もできることを知りました。

海外の高山植物もエリア化されており、ヒマラヤやヨーロッパアルプスの植物も観賞することができます。

登山しなくとも高山植物が間近に見たい方にはお勧めの場所です。

また遠見尾根を下山される方は是非ともご鑑賞下さい。

植物園は、綺麗な植物を観光客に観てもらう業務と同時に、その地の貴重な植物を保全するための研究も行っていることを知り大変勉強になりました。

坪井さんありがとうございました。

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中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

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2021年10月15日<2>後立山連峰縦走線歩道(鹿島槍ヶ岳から五竜岳)

中部山岳国立公園 後立山 福澤春彦

こんにちは中部山岳国立公園管理事務所の福澤です。

先日の船窪岳に続き、八峰キレットを通過する鹿島槍ヶ岳から五竜岳の縦走路を巡視してきましたので報告します。

9月29日、後立山担当管理官と登山口の扇沢出合より入山し爺ヶ岳を越え冷池山荘に入りました。扇沢出合から種池山荘まで、爺ヶ岳南尾根の東斜面に付けられた柏原新道を登ります。この登山道は山の斜面を利用して造られており、緩やかに高度を上げながら稜線まで達することできます。柏原新道は種池山荘、冷池山荘の(故)柏原正泰さんによって拓かれた爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳へのメインルートです。

<柏原新道登山口>

支尾根から取り付きやや急な登りですが、斜面に入ると歩きやすい勾配の登山道が続き、種池山荘に到着しました。

<歩きやすい登山道>

種池山荘では柏原さんから登山道整備や山小屋の近況などお話を伺うことができました。

小屋で企画した種池山荘オリジナルのピザがSNSや口コミで人気となり売り切れになるほどだそうです。

<縦走路の稜線上にある種池山荘>

https://kasimayari.jp/

<名物の種池ピザ>

種池山荘から後立山縦走線です。東に向かう縦走路は爺ヶ岳からは北へ、日本海に向かって縦走路は続きます。

登山道は整備され、岩稜帯の道ですが歩きやすいです。

ただし、爺ヶ岳南峰など広い尾根では視界が悪くなると登山道を見失う危険が潜んでいます。特に森林限界を超えた岩稜帯の広い尾根は登山道を外れないようマーキングや地図を頼りに進むことが必要となる場面があります。

<爺ヶ岳への縦走路>

爺ヶ岳南峰、中峰、北峰と越え冷乗越から軽く登り返すと冷池山荘に到着です。

冷池山荘ではコロナ禍でオリジナルな対応をしていました。

<冷池山荘>

https://kasimayari.jp/

それは宿泊客で外履き(サンダル)内履き(スリッパ)が共用されないよう、個々に下駄箱がセットされていました。多くの山小屋でコロナ感染症に対策できることを形にして実践されています。

<各人に割り当てられた下駄箱>

9月30日は快晴、真っ赤に染まる朝焼けと大パノラマを見ることができました。今日は縦走路の核心部である鹿島槍ヶ岳から五竜岳の岩稜帯を行きます。

<朝焼けの鹿島槍ヶ岳>

素晴らしい天気の中、布引岳(2683m)を越え鹿島槍ヶ岳南峰(2889m)に到着しました。縦走路の東は奥深い黒部の谷、そして谷を挟んで立山連峰から剱岳が常に見えています。振り返れば爺ヶ岳、遠景には穂高連峰から槍ヶ岳まで見渡せます。

<黒部の谷を挟んで聳える立山連峰>

<爺ヶ岳からの縦走路 遠景は穂高・槍方面>

ここまでの登山道は岩も安定しており、はっきりと"登山道"と認識することができ危険箇所はありませんでした。

鹿島槍ヶ岳南峰頂上で休憩を兼ね360度の景色を堪能し、ヘルメットと簡易的な自己確保ができるようスリングとカラビナを装着、いよいよ難路に入っていきます。

先ずは南峰を降るのですが、体感として登山道が一変したのが分かります。それは急斜度、岩の不安定、登山道脇の切れ落ちなど、ここまでの登山道から一変、危険だと感覚的に察知する必要があります。先日も南峰直下で滑落事故が発生したとのことで、冷池山荘のスタッフが現場確認に登られていました。

<鹿島槍ヶ岳南峰の降り>

鹿島槍ヶ岳北峰を通過し、いくつか岩場を越して縦走路最低鞍部に向かっていきます。写真のように急斜面、かつ浮き石もありますので落石を誘発しないよう注意深く丁寧に足を運ぶ必要があります。

<キレットに向かう岩稜帯の降り>

八峰キレットは高度感のある登り降りですが、鎖や梯子が付いていますので安全に通過することができました。このような場所では登山者のすれ違いが大きな事故に繋がりかねないので、お互いの状況を口頭で伝え、「進む」と「待つ」をはっきり確認することが重要です。不用意に行動すれば、すれ違うザックがお互い触れただけで足を踏み外すなど思いがけない危険が潜んでいるからです。

<八峰キレット>

<八峰キレットを越えキレット小屋を見下ろす>

キレット小屋は稜線上からのぞき込むと凄い場所に建っていることが分かります。

カクネ里氷河を見下ろす鞍部に張り付くように建っています。

鹿島槍ヶ岳と五竜岳を縦走する場合、ほぼ中間地点に位置しており登山者の安全を見守ってくれているような気がします。

小屋の営業は縦走両端の山小屋より早いため、事前の確認が必要です。

今年は10月2日で営業が終了しました。

キレット小屋より五竜岳に向けて大小いくつものアップダウンを繰り返しながら全体的には標高を上げていきます。口の沢のコルと呼ばれる平坦地で休憩した後、いよいよ五竜岳への登りです。この稜線は八峰キレット同様の難所と言われる稜線で、特にG5、G4(Gはグラードの略でドイツ語の岩稜の意味)と名付けられた岩稜帯はクライミングとクライムダウンが必要です。岩にはマーキングがありますので慎重に手足を運べば安全に通過できます。但し、岩場のマーキングは降りの際に見えにくいもので注意が必要です。

<岩場をいくつも登り降りしながら高度を上げていきます>

<G5とG4を越えて五竜岳に続く縦走路>

G4を登り切れば、あとはガラガラとした岩が堆積する急斜面を詰め五竜岳頂上(2814m)に無事到着しました。鹿島槍ヶ岳から五竜岳頂上までは、体力的にも技術的にも長野県が発表している「山のグレーティング」で上級者向け登山道であることが分かります。https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/gure-dexingu.html

頂上では雲で眺望は得られませんでしたが、新しくなった頂上標柱を確認できました。

頂上(G3)よりG2、G1、G0と岩稜の尾根を降って五竜山荘に到着です。

この頂上直下の岩稜帯と岩が詰まった狭い谷(ガリー)が遠目からは菱形に見え、有名な五竜の雪形「武田菱」となって現れます。

<五竜山荘>

https://hakuba-sanso.co.jp/yamagoya/goryusanso.html

五竜山荘は白岳と五竜岳の稜線鞍部に建つ山小屋で、遠見尾根や唐松岳方面からの登山者にとって重要な拠点です。

食堂でもコロナ感染症対策も徹底されており安心して登山者が宿泊できる山小屋でした。

最終日は、遠見尾根を降りました。

白岳から白馬五竜スキー場に続く長大な遠見尾根は、北アルプスの撮影ポイントとしても有名で沢山の登山客が往来するところです。

白岳直下に鎖場が数カ所あり、特に降りでは注意する必要があります。

<白岳下の鎖場は4箇所>

以降は尾根沿の登山道で、小さなアップダウンを繰り返す歩きやすい登山道です。

<遠見尾根の木製階段>

遠見尾根は、木製の階段や木道があり歩きやすいよう工夫のある施工がされています。

中には破損した箇所も見られましたが、安全に降ることができました。

最後は白馬五竜スキー場のゲレンデトップに出て今回の登山道巡視は無事終了しました。

<遠見尾根の木道>

<地蔵の頭ケルン>

今回の登山道巡視で、登山道は山小屋によって安全に維持管理できていることが確認できました。鹿島槍ヶ岳から五竜岳の縦走路では、鎖や梯子、また岩場のマーキングなど安全のための施工がされていました。但し、この長い距離(約4.5km)の岩稜帯を歩き通す登山者自身の歩行技術が前提となることは言うまでもありません。

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中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

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2021年10月15日<1>後立山連峰縦走線歩道(烏帽子から船窪)

中部山岳国立公園 後立山 福澤春彦

こんにちは中部山岳国立公園管理事務所の福澤です。

いよいよ秋の気配が感じられる今日この頃ですが、一足早い秋を迎えている後立山の登山道巡視を2箇所、2回に分けて行ってきました。

1箇所目は、急登と急降下を繰り返すうえ山の崩壊が激しいことから難路とされている烏帽岳から船窪岳の縦走路、2箇所目は、北アルプス岩稜帯縦走の代名詞の一つ八峰キレットを通過する鹿島槍ヶ岳から五竜岳の縦走です。

今日は烏帽岳から船窪岳の縦走路を報告します。

9月16日、登山口の七倉より入山し烏帽子小屋で後立山担当の管理官と合流しました。管理官は新穂高温泉より入山、三俣山荘に一泊したあと烏帽子小屋で合流です。

タクシーを利用される方が多いですが、歩いて源五郎沢トンネル(隧道)を抜けると視界に飛び込んでくる日本第2位の高さを誇る高瀬ダムは圧巻です。

大きな岩を積み重ねたロックフィル式ダムの法面をジグザクに車道を登り詰めるとコバルトブルーの高瀬湖が目の前に広がります。

<日本第2位の高さ ロックフィル式の高瀬ダム>

真っ暗な不動トンネルを抜けると目がくらむような白い情景が飛び込んできます。

真砂土です。まさに今回の巡視ルートの稜線が正面に見えますが、濁沢と不動沢から崩壊した花崗岩が風化した大量の真砂土が堆積しているのです。

<遠景は今回の縦走路 手前に真砂土が堆積>

電力発電への影響を抑えるため真砂土を取り除く大型ダンプカーがローテーションで何度も何度も運び出していました。

砂漠のような一帯を抜け濁沢を渡ると登山口です。ブナ立尾根は日本三大急登の一つですが、よく整備されており安心して登ることができました。

<ブナ立尾根登山口 標高毎に12の看板が示してあります>

烏帽子小屋の上條さんが中心となり登山道整備や縦走路の貴重なお話を伺うことができました。http://home.384.jp/eboshi2628vera/

<烏帽子小屋と烏帽子岳方面>

二日目は、管理官と二人で烏帽子から船窪の縦走路を巡視です。

烏帽子岳を左手に見ながら縦走路に立つと南沢岳から不動岳の間が崩壊し山の地肌が剥き出しになっています。崩壊地帯の稜線鞍部が南沢乗越で、ロート状に落ち込む濁沢へ崩壊した土砂が集まっています。

<南沢乗越の崩壊地帯>

近づいてみると、やはり年々確実に崩壊が進んできているようです。

登山道は稜線中心に付いていますが、稜線が浸食されたため今は安全を期して所々富山県側の樹林帯を通しています。しかし崩壊場所の際を通る登山道も存在しており、細心の注意が必要です。具体的には、岩稜帯の登山とは大きく違い、砂状になった花崗岩の斜面を登り降りするには登山靴の特性の一つであるフリクションを最大限活用し足裏全体が地面に接着すること、加えて小股で歩くことが肝要です。

<崩壊地を回避するため樹林帯を通る>

<崩壊地の際を通る登山道>

不動岳を通過し樹林帯の登降で安心したのもつかの間、今度は船窪岳までさらに難路となります。濁沢同様ですが上部の崩壊が全体的にロート状になった不動沢や支沢に向かって落ち込んでいます。

<不動岳から船窪岳方面の崩壊>

いくつかピークを登り降りして、最高点ピーク(2459m)からが一番の難所です。先ずはピークからの降りで補助ロープを頼りに30m強の急斜面を下降するところ。岩場だとクライムダウンとしてステップやホールドを繋ぎながら降りるのですが、砂化した花崗岩の崩壊した急斜面です。補助ロープがフィックスされていましたが、もしなければ自前のロープが必須となるルートです。

<補助ロープを頼りにトラバースする核心部>

<補助ロープを頼りに約30m下降する核心部>

さらに登りでは、崩壊地がリッジ状になっており整備された鉄パイプを頼りに対岸へ渡り、さらに尾根の取り付きに梯子を登り一安心する場所です。

<リッジ状の崩壊地は鉄パイプが組まれている>

<難所を越えて船窪岳となる>

船窪小屋による整備のおかげで登山道として通過できるようになっていましたが一歩一歩注意が必要な箇所でした。船窪岳を通過し七倉岳に向けて樹林帯の中を登り返すと船窪小屋です。登山者の安全を祈願する五色の旗(タルチョ)が迎えてくれます。

船窪小屋はランプの宿として有名です。長らく松澤宗洋さん夫妻が小屋を守ってこられましたが5年前に引退され、宗洋さんがこの8月25日他界されました、心よりお悔やみ申し上げます。

https://funakubogoya.net/

3日目は七倉への下山です。この七倉尾根はブナ立尾根に劣らず急勾配です。

特に樹林帯の急勾配箇所は、木々が登山道に露出しています。

<連続する樹木状の登山道>

晴れて木々が乾燥していれば急勾配の登山道で足がかり手がかりとして有効な木々も雨の日や濡れている場合は大変滑りやすく、最大限の注意が必要です。

梯子も連続するくらい急勾配の七倉尾根は、一瞬のスリップが大事故に繋がりかねません。特に降りの際は、注意深く歩きましょう。

<無事に七倉登山口に到着>

今回の縦走路は、全体的にアップダウンが激しく、登山道の大半で注意深く歩くことが必須となるため、体力的にも精神的にもハードな登山となります。

<アップダウンが連続する断崖を行く>

崩壊箇所は補助ロープや鉄パイプ、また梯子などが設置されており、登山道として通過することが可能であると確認できました。

しかし崩壊は今後も進み、樹木の根が崩壊浸食で辛うじて稜線に張り付いている箇所も散見されました。

この登山道は、北アルプス北部と裏銀座ルートを繋ぐ貴重な縦走路であることから、登山の重要拠点である烏帽子小屋と船窪小屋の情報に注視して下さい。

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中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

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2021年07月07日八方尾根の巡視報告

中部山岳国立公園 福澤春彦

こんにちは、中部山岳国立公園管理事務所の福澤です。

今回は後立山を担当する管理官のお手伝いで八方尾根を巡視してきました。

梅雨入りしている6月25日は、曇天で時々小雨、八方池に映る名峰聳える景色は残念ながら雲の中でした。今回の目的は八方尾根の登山道である黒菱唐松岳線歩道を巡視することでした。

北アルプス名峰の一つ唐松岳より派生する八方尾根は鎌池湿原上部からが国立公園で、スキー場としても国内有数の規模と景観を誇ると共に、グリーンシーズンにはスキー場リフトを利用したトレッキングに多くの方が訪れる地です。

<八方駅からゴンドラで一気に高度を上げます>

八方山までの南斜面は木道が整備されており、高山植物のお花畑を眺めながら無理なく標高を上げることができます。

まだ夏シーズンには少し早い時期でお客さんも少なく、ゴンドラもリフトもノンストップで乗り継ぐことができ八方池山荘に到着しました。

<黒菱唐松岳線歩道の案内看板>

3本目のグラードクワットリフト乗車中に見える1998年開催された長野オリンピック男子滑降スタート地点の標柱が目に入ってきます。

<整備された木道>

現地を日頃から巡視しているスタッフ2名と合流し、早速巡視開始です。

登山道、休憩ベンチ、トイレなどの確認とパトロール、現場にいらっしゃるスタッフのお話や情報はとてもありがたいです。巡視でいつも思いますが、現地に関わる様々な方達に国立公園は守られている事を実感します。

整備された木道は、大部分が斜面に施工されているため階段状(部分的には階段そのもの)であり、一般的な登山道と比べて容易に登り降りできる反面、木道ならではの気をつけて頂きたい注意点も潜んでいます。

<整備された木道>

例えば、濡れていると滑りやすい(靴もストックも)、斜面に対して左右に傾きがあると体幹を保ち辛く歩きにくい、その二つが同時にあると特に注意が必要です。

素敵なお花や景色が目に映ることと思いますが、一歩一歩、歩くことに集中しましょう!

安定した階段や木道を確認しながら、スタッフが通行止めにしている箇所に来ました。

木道と尾根ルートが合流する地点の少し先で、通行禁止の看板が立っています。

手前の合流地点より尾根ルートへ迂回して下さい。

<谷側に変形した木道>

写真の通り斜面に沿うように谷側に外傾しており、もし雨で滑りやすくなったとしたら慎重な歩行が必要な箇所です。毎年積もる大量の雪が斜面に沿って流下する際に大きな力が働き、地形や登山道を変形させてしまっています。

写真の木道は安全対策として修繕することになりました。

<通行禁止の看板>

八方池はまだ雪解けの途中でした。

歩道は破損も無くしっかりとしておりベンチやテーブルも綺麗で、天気が良ければ、ゆっくり景色を堪能しながらランチタイムを楽しんで頂けそうです。

<木道の休憩ポイント>

<今日の八方池>

お花の季節は始まっており、ユキワリソウやシナノキンバイが綺麗で、これから始まる色鮮やかなグリーンシーズンを待っているようでした!

<八方池のお花畑>

八方池までは、ゴンドラやリフトを乗り継ぎ木道を歩いてアクセスできますが、ここは標高2,000mほどの北アルプスです。

「カメラを忘れても雨具を忘れるな」、高所の天候に順応できる服装や装備を忘れずに

お越し下さい。

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中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

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2018年04月17日雪形(ゆきがた) 発達中

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

4月10日、長野県大町市からは爺ヶ岳(じいがたけ)、鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)など中部山岳国立公園の3,000m級の山々を望むことができました。

<大町山岳博物館前からのパノラマ。写真の右側が北、左側が南。北は白馬岳(しろうまだけ、はくばだけ)から南は大天井岳(おてんしょうだけ、だいてんじょうだけ)辺りまで望むことができます。>

<左:爺ヶ岳、中:鹿島槍ヶ岳、右:五竜岳(ごりゅうだけ)。鹿島槍ヶ岳と五竜岳は日本百名山に選ばれています。>

さて、これらの山々に、「雪形(ゆきがた)」が現れ始めていました。

「雪形」とは、里が新緑を迎え、山が雪解けを始めた季節に、山肌に残った残雪によってできる模様を生き物などの形に見立てたものです。

今回は、鹿島槍ヶ岳と爺ヶ岳に見られる雪形を紹介します。まだ、形を十分に認められるものは少ない状況です。もう少し日が経てば、山も雪解けが進み、雪形がはっきりしてきます。

まず、鹿島槍ヶ岳に見られる雪形です。

鹿島槍ヶ岳の山頂部です。左側(南側)のピークが南峰(2,889.1m)、そこから右に続く尾根(吊尾根)の右のピークが北峰です。2つのピークからなる双耳峰(そうじほう)と呼ばれる山の形が特徴です。

ここでは雪形を2種類の動物に見立てています。一つは南峰の下(左側の丸)に、もう一つは吊尾根の下(右側の丸)に現れます。ともに岩肌の黒色で作られた雪形です。

左は飛び立とうとしている「鶴(つる)」に、右は駆け下ってくる「獅子(しし)」に見立てています。

次に、爺ヶ岳に見られる雪形です。

爺ヶ岳の山頂部です。こちらはピークが3つあり特徴的です。左側(南側)のピークが南峰、真ん中のピークが中峰(2,669.8m)、右側のピークが北峰です。

ここでは雪形を、農作業をする人に見立てています。2つあり、一つは南峰直下(左側の丸)に、もう一つは南峰と中峰の鞍部(右側の丸)に現れます。ともに岩肌の黒色で作られた雪形です。

左側は「(南の)種まき爺さん(たねまきじいさん)」、右側は「(北の)種まき爺さん」と呼ばれる雪形です。

雪形については、日が経って形がはっきりしたものや、別の山で見られる雪形の情報をお届けしたいと思っています。

遅ればせながら、今年度も引き続きよろしくお願いいたします。

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2018年01月23日長野県内初の氷河 カクネ里雪渓

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、

中部山岳国立公園にある「カクネ里(さと)雪渓(せっけい)」(長野県大町市)が「氷河」と認められました。

長野県では初めての氷河です。

このニュースの前までは、日本では富山県の3カ所「小窓(こまど)雪渓」、「三ノ窓(さんのまど)雪渓」、「御前沢(ごぜんさわ)雪渓」だけが氷河と認められていました。

この度、カクネ里雪渓とともに富山県の2カ所の雪渓が氷河と認められたことで、日本の氷河は富山県5カ所、長野県1カ所の計6カ所となりました。すべて中部山岳国立公園内にあります。

・日本の氷河6カ所の位置。丸の大きさは、雪渓の大きさを反映したものではありません。

・写真撮影位置は下で紹介する3枚の写真の撮影位置です。氷河は他の場所からも望むことができます。

・図は上が北。

では、それぞれの氷河を紹介します。

■カクネ里雪渓

・長野県大町市にあり、鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)の北東の谷に位置します。

<写真中央に「く」の字に灰色っぽく見えるものがカクネ里雪渓です。秋に撮影したので雪渓の面積は小さくなっています。中央の高いところが鹿島槍ヶ岳の山頂部です。撮影場所は遠見尾根の中遠見山付近。平成28年10月4日撮影。>

■御前沢雪渓と内蔵助(くらのすけ)雪渓

・富山県立山町にあり、雄山(おやま)などからなる立山の東斜面に位置します。

<御前沢雪渓は雄山付近の谷に、内蔵助雪渓は富士ノ折立と真砂岳(まさごだけ)の間の谷に位置します。撮影場所は岩小屋沢岳(いわこやさわだけ)付近。平成24年7月19日撮影。>

■小窓雪渓と三ノ窓雪渓

・富山県立山町にあり、剱岳(つるぎだけ)山頂から北に延びる岩稜の東斜面に位置します。

<剱岳から北に延びる岩稜でみられる深い切れ込みは「窓」と呼ばれており、小窓雪渓は小窓谷に、三ノ窓雪渓は三ノ窓谷にあります。撮影場所は種池(たねいけ)小屋から岩沢小屋岳にかけての稜線。平成24年7月19日撮影。>

ここまで日本の氷河6カ所のうち5カ所を写真で紹介しました。

しかし、残り1カ所の「池ノ谷(いけのたん)雪渓」の写真はありません。というのも、池ノ谷雪渓は長野県側(私の担当している区域)から見えないためです。

さて、皆さんも6カ所の氷河を見たいとお考えかもしれません。

6カ所のうち内蔵助雪渓は登山道があるので雪渓に立つことができます。しかし、ほかの5カ所は一般の登山者が近づくことは困難です。

となると、氷河を見ることができる登山道を歩くということになります。上で紹介した写真は、すべて大町市と他市町村の境界である稜線上の登山道から撮影したものです。

次のグリーンシーズン、氷河を望む大町市の稜線を歩いてはいかがでしょうか。

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2017年10月16日八方尾根の植生回復

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは。

10月10日は八方尾根(長野県白馬村)で、地域の団体が主催する植生回復作業に参加しました。裸地化が進んでいる斜面にマットを敷き、在来の種子を播種することで、植生の回復を促す作業です。

地域の方が八方尾根を地域の資源として大切にしていこうという活動の一つで、長野県の「地域発 元気づくり支援金」の交付を受けたものです。

なお、国立公園でこのような作業を行う場合は、事前に最寄りの地方環境事務所、自然環境事務所または自然保護官事務所に問合せをくださいますようお願いします。後立山地区(長野県大町市・白馬村・小谷村、新潟県糸魚川市)の場合は長野自然環境事務所(026-231-6572)へお願いします。



さて、作業前後の写真です。左が作業前、右が作業後です。


写真手前の、植物がほとんど生えていない場所にマットを敷きました。マットは時間が経つと自然に分解される植物の繊維のみからできており、植物の種子、土や肥料は混じっていないものです。

マットの敷設後、付近に生育するのと同じ種類の植物の種をマットの植物の繊維に絡ませるように撒きました。

マットを敷くことで土砂の移動を止める効果が期待できるので、植物が定着する可能性が高くなります。


この斜面は5年ほど前から同様の作業をしています。

写真の奥のほうにケルンと呼ばれる石積みがあります。その斜面下側(写真ではケルンの左下)は生えた草が枯れて茶色くなっています。この場所は5年ほど前にマットを敷いた場所です。当時は草が少なかったのですが、現在では遠景の写真でも草があることが分かるようになっています。

その手前の灰色が目立ち、所々に草が生えている場所は1、2年前にマットを敷いた場所です。ここは、現在はマットのほうが目立ちますが、いずれは植物が目立つようになると思います。

今回マットを敷設した場所も何年か経つと植物が目立つようになることを期待しています。



ちなみに、八方池の岸には、約10年前に同様の作業を行った場所があります。下の写真で、八方池の右側の斜面がその場所です。普通に草が生えていて、かつてほとんど草がなかったというのを想像できないくらいになっています。

<平成29年9月14日撮影>



さて当日、白馬三山は残念ながら雲の中で、また八方池付近では強い風が吹いていました。

<風による波が立っていて、水も濁り気味でした。八方池に写る白馬三山を期待して来られた方には残念な天気でした。>



八方尾根のゴンドラとリフトは10月29日(日曜日)まで営業します。お出かけいただき、お楽しみください。ただし、八方池は標高2,000mを超える場所にあります。八方池まではリフトを降りた後、約1時間ほど歩きます。この際、気温や風の吹き方によっては手袋、帽子があったほうがよいかもしれません。準備をして、お気をつけてお出かけください。



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2017年10月03日大町市から氷河見えます

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは。

信濃大町 山フェス「北アルプス100年祭」が先の土曜日と日曜日(9月30日、10月1日)に行われました。天気にも恵まれ4,500人もの方が来場されたそうです。


<10月1日、北アルプスの山並みがはっきり見えました。右奥から左に五竜岳、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳が連なり、さらに左の鳴沢岳、赤沢岳へと連なります。大町市三日町付近の県道から。>



<フェスには近隣市村などのマスコットキャラクターも来ました。左は松本市の「アルプちゃん」、右から2体目が大町市の「おおまぴょん」、右は白馬村の「ヴィクトワール・シュヴァルブラン・村男Ⅲ世」。あなたの推しキャラは?>



さて、私たちは山フェスで写真展示を行ったのですが、展示する写真を選ぶ作業中に気付いたことがありました。

「大町市から、日本に現存する氷河3つと学会による氷河認定待ちの1つの雪渓を見ることができます。」

■氷河として認定されている雪渓は「小窓(こまど)雪渓」「三ノ窓(さんのまど)雪渓」「御前沢(ごぜんさわ)雪渓」の3つ

■大町市にある「カクネ里(かくねざと)雪渓」は氷河の可能性が高いですが、まだ認定されていません。

■大町市境の稜線を歩くと3つの氷河とカクネ里雪渓を見ることができます。


<カクネ里雪渓。鹿島槍ヶ岳の北面の谷にある。>


<立山と剱岳の東斜面に3つの氷河がみられる。>



今シーズンはもう山小屋の小屋閉めの始まるような時期になりました。来シーズン、氷河を望む大町市の稜線を歩いてはいかがでしょうか。


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2017年09月12日「信濃大町 山フェス」 開催されます

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは。

山に関わるイベントの紹介です。

信濃大町 山フェス「北アルプス100年祭」が開催されます。

■9月30日(土)、10月1日(日)

■大町市文化会館ほか

・ホールでは、山トークショー、ゴキゲン山映像の上映、山岳学生サミットなどが行われます。

・各種登山用品メーカーの出展、飲食店の出店などがあります。

・会場受付で配布されるスタンプラリーカードの提示で、街中の店舗で割引等の特典を受けられるようです。

・大町登山案内人組合100周年を記念して開催されるイベント。

詳細は長野県大町市観光公式サイトをご覧ください。

http://www.kanko-omachi.gr.jp/omachi_blog/2017/09/100930101.php



大町市や周辺市町村にお越しの予定があれば、「山フェス」も訪問先に加えてはどうでしょうか。

私たちも「環境省山岳写真展示」として、後立山地区の写真を展示します。どうぞお出かけください。


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2017年08月08日花盛りの白馬岳

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは。8月3日、4日に白馬三山(長野県白馬村)を歩きました。コースは、猿倉→白馬大雪渓→白馬岳(しろうまだけ)→杓子岳(しゃくしだけ)→白馬鑓ヶ岳(はくばやりがたけ)→白馬鑓温泉→猿倉で、登山道の状況などを確認しました。なお、白馬三山とは、白馬岳、杓子岳、白馬鑓ヶ岳の3つの山を総称した呼び名です。


まず、登山道の状況についてのトピックスは3点です。

・大雪渓上部は秋道を利用するようになっています。大雪渓と秋道との行き来はロープに従ってください。秋道は最低限の整備はされていますが、道が悪いので通行に注意してください。(秋道とは雪渓の上を歩けなくなった場合に、山の斜面に迂回路として設けられる登山道のこと)


・大雪渓下部で雪渓に割れ目ができているところがあります。紅ガラ(染料)に従って通行してください。

<割れ目の左側を通行しました。紅ガラは薄くなっていますが、赤テープを巻いた小石が置かれています。現在は状況が変わっているかもしれません。現地の誘導ロープ等に従ってください。>


・小雪渓は今年度死亡事故が起きています。アイゼンを着用して通過するよう注意喚起されています。

<手前が白馬尻側、奥が山頂側。夏山常駐隊の方がステップ切りの作業中でした。>



さて、タイトルのとおり花盛りでした。

写真のほかにもいろいろな花が咲いています。


<雪解けの遅いところではウルップソウが咲いていました。村営白馬岳頂上宿舎付近。>


<お花畑。クルマユリ、ハクサンフウロなど。杓子岳付近。>


<一面のチングルマ。雪解けの遅いところではチングルマが花盛りでした。大出原。>


<ミヤマキンポウゲの群落。白馬鑓温泉小屋付近。>



〇〇 広域情報 〇〇

白馬村の天狗山荘は営業していませんが、テント場は8月5日から利用できるようになったとのことです(水場、トイレは利用可能。ただし、売品はなく、食堂営業も行われません。)。これを踏まえて登山計画をお考え下さい。天狗山荘の最新情報は白馬村振興公社のサイトなどでご確認下さい。<http://hakubakousha.com/index.php/hut>。

<現在、解体、補修工事中で、小屋内は立入禁止です。左側から雪に押され損傷を受けました。8月3日撮影。>


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