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アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋

285件の記事があります。

2012年11月06日セレトナフェスタ2012に出展しました。

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー 上野淳一

 名古屋市の隣町、大府市にある二ッ池セレトナは自然体験学習施設であり、毎年この時期になると自然とふれあうイベント「セレトナフェスタ」を開催しています。
 このイベントに「藤前干潟の生き物に触れ合おう」というテーマで名古屋自然保護官事務所が初めて出展しました。生物多様性や藤前干潟に関する展示及びワークショップを行うことで、生物にあふれる場所が身近にあることを認識してもらうとともに、生き物について啓発して生物多様性への興味を喚起する目的で実施しました。



【藤前干潟のブース】

 今回、私たちは藤前干潟に住む生き物を知ってもらうために、干潟のカニや貝、魚などを藤前干潟から連れて行き、タッチプールで皆さんに触れ合っていただきました。このタッチプールは子供達に大人気で、子供達はカニに触るのが怖くて初めは指の先でツンツンするだけでしたが、慣れてくるとカニを手の平に乗せたり、腕の上を歩かせたりと、興味津々の様子でした。カニを触るのは怖いので、動かなくて怖くないヤマトシジミだけを触る子供達もいました。



【タッチプールで藤前干潟の生き物とふれあう】

 大人も子供も生き物を実際に手にとって良く観察することで、新たな発見や疑問が次から次へと沸いてくるようで「なんでこのカニは目が細長いの?」「どこに住んでいるの?」「貝の模様や形が違うよ!」「このサイズで大人なの?」・・などいろんな質問を繰り出し、各生き物の特長を解説すると納得している様子でした。来訪者の中にはこのタッチプールを目当てにイベントに来られた方もいらっしゃいました。プール内を動き回るたくさんの生き物を見て子供達はプールに食いついて、なかなかその場から離れようとせず保護者の方々は大変そうでした。
 
 タッチプールの他にも、藤前干潟に住むヤマトシジミの貝殻を用いて、シジミの貝殻合わせを行いました。一対の貝殻の内側に同じ絵を描いてもらい、蝶番でパキンと割って裏返してトレイに配置します。これを神経衰弱の要領で自分が描いた絵を当ててもらうというゲームです。一対の貝殻でないと貝はピッタリ合わないので、二枚貝の遺伝的多様性に気づいていただけたかと思います。




【シジミの貝合わせゲーム】

 来訪者の多くは、藤前干潟の存在や場所を知らず、「干潟」が何なのか分からない方もいらっしゃり、名古屋の隣町であるのに案外知られていないことに気づきました。藤前干潟を知らなくても、生き物には高い関心があるようで、みなさん展示水槽を食い入るように見て行かれました。生き物には人々を引きつけるパワーがあると実感しました。今回、出張してもらった藤前干潟の生き物達は、一日子供達の相手をしたおかげで大変お疲れの様子でした。

 屋外では、森の中にロープの橋を渡して遊ぶモンキーブリッジや竹細工、「木ーホルダー」作成、池周遊ウォークラリーなどが実施されており、自然を満喫できる内容が盛りだくさんで、自然との調和、共生を感じることができました。



【会場の様子】



【竹で作成した日用品の数々】



【モンキーブリッジで遊ぶ(写真左)、木ーホルダー(写真右)】

 藤前干潟でも今月の17、18日に「藤前干潟ふれあいデー」という大きなイベントが開催されます。今回のセレトナフェスタで実施した生き物タッチプールをはじめ、自然観察会やワークショップ、体験ブース等、楽しいコーナーを盛りだくさんご用意しておりますので、是非足をお運びになって、思う存分藤前干潟を楽しんで下さい。

藤前干潟ふれあいデー2012に関する詳しい情報はこちらをご覧下さい。

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2012年11月02日藤前干潟ラムサール条約登録10周年記念行事のご案内

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー野村 朋子

11月に入り、すっかり寒くなってきました。
藤前干潟に冬やって来る「ハマシギ」の群れが見られるようになりました。

【一心不乱に干潟をつつくハマシギたち】

【ここに来るまでに長距離を飛んで、お腹が空いているのでしょうか・・・。】

また、稲永公園内を見渡すと、ピラカンサやグミの実が色づき始め、
カワラヒワやヒヨドリたちがこれらを食べに盛んにやって来ています。

【ピラカンサの実】

【グミの実。よくよく見るとまだ青いものもあります。】

さて、以前よりご案内している通り、
藤前干潟はこの11月でラムサール条約登録10周年を迎えます。
11月17日、18日に行われる「藤前干潟ふれあいデー2012」内にて
10周年記念して、「式典」、「ミニシンポジウム」、そして「講演会」が開催されます。



【ふれあいデーの主な企画】

以下、それぞれの記念行事のご案内です。

☆式典
 日時:2012年11月17日(土)14:00~14:50
 場所:環境省稲永ビジターセンター 西側広場(雨天時:1階研修室)
 (主な内容)
   挨拶・来賓祝辞・保全活動功労者へ感謝状贈呈(環境省中部地方環境事務所より)
   *事前申込は不要です。

☆ミニシンポジウム
「藤前干潟の過去・現在・未来を考える ~藤前干潟の次の10年に向けて~」
 日時:2011年11月17日(土)15:00~16:00
 場所:環境省稲永ビジターセンター1階 研修室

 進行:曽宮 和夫氏(環境省中部地方環境事務所 統括自然保護企画官)
 話者:亀井 浩次氏(特定非営利活動法人 藤前干潟を守る会 理事長)
    坂野 一博氏(藤前干潟クリーン大作戦実行委員会 実行委員長)
    山下 博美氏(名古屋大学大学院環境科学研究科 特任准教授)
    浅井 慎次氏(名古屋市環境局環境企画部 部長)         
    近藤 美麻氏(藤前干潟を守る会認定 ガタレンジャー)

 (主な内容)
  ・名古屋おもてなし武将隊による藤前干潟の歴史紹介
  ・元下之一色漁業協同組合漁師 犬飼一夫さんの聞き語り紹介
  ・藤前干潟への想いと未来への展望について話者による意見交換
  ・藤前干潟の次の10年に向けてスローガンを決定

  *来場者にはお茶の提供があります(無料)。お気軽にご来場ください。
  *事前申込は不要です。
  *ミニシンポジウムの様子は録画し、後日インターネットにて公開する予定です。

☆講演会
「ラムサール条約湿地を語る~ウトナイ湖、片野鴨池、東海丘陵湧水湿地群から~」
 日時:2012年11月18日(日)10:30~12:00
 場所:環境省稲永ビジターセンター1階 研修室
 講演者:大畑 孝二氏((公財)日本野鳥の会レンジャー、指定管理:豊田市自然観察の森 所長)
 
 (講演内容)
  日本野鳥の会のレンジャーとして様々な湿地のラムサール条約登録や
 保全に貢献されてきた大畑孝二氏による、ウトナイ湖(北海道)、
 片野鴨池(石川県)、東海丘陵湧水湿地群(愛知県豊田市)の
 取り組みなどの紹介があります。
  特に、藤前干潟と同じ愛知県にある東海丘陵湧水湿地群は、
 今年ラムサール条約に登録されたばかりの湿地であり、
 今、注目を浴びるこの湿地についても報告があります。

 *来場者にはお茶の提供があります(無料)。お気軽にご来場ください。
 *事前申込は不要です。



これらの記念行事等で、藤前干潟のこれまでの10年間を振り返るとともに、
次の10年に向けた取り組みへの想いを共有したいと思います。
皆さんも一緒に今後の藤前干潟の姿について考えてみませんか?

藤前干潟ふれあいデーへのご来場お待ちしております。


~藤前干潟は2012年11月18日でラムサール条約登録10周年を迎えます~

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2012年10月30日漂着ごみとの戦い~藤前干潟クリーン大作戦~

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー野村 朋子

晴天で日中は汗ばむほどの陽気だった10月27日(土)に、
藤前干潟で「2012 秋のクリーン大作戦」が行われました。
(春のクリーン大作戦の様子はこちら。)

今回、藤前干潟周辺の堤防や導流堤(どうりゅうてい)沿いにあるヨシ原には、
9月末の台風時の大水で、大量のごみが溜まっており、
参加したみなさんからは「一体、この大量のごみはどこから
流れてくるんだろう?」という驚きの声を聞きました。

【見渡す限り、ペットボトル・・・。】

【ごみの分別作業もかなり大変です!】

【集まったごみの山(※これでも一部です。)】

今回も導流堤と南陽海岸堤防の2会場でクリーン大作戦が行われましたが、
両会場あわせて1,166名もの参加があり、
45Lのごみ袋1,181袋分のごみが回収されました。

【ヨシ原もとてもきれいになりました!】

今回も多くの人が汗を流しながら、足下を泥だらけにしながらも
清掃活動をした結果、本当にたくさんのごみが回収できました。
毎回、こんなにも多くの参加者があることをとても嬉しく思います。

【導流堤の清掃に参加された皆さん。
  清掃後にはすがすがしい笑顔がありました。】

しかしながら、今後も、漂着ごみとの戦いは続きます。
これからも、このクリーン大作戦という活動が継続され、
多くの人が藤前干潟に関心を持ち、係わっていってくれることを願っています。


■藤前干潟ふれあいデー2012のお知らせ■
11月10日(土)17:25~17:30に放送される
「知っ得!なごや」(中京テレビ)という番組で、
「藤前干潟ふれあいデー2012」の紹介がされますので、ぜひご覧ください。



~藤前干潟は2012年11月18日でラムサール条約登録10周年を迎えます~

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2012年10月18日干潟環境のモニタリングを実施しています。

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー 上野淳一

 名古屋自然保護官事務所では、今年度から目の前に広がる藤前干潟の水環境とそこに住む底生生物(ベントス)の季節的な変動を把握するために、稲永公園前に広がるヨシ原周辺に調査地点を複数設けて簡易モニタリングを実施しています。



【調査対象地】

 調査は、毎月1回大潮付近に実施しており、水域の水環境を把握するために、水質は水温、塩分、溶存酸素量、電気導電率、pH、濁度を、底質の因子として泥温度、酸化還元電位(ORP)、土壌硬度を測定・記録しています。ベントスも方形枠(コドラート)や篩を用いて定量的に調査しています。
 
 これまでの水質調査結果から、潮汐変動や大水の影響により、塩分や濁りの度合いが著しく変化することが分かり、河口域特有の変化が見られました。また、大都市近郊を流れる川ということもありペットボトルやプラスチック片などの漂着ゴミが多く見られ、水環境はきれいであるとは言えませんでした。




【調査地付近の漂着ゴミ】

 底質調査の結果から、ヨシ原内部の地点ほど底質中に存在する酸素量は少なく、泥色が黒く変色しており、強い硫化物臭が漂う箇所も確認されました。この場所の底質を掘り返してよく観察すると、落葉したヨシ片などの有機物が多く堆積しており、泥中で腐敗していました。このような嫌気的で酸素が少ない状態の底質環境では、生物に有害な硫化物が産生するので、ベントスの生息が困難となっているようでした。当水域は河川本流からやや奥まった所に位置しているので水流が緩やかで停滞し、底質がかき混ぜられにくく、底質の内部に酸素が十分に行き届いていないことが示唆されました。



【ヨシ原内部の底質の様子】

 これまでの調査で出現した主なベントスは、ソトオリガイやヤマトシジミなどの軟体動物が7種、チゴガニやヤマトオサガニなどの節足動物が7種、その他ユスリカの幼虫が確認されています。ゴカイなどの環形動物は種同定が困難な為、まとめてゴカイ類としてカウントしており、これらを含めると総出現種数は16種となりました。



【これまでの調査で確認されたベントス一覧】

 調査を続けていると、軟泥質干潟にはヤマトオサガニやウミナナフシの仲間が多く、地盤高が高くてやや乾燥した場所にはチゴガニやカワザンショウガイが多く出現する傾向が見られ、生息環境によって分布するベントス種が異なることが分かりました。二枚貝のソトオリガイや微小巻貝のカワザンショウガイ、ゴカイなどの多毛類はどの地点でも頻繁に見つかるので水域内で広く分布していると考えられます。ソトオリガイは準絶滅危惧(愛知県)に指定されている稀少種ですが、ここではまとまった個体群が見られます。



【カワザンショウガイ(写真左)とソトオリガイ(写真右)】



【泥の中から採取した生き物たち】

 ベントスの出現個体数は6月に最も多く、夏季にやや減少、10月には再び増加するなど季節変動を示しました。8月の調査では種組成が単調化し、出現した全ベントス個体数の約51%をゴカイ類が占める結果となりました。外気温の上昇に伴う泥温度の高温化および底質中の酸素不足で、ベントスにとっては厳しい環境条件であったことが考えられました。

 調査水域でこれまで見られた水環境とベントスの変動は、一般的な河口域で見られる特性と近似していました。通常時は穏やかな調査水域ですが、台風や大雨の直後は河川が増水して干潟の地形や粒度が変化するほどの変化が見られました。

 調査水域のパッチ状に分布したヨシ原は春から夏にかけて徐々に勢力を強めて8月に最盛期を迎え、10月にはやや衰退したように感じられました。
 ここに残された僅かなこのヨシ原は年々規模を縮小していると言われており、さらに土砂と漂着ゴミの堆積による陸地化が進行しているため、今後どのように推移するのか生物的、物理化学的な観点から見守る必要があります。ヨシ原の変遷については過去の「記事参照」





【ヨシ原の季節変化】



【陸地化が進行するヨシ原】

 藤前干潟におけるベントスに関する調査記録は少なく、近年では平成22年度に実施された「ラムサール条約湿地藤前干潟底生生物調査等業務」のみで、それ以前では平成14年に実施された「保全活用推進調査」まで遡ります。これらのデータは年間を通じて把握したものではありません。年間の調査頻度を増やすことで干潟環境やそこに住む生物のわずかな変化でも察知できるようになり、藤前干潟の現状把握に向けた基礎資料を構築することができると思います。

 稲永ビジターセンターには、藤前干潟のベントス等に関する展示が少ないので、今後も干潟のモニタリングを続けてデータを蓄積し、この調査で得られた結果をとりまとめて展示したいです。ベントスはシギやチドリなどの水鳥とは違って小さくて地味ですが、彼らが干潟に生息することで鳥類の餌になり、環境浄化等にも貢献していることが展示を通して実感してもらえるかと思います。

 秋も深まり、冬が近づいてまいりましたが、藤前干潟にはまだまだ生き物がたくさん見られます。そんな藤前干潟では今月末に「潮だまり観察会」が実施されます。どんな生き物に出会えるのか楽しみです。是非、観察会に参加しておもしろい生き物を探してみて下さい!

日時:10月28日(日)
   10:00~12:00
集合:藤前活動センター
定員:20名(要事前申し込み)
対象:一般(小3未満は保護者同伴)
費用:大人200円、小学生100円、幼児無料
内容:潮だまりにいる生きものをみんなで観察してみよう!
   秋の潮だまりにはどんな生きものがいるのかな?

お申し込み先:藤前活動センター TEL:052-309-7260
開館時間:9:00~16:30
休館日:毎週月曜日、第3水曜日

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2012年10月18日「藤前干潟の日」まであと1ヶ月

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー野村 朋子

10月も半ばを過ぎ、朝晩は大分冷え込むようになってきました。
藤前干潟のヨシも穂が大きく開き、葉や茎の色がかなり色あせてきています。

【たなびくヨシの穂】

今、藤前干潟にはコガモに始まり、ヒドリガモ、オナガガモ、スズガモなど
たくさんのカモたちが続々と渡ってきています。

【庄内川に飛来したカモたち】

でも、今はまだ、カモたちはみんな同じような地味な色をしています。
カモのオスたちは冬の繁殖期には、鮮やかな色の羽になりますが、今は衣替えの真っ最中。
カモの群れをよく見ると、まだら模様のカモたちがあちらこちらにいました。


【上の写真は10月15日にみかけた換羽中のヒドリガモのオス。もう少しすると下のようなきれいな姿になります。】


【同じく10月15日のマガモのオス。頭の色が青くなり始めています。】

きれいなカモたちに会えるのはもう少し時間がかかりそうですが、
春以来、カモたちと再会を果たせて嬉しい気持ちです。


さて、今日からちょうど1ヶ月後の11月18日は、「藤前干潟の日」です。
2002年11月18日に、スペイン・バレンシアで行われた
ラムサール条約第8回締約国会議にて藤前干潟はラムサール条約に登録されました。
これによって、藤前干潟は国際的に重要な湿地であるということが正式に認められたのです。

【ラムサール条約の登録証】

それから、間もなく10年が経とうとしています。
藤前干潟が保全され、ラムサール条約に登録されるまで、
そして、登録されてからの10年の間には、本当に様々な方々が関わってきています。

今回、名古屋自然保護官事務所では、10周年を迎えるのに当たり、
藤前干潟の保全や普及啓発に関わって来られた数人の方にお話を伺いました。
藤前干潟の野鳥を長年調査されてきた方、
漂着ごみの清掃活動に尽力されている方、
かつて名古屋港周辺で漁をしていた元漁師の方など・・・。
実際に活動を続けられて来た方のお話を直接聞いて、本当に勉強になることばかりでした。

そこで今後のアクティブ・レンジャー日記で、数回に渡り、
【10周年記念 藤前干潟を未来に繋ぐ人々】と題して
今回、お話を伺った方々の活動や思いを紹介していきたいと思います。
今後のアクティブ・レンジャー日記もぜひチェックしていただければ嬉しいです。


また、今年の11月17日と18日(藤前干潟の日)には、先の日記でご案内しているように
「藤前干潟ふれあいデー2012」が開催されます。
このイベントにたくさんの方に来ていただき、楽しんでもらうとともに、
改めて藤前干潟の魅力や保全された歴史、生き物、
そして今後の藤前干潟について考えてもらうきっかけとなる日になれば良いと思っています。
ぜひ、藤前干潟ふれあいデーにお越しください!



【昨年の藤前干潟ふれあいデーの様子】


~藤前干潟は2012年11月18日でラムサール条約登録10周年を迎えます~

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2012年10月09日藤前干潟の写真展

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー野村 朋子

以前募集していた「藤前干潟フォトコンテスト」の応募作品の展示が
10月2日(火)より始まりました。
あおなみ線名古屋駅構内のあおなみギャラリーにて、
10月30日(火)の正午まで展示をしています。



ラムラール登録10周年を記念して行った今回の写真コンテストには、
登録当時の10年前に撮影された写真から、最近撮影された写真まで
多数の作品の応募がありました。

【ずらっと46作品の力作が並んでいます】

撮影された皆さんがそれぞれ魅力的に感じた藤前干潟の一瞬が収められた作品が並びます。
その一瞬は、藤前干潟の四季、夜明け、夕日、青空などの風景から、
シギ・チドリを始めとする鳥たち、カニや干潟観察会の様子など・・・。
様々な藤前干潟の姿を一度に見ることができると思います。


【足を止めてご覧になっている方もみえました】

【今回は、作品に簡単な解説(緑色の紙)を付けています】

あおなみ線名古屋駅をご利用の際はぜひ足を止めて、
力作揃いの写真展をご覧くださいね。
(あおなみギャラリーだけをご覧になる場合には、
1区間分の乗車券(200円)を購入いただく必要がありますのでご了承ください。)

そして、秋の行楽シーズン到来です。
ぜひ、藤前干潟にも来て、皆さんが魅力的に思う藤前干潟の一瞬を
みつけてもらえればと思います。
(藤前干潟にある稲永ビジターセンターはあおなみ線の野跡駅から徒歩約10分です。)

【今朝は静かな水面にスズガモがゆったり過ごしていました】


~藤前干潟は2012年11月18日でラムサール条約登録10周年を迎えます~

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2012年09月28日鳥たちでにぎやかな秋の藤前干潟

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー野村 朋子

空が高くなり、すっかり秋めいてきましたね。

稲永ビジターセンターがある稲永公園の林には、今、たくさんの小鳥たちが訪れています。
ヤマガラ、コゲラ、コムクドリ、サメビタキなど・・・。
彼らは旅や渡りの途中に稲永公園に立ち寄っているようです。

【かろうじて撮影することができたサメビタキ】

視界を遮るものがない干潟の上と違って、林の中の小鳥をみつけるのはなかなか大変です。
枝や葉の間に羽ばたく小さなシルエットが一瞬見えるだけ、なんてことも。
でも、それだけに小鳥たちの出会いは嬉しいものです。

さて、目線を干潟に移すと、干潟にも多くの鳥がいます。

【小さいですが、カモ、シギ、チドリ、サギといった鳥がいます】

9月7日の日記でも紹介した、秋の干潟の渡り鳥であるアオアシシギも
まだ藤前干潟でたくさん見られます。
この他、ダイゼン、トウネン、ハマシギ、オオソリハシシギなどの
シギ・チドリも数多くいます。
そして、冬鳥であるコガモやオナガガモも藤前干潟に来ているようです。

秋になり、気候も良くなってきました。
ぜひ、鳥たちでにぎやかな秋の藤前干潟にお越しください。

また、以前も少しだけご案内しましたが、「藤前干潟ふれあいデー2012」が
11月17日(土)・18日(日)に行われます。


【藤前干潟ふれあいデー2012のご案内】

今年はラムサール条約登録10周年を迎えるのを記念して、
式典やミニシンポジウムが催されます(申込不要)。
また、船で藤前干潟周辺を巡る「藤前干潟クルーズ」という目玉企画もあります(要申込)。
船から見る藤前干潟はどんな風に見えるのでしょうか?

毎年行われている生き物観察会など、他にもたくさんのおもしろい催しが
用意されていますので、ぜひ足を運んでくださいね!

詳細は名古屋市のHP(↓)をご覧ください。
「名古屋市 ラムサール条約登録10周年記念イベント「藤前干潟ふれあいデー2012」開催のお知らせ」


~藤前干潟は2012年11月18日でラムサール条約登録10周年を迎えます~

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2012年09月26日センターのウッドデッキの柱に住み着く生命

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー 上野淳一

 先日、稲永ビジターセンターのウッドデッキの塗装が完了しました。
ウッドデッキの状態を確認する為にウッドデッキ周辺を見て回っていると、木製の化粧柱の根元部分に何やら直径5mmほどの穴がポツポツ空いていることに気づきました。




【何者かが住み着くウッドデッキの柱】

 何が住んでいるのか観察していると、穴の中から黒い体の体長約2cmのハチが姿を現しました。捕らえて種を調べてみると、恐らく「タイワンタケクマバチハキリバチの仲間」であることが分かりました。






【捕らえられたタイワンタケクマバチハキリバチの仲間の外部形態】

 このハチはタイワンタケクマバチとしてご紹介しましたが、後日、クマバチの研究者の方からハキリバチの仲間ではないかとご連絡がありました。(10/11追記)

 タイワンタケクマバチは外来種で、豊田市で2006年頃に初確認されており、国内では愛知県と岐阜県で生息が確認されているようです。竹材に混入して中国・台湾から侵入したと考えられており、在来種と競合して生態系に影響を与えるとされています。
 ハキリバチの仲間の顔をよく観察すると口に大きなキバを持っており、これで巣を作る習性があるようです。木の柱に穴を空けた犯人がこのハチかどうか分かりませんが、柱付近で観察していると我々の周囲をグルグル旋回した後に、柱に空いた穴にハチが出入りするのを目撃したので、どうやらこの穴を利用しているようです。



【穴が空けられたウッドデッキの柱】

 他の柱にも穴が空いていたので探ってみると、柱の穴から何やら黒い物質が飛び出ていることに気づきました。近づいてよく見てみるとオサムシの仲間が顔をひょっこり出しているではありませんか!頭部を触っても体をウネウネさせるだけで全く出てくる気配はありません。どうやら木に空いた穴の中から出ようとしたが途中で体が挟まってしまい、さらに木が乾燥して堅く締まり、身動きがとれない状態となっているようでした。助けてほしそうな顔をしていたので、指で優しく押したり引いたりしましたが、体が完全に詰まっており、救出することが出来ませんでした。翌日、確認してみるとオサムシの姿は無かったので、自力で脱出したのでしょうか?



【気の毒なオサムシ】

 この柱は長年、潮風や雨に打たれて大変お疲れの様子で、ひび割れや溝が発生している箇所が多数見られ、ゲジゲジやムカデ、フナムシなど、多様な生物が利用していることが分かりました。いろんな生き物が住み着くことは良いことですが、この柱に住んでいるのは毒を持つものや刺す虫などが多いので、ウッドデッキ周辺で作業する際や来館者の方が被害に遭わないように、注意を呼びかけたいです。  

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2012年09月13日【伊勢湾の漂着ゴミを考える~③】★答志島から始まる伊勢湾のつながり

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー野村 朋子

 志摩保護官事務所の村松アクティブレンジャーからバトンを引き継ぎました、名古屋市の藤前干潟にある名古屋自然保護官事務所の野村です。志摩と名古屋の共同連載日記【~伊勢湾の漂着ごみを考える~】の最終走者をつとめます。

 第2走者の村松アクティブレンジャーが報告してくれた9月8日(土)の答志島の「奈佐の浜清掃」には、愛知県からは約100名の参加があり、藤前干潟で漂着ごみの清掃活動や観察会などをしている団体からも多数の方が参加されていました。

【伊勢湾の入り口にある答志島(左)、伊勢湾の最奥部にある藤前干潟(右)】

 この藤前干潟から奈佐の浜の清掃に参加された方々から、奈佐の浜の現状について以下のような感想を伺いました。
「海の水が透き通っていてきれいだった」
「海はきれいなのに、海岸にごみがたくさんあって残念だった」
「きれいな環境に保てたら良いと思う」

 また、奈佐の浜と藤前干潟の漂着ごみを比べると違いや共通点が見られたそうです。
「とにかくビニール袋でもプラスチック製品でも、細かく破片になったごみが多かった」
「流木も小さく細かくなっていて拾うのが大変だった」
「藤前干潟にはあまり漂着しない漁網(魚を獲る網)の一部や、海苔養殖やカキ養殖に用いる小さなプラスチック資材のごみがたくさんあった」
「藤前干潟にも漂着している注射器やルアーのごみを奈佐の浜でもみつけた」
 
 第1走者の上野アクティブレンジャーが報告したように、藤前干潟にも大量のごみが流れ着きます。藤前干潟同様、奈佐の浜でもプラスチックごみが圧倒的に多いようですが、漂着するごみの種類や形状が藤前干潟とは若干異なるようです。また、注射器などの危険なごみが奈佐の浜にもあるというのはとても残念に思いました。


【奈佐の浜の漂着ごみの一部】

【奈佐の浜でもみつかった注射器】

 「今回、奈佐の浜に行き、実際に流れ着いたごみを手に取ったら、このごみはもしかしたら、藤前干潟から流れてきたのかもしれない、と思えて、もう奈佐の浜のごみ問題が他人事には思えなくなった」という声も参加した方から聞くことができました。漂着ごみの問題は、発生源と実際にごみが流れ着いて困っている場所が遠く離れていることが、解決や対策を難しくしています。答志島の奈佐の浜の漂着ごみの問題は、上流からのごみの発生を抑えるなど、伊勢湾流域全体で考えなければ、根本的には解決していけないものです。そのためには、漂着ごみの問題を、他人事とは思わず関心を持ち続けることが大切なんだろうと思います。

 しかし、実は、恥ずかしながら、今まで答志島がどこにあるかさえ知らなかった私。もちろん、答志島に流れ着く大量のごみのことも、その被害についても全く知りませんでした。でも、今回の奈佐の浜清掃が行われたことを機に、答志島の漂着ごみのことだけでなく、伊勢湾全体のごみのこと、人のつながりのことを知ることができました。このような連載日記を書くこともできました。私自身、今後は答志島や伊勢湾流域のことをより考えつつ、藤前干潟で活動していきたいと思っています。

【奈佐の浜での海岸清掃活動(左)と藤前干潟での清掃活動(右)】

 今後、22世紀奈佐の浜プロジェクト委員会では奈佐の浜の清掃を継続的に行うとともに、伊勢湾流域各地での活動や交流を始めていくそうです。皆さんもぜひ、この活動に参加して、実際現地に行って、答志島から始まる伊勢湾流域のつながりを身近に感じてほしいと思います。

 尚、藤前干潟では市民による漂着ごみの大清掃活動「藤前干潟クリーン大作戦」が10月27日(土)に行われます。伊勢湾へ流出するごみを少しでも減らすため、藤前干潟でも多くの人がごみ清掃を頑張っています。藤前干潟にもぜひ足を運んでみてください!
 10月27日(土)の案内はこちら(↓)をご覧くださいね。
 *「2012 藤前干潟 秋のクリーン大作戦」


~藤前干潟は2012年11月18日でラムサール条約登録10周年を迎えます~

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2012年09月10日【~伊勢湾の漂着ゴミを考える~ ①】★藤前干潟に押し寄せる漂着ゴミ

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー 上野淳一

 今週は、「伊勢湾の漂着ゴミを考える」というテーマで、名古屋自然保護官事務所と志摩自然保護官事務所が協力して連載日記を書きます(計3回)。初回は、藤前干潟における漂着ゴミの現状とゴミ清掃活動への取り組みについて名古屋事務所の上野が担当します。それでは、伊勢湾へのゴミ流出源の一つである藤前地区のゴミの様子はどうなっているのか見ていきましょう。
 藤前干潟の国指定鳥獣保護区内では、庄内川や新川などから流出したゴミが干潟やヨシ原、堤防に多量に漂着します。この漂着ゴミをよく見るとペットボトルや発砲スチロール、プラスティック片などの水に浮くタイプのゴミが数多く見られます。これらのゴミは藤前水域の景観を損なうだけでなく、生き物が誤って食べてしまう、釣り糸や針が体に引っかかるなど生物にも多大な影響を与えています。


【庄内川河口域のヨシ原(写真左)と消波ブロック(写真右)に押し寄せる大量の漂着ゴミ】


【ペットボトルやプラスティックゴミが目立つ】


【ゴミの被害者】

 藤前干潟では、干潟に散在するゴミを撤去する事業が行われている他に、藤前干潟に関わる市民団体や行政、企業などが一体となった「藤前干潟クリーン大作戦」が実施されています。この清掃活動は「ラムサール条約に恥じない藤前干潟にする」「子供達が安心して遊べる干潟や川を取り戻す」「流域全体のゴミや水のことを考えるネットワークを形成する」ことを目的に、2004年から毎年2回、春と秋に開催されています。今年度は10月27日(土)に開催される予定です。
 このように多くの人が藤前地区で一生懸命ゴミ清掃を行っても、都会に面しているために川の上流からゴミがたくさん流れてきて、数ヶ月も経てば再び同じ場所にゴミが漂着するのが現状です。しかし、ゴミ清掃活動を継続して行うことで、少しでも伊勢湾へのゴミ流出負荷を軽減することができます。



【今年の5月に行われたクリーン大作戦の様子】


【一日で集められたゴミ類】

 山、川、海はつながっており、漂着ゴミの問題は一地域だけで解決できる問題ではありません。地域によってゴミの量と種類、ゴミによる被害はそれぞれ異なっており、各地で清掃活動も盛んに行われております。伊勢湾流域から発生するゴミは年々増加傾向にあると言われており、風や海流の影響でその約半数が三重県の鳥羽市に打ち上げられているようです。
 藤前地区をはじめ、伊勢湾流域から流出したゴミは、しばらく漂流した後に、漁業が盛んに行われている三重県鳥羽市の離れ島である答志島に漂着し、流木などが漁網や生け簀などを破壊するなど多大な影響を与えているようです。
 9月8日には、この答志島奈佐の浜で伊勢湾流域である愛知県、岐阜県、三重県から多数の人が参加して海岸大清掃が実施され、伊勢湾流域の一員として藤前干潟のゴミ清掃活動を実施している団体も参加しました。
 それでは、答志島のある伊勢志摩国立公園を管轄する志摩自然保護官事務所のアクティブレンジャーにバトンを渡して奈佐の浜の清掃について紹介してもらうことにしましょう。

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