ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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中部山岳国立公園 松本

241件の記事があります。

2011年07月21日オオハンゴンソウ分布調査

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

平湯地域では外来植物除去活動を活発に行っています。
繁殖力旺盛な外来植物に対抗するには、とにかく多くの人手が必要なため、地元の方々の協力が不可欠です。

そこで登場するのが通称「グリーンワーカー事業」という制度です。正式名称は「国立公園等民間活用特定自然環境保全活動事業」。舌をかみそう。
この制度は、自然環境保全のため、野生生物保護・景観維持・登山道の手入れといった比較的小規模な事業を、地域のマンパワーを活用して行っていこうというものです。

外来種対策もその1つで、平湯のグリーンワーカー事業では、特定外来生物に指定されているオオハンゴンソウにターゲットを絞っています。
※特定外来生物について詳しくは環境省HPをご覧ください。


オオハンゴンソウはキク科の多年生植物です。繁殖力が強く、周囲の植物の生長を阻害する物質も出して、急速に分布を広げます。

除去活動を戦略的に実施するにあたって、詳細な対象地とその優先順位を決めるため、繁殖状況の調査を行いました。
写真は昨年8月に撮影したもので、このように黄色い花を咲かせているとよく目立つのですが、調査時点ではまだ草丈が低くつぼみもつけていないので、藪の中から探し出すのに苦労しました。

一緒に繁茂していることの多い2種類の植物を並べてみました。
どちらがオオハンゴンソウでしょうか?

正解は左側。右側はヨモギです。紛らわしいですね。

葉を裏返してみると分かりやすいです。

右側のヨモギは柔らかい毛がびっしり生えて白く見えます。左側のオオハンゴンソウはてかりがあるため、写真では光が反射して白っぽく見えてしまっていますが、ヨモギの白さとは全く異なります。

それでも見分けられない!という方には最後の手段。
葉を触るとヨモギは柔らかく、オオハンゴンソウは剛毛が生えてざらざらしています。そこで、刻んでお団子に入れたらおいしそう・・・と思えるのがヨモギ、ちょっと食べたいと思わないな・・・というのがオオハンゴンソウ、となります。

既に除去活動は始まっています。その方法にも注意が必要です。
オオハンゴンソウは頑丈な地下茎をはりめぐらせており、根ごと抜き取る必要があります。抜いた後はその場に放置せず、根は切り取ってシートの上で乾燥し完全に枯死させてから焼却処分、結実する可能性のある花も切り取って密封し焼却処分、という厳密な処理を行っています。

各地で同様の活動が行われていますので、是非参加してみてください。意識して見ると、身の回りに外来種があふれていませんか。

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2011年06月29日歩道のお手入れ

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

一の瀬キャンプ場から女小屋の森へ向かう歩道の途中、夜泣峠への分岐点があります。でも、何かヘン・・・

橋を渡って左方向が女小屋の森、右方向が夜泣峠なのですが、なぜか左方向へしか行けないような作りになってます。標柱には両方向の指示が出ているものの、右方向は踏み跡も薄く、なんだか不安。
「分かりにくい」という利用者の声を受け、ちょっと手を加えてみました。

木橋の枠の一部をのこぎりで切断。
これでもやはり中途半端ですが、「こっちにも行けますよ」ということが以前よりは伝わるかと思います。

ここからすぐの場所で、また別の作業を行いました。

歩道の下に通してある塩ビ管が詰まり、沢水があふれて歩道が洪水になっていました。

バールでぐりぐり、詰まっていた土石を除去し、無事通水。

このように、環境省の直轄歩道であれば可能な範囲で随時手直しできるのですが、それ以外は、気になる箇所があっても管理者に報告するしかできず、いじれないのがはがゆいところです。

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2011年06月03日木道の水抜き作業

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

以前から気になっていたこの水たまり。

乗鞍高原一の瀬園地の駐車場からキャンプ場へ向かう木道です。
雨のたびに水浸しになり、しばらく晴天が続いてもこの通り。
穴をあけてみたことはありましたが、落ち葉や泥がすぐにつまってしまいます。

そこで今回、木道の枠に水抜き用の隙間を開けることにしました。

のこぎりでゴリゴリ。
通りすがりのおじさん2人が、「ここいつも水がたまるんだよね。春先はつるつるに凍って怖かった。助かるよ~」と言って、作業を手伝ってくれました。飛び入り参加に感謝!

作業完了。
後日、雨降りの時に確認したところ、水はたまっていませんでした。
めでたし。

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2011年05月25日まいめの池のキショウブ駆除作業

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

乗鞍高原まいめの池で外来植物駆除作業を行いました。

以前はここになかったキショウブ。
どうやら人為的に植えられたようです。


(昨年6月撮影)
黄色の花が鮮やかで美しいのですが、要注意外来生物に指定されています。
※外来生物について詳しくは環境省HPをご覧ください。

しばらく様子を見ていましたが、年々繁殖を広げており気になっていたので、今回駆除作業に乗り出しました。


池の中にクマ・・・? いえ、川口レンジャーです。
キショウブは頑丈な地下茎をはりめぐらしており、水面に出ている葉を引っ張っただけでは根から抜けません。鎌などの道具を使ったり、泥の中に手をつっこんで掘り出したりと、悪戦苦闘。

本日の収穫。5袋で力尽きました。まだまだ生えてます。
完全に駆除するには、人手を確保し、今後何年間か作業を継続する必要があります。地元の方たちと協力して活動を軌道に乗せる方法を考えて行く予定です。

まいめの池から水が流れ込むしのぶの池。

ミズバショウの名所ですが、ここにもキショウブが入りこんできています。
こちらは互いの根がからまってさらに困難な作業になりそうです。

背後に横たわる乗鞍岳は、今朝季節外れの新雪をかぶり、まぶしく輝いていました。

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2011年05月13日乗鞍岳の春山バス②【動植物保護対策】

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

前回の記事に引き続き、春山バス第2弾です。

動植物保護対策のため、林野庁(森林管理署)・松本市と合同で再び現地へ。
利用実態の把握も兼ねるため、人出の多いGW中の5月3日に実施しました。

朝8:05乗鞍高原観光センター発の第1便は4台のバスが連なりました。
雪壁の間をぬって終点の位ヶ原山荘に到着した時の様子です。

人・バス・人。
スキー、ボード、登山。それぞれのスタイルで準備にかかります。
山での注意事項や地図を掲載したチラシを配布していますので
必ずご覧ください。
登山届の提出もお忘れなく。


黙々と上を目指す人の列。
正面が乗鞍岳の最高峰「剣ヶ峰」。
てっぺんまで登るより、途中から滑走する人の方が多いようです。

まだまだ深い雪に覆われていますが、場所によってはハイマツなどの植物が現れ始めています。そこで、今回このような看板を作成しました。

雪から出た植物を踏み付けると傷めてしまいます。
また、ライチョウの生活の場であり、これからが繁殖上大切な時期です。
我々人間も植物の近くで休憩したくなる気持ちは同じですが、
このような事情があることをご理解いただければと思います。

この日は看板と工具類をかついで登り、現場で設置作業。

壁面を雪から掘り出し、釘で打ちつけたり、両面テープで貼り付けたり、ひもでくくりつけたり・・・設置場所によって方法は臨機応変に対応できるよう、道具はいろいろ準備しておきました。

看板は印刷した紙にラミネート加工を施し、全部で約40枚作成。
春山バス利用者の目につきやすい各所に掲示しています。
山小屋や休憩所など各施設の所有者やバス会社にもご協力いただきました。

この日は、午前中は晴れてシャツ一枚でも汗ばむ陽気でしたが、
午後から一気に空気が入れ換わり、雪がちらつきました。
方向を見失い雪崩の危険がある斜面へ向かっていた人の誘導も行いました。
春山と言えど、山上は厳しい雪の世界です。
くれぐれもお気を付けてお出かけください。

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2011年05月11日乗鞍岳の春山バス①【運行前調査】

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

乗鞍岳の春山バスが4月29日から運行されています。
乗鞍高原でマイカーから専用のバスに乗り換え、乗鞍エコーラインの標高約2,300mの位ヶ原山荘まで一気に駆け上がります。

気軽に雪山を楽しんでもらおうと、地元が中心となって運営されている春山バスですが、標高の高い山岳地帯ではまだまだ厳しい冬山の世界。万全の装備が必要です。

利用者の安全対策や動植物保護対策などを目的に、運行前の去る4月21日に関係者合同で現地確認を行いました。


乗鞍エコーラインは除雪作業の真っ最中。雪壁は4mぐらいでしょうか。

位ヶ原山荘までは除雪が終わっていないため、冷泉小屋付近に車を置いて、雪の上を歩き始めます。


好天に恵まれ、槍穂高連峰が一望できました。


景色に見とれていたいところですが、ここからが仕事のメインです。
標高約2,600mの山小屋「肩の小屋」から下りながら、スキーヤーの目線で危険箇所を確認していきます。

この平らな地形の位ヶ原は要注意です。

先が見えませんが、どちらへ行きますか?
調査メンバーらが向かっている方向がくぼんでいて下りやすいように思えるため自然と進みがちですが、その先は険しい沢と滝となって前進不能となります。ここで過去に遭難が多く発生しています。誤って進入しないよう、後日ロープや標識を設置する予定です。中央から左よりが正解のルートとなります。視界が悪くなればますます迷いやすくなりますので、くれぐれも慎重に。

こんな障害物も突如現れます。


雪の下には乗鞍エコーラインが走っています。カーブミラー、ガードレール、雪解けとともにどんどん出てきます。目印にポールを立てるなど対策は行いますが、滑走する方はくれぐれもスピードの出しすぎにご注意ください。

今回は利用者の安全対策が主になりましたが、同時に高山帯の動植物保護対策も必要であるとの意志統一がはかられ、日を改めて再び現地へ赴くことになりました。これについては、次回「乗鞍岳の春山バス②【動植物保護対策】」に記載させていただきます。

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2011年04月28日シーズン前の補修作業

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

乗鞍高原一の瀬園地では、例年GW頃にミズバショウの見頃を迎えます。群生地に至る歩道の途中で、壊れていた標識の補修作業などを行いました。

標柱の盤面が落下していたものは釘で打ち付け直し。


方向が分かりにくかった三叉路の分岐点には仮設の標識を設置。
支柱や盤面はあり合わせの資材を使って、前日に事務所で作成・準備しておいたものです。現場の様子は1週間前に点検を兼ねて下見しておきました。
ノイバラのトゲにひっかかれ、冷たく湿った雪が舞う中での作業でした。

暖かくなったり寒くなったり、気候の変化が激しい季節ですが、ミズバショウたちは着実に春の訪れを感じているようですね。

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2010年02月25日針葉樹の森でスノーシューハイキング

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

 冬の乗鞍高原では、スキーはもちろんスノーシューやクロスカントリーでの雪上散策を楽しむ人が多く訪れます。休日明けに利用状況調査を行ったところ、至る所にたくさんの踏み跡がありました。

 今回調査したのは、通称「子りすの径」と「原生林の小径」と呼ばれている2つの路線をつなげたルート。標高1,800mの三本滝平から牛留池まで全体的に緩やか(たまに急)な下りで、静かな針葉樹林や開放的な湿原を通ったりと変化に富んだ、2時間程度の人気コースです。

「子りすの径」入口はこちら。

乗鞍高原温泉スキー場の国設第1クワッドリフトに乗って三本滝平へ。ゲレンデを横切ったところに入口標識があります。

積雪は160cm。最近まとまった降雪がなく、春の陽気で雪はしまり沈むことはありませんが、湿った雪がスノーシューにべたべたくっついて重いです。

針葉樹林の中は見通しが悪く、初めての方は道迷いにご注意ください。何を隠そう、私も予定ルートを外れてしまいました・・・

樹林を抜けると一気に空間が開け、孫市平にある東大ヒュッテ前の広場からは乗鞍岳を望むことができます。

暖かい日差しに包まれてランチタイム中のグループ。絶好のポジションですね。

湿原を通って一旦車道(除雪しないので車両は冬期通行止めです)に出てから、次は原生林の小径へ。ふと目にとまった不思議な木。

どれが幹なのか根っこなのか??? よく見ると、サワラとコメツガの2種類の木が合体していました。切株か倒木から芽生えて成長したサワラの木、その根を苗床として芽生えたのがコメツガ、その後切株が朽ち果ててなくなり空間が残った・・・といったところでしょうか。木一本(2本?)の生い立ちを想像してみるのも楽しいものですね。

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2010年01月28日凍ったり融けたり、善五郎の滝

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

乗鞍高原にある善五郎の滝について、昨年もほぼ同時期(1月30日)に記事を掲載しました。今冬も立派に凍りましたが、最近の暖かい日差しで左側3分の1ぐらいは既に融けてザアザアと勢いよく水が流れ落ちていました。




すっかり冬の名所として定着したくさんの人が見物に来ますが、接近しすぎると危険なため、写真のような看板を設置しました。

大寒を過ぎこれから春に向けて暖かくなる時期。大規模な崩落がいつ起こるか分かりませんので、滝には近づきすぎず、安全な距離を保ってくださいね。既に巨大な氷の柱が雪の上に転がっていました。

滝への道は急斜面と階段の連続です。新雪の後はふかふかで歩きやすいのですが、踏みかたまってくるとつるつるになり非常に滑りやすくなります。今回は、凍りついてスロープと化していた階段を掘り出すべく、ピッケルで氷を砕いたり、特に危ないと思われる斜面にステップを切ったりと、光の届かない薄暗い氷点下の谷底で汗を流してきました。

足下にも頭上にも十分注意してお越しください!

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2009年10月13日畳平は氷の世界

中部山岳国立公園 松本 アクティブレンジャー 木村 亜紀

北アルプス主稜線の各地から初雪の便りが聞こえた10月9日、乗鞍にも着実に冬が近づいていました。

畳平に上がると身を切るような冷たい風がお出迎え。暖かい下界からバスで一気に上がってきた観光客の皆さんは、寒さに震えながらもハイマツや枯れ枝にできた氷の造形を楽しんでいました。

木の柱もこの通り。気候の厳しさを物語っています。
容赦なく吹き付ける風の音に混じってしわがれた声がガガガ・・・いました、ライチョウ。

冬に向けて換羽の真っ最中。グレーの隙間から白い羽がのぞき始めていました。

畳平へのシャトルバスは10月末まで運行される予定ですが、これからは天候に左右されます。この日も道路が凍結したため朝の便は運休となりました。そんな場合は乗鞍高原で秋を満喫してみてはいかがでしょうか。これからが紅葉本番です。

赤や黄色に彩られたまいめの池。静かでのんびりできるお勧めの場所です。

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