ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26)

45件の記事があります。

2011年11月24日「環境省アクティブ・レンジャー国立公園写真展」

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 今月の16日から1ヶ月の会期で、妙高市の新井総合コミュニティセンター・妙高市図書館と新井ふれあい会館を結ぶ長い通路の一部をお借りし、「環境省アクティブ・レンジャー国立公園写真展」を開催しています。

 私たちアクティブ・レンジャー(自然保護官補佐)は、自然保護官(レンジャー)の補佐役として、国立公園のパトロール、調査、利用者やボランティア対応、自然解説などの業務を担う環境省の職員で、2005年から各地の自然保護官事務所に配属されている非常勤の国家公務員です。

 この「アクティブ・レンジャー国立公園写真展」は、日頃国立公園等で働いているアクティブ・レンジャーが、「国立公園の魅力やアクティブ・レンジャー及び環境省の取り組みを一般の皆さんにぜひ知って頂きたい。」との熱い思いで、業務中に記録した多くの写真の中からセレクトし、展示しているものです。

 写真展としては、平成20年度から開催され、長野自然環境事務所管内の各会場を巡回展示しており、妙高高原地域では今年度2回目の開催となります。決してプロカメラマン作品のクオリティーはありませんが、その熱い思いを少しでも感じて頂ければ幸いです。

 開催前日の15日に、カタログの貼り付けから額と解説類の掲示までの作業を行いました。

 下の写真手前のパネル5枚両面には、妙高高原のある「上信越高原国立公園」の写真を、奥のパネル5枚には「中部山岳国立公園」の写真を、といったまとまりで、長野自然環境事務所管内のアクティブ・レンジャー8名が5枚ずつ出品した、計40枚の写真を掲示しました。
とりあえず、フックに額をひっかけるだけひっかけてから箱を片付けましたが…




 小雨がぱらつく平日の夕方、作業中にもかかわらず、後ろにはすでにご覧頂いている利用者の方が!

 事務局長さんをはじめとした新井文化振興事業団の皆さんにもご協力頂き、




 パネルやフックの他に、ポスター用額やイーゼル、テーブルをお借りするかたちで、多くの方に楽しんで頂けそうな会場を、なんとか予定通り準備することができました。

 開催前に見せて頂いた展示スペースは、「油彩画が壁に展示されている、落ち着いた雰囲気の憩いの通路」といったおもむきでしたが、全長20メートル弱のパネルを設置してみると一転、「迫力の展示スペース」に生まれ変わりました。




 今回、会場をお貸し頂いている新井文化振興事業団様をはじめ、広報にご協力頂いた地元の組織や団体、新聞各社や地元ラジオ局といった多くの皆様のお力添えのもとで、この写真展を開催できる運びとなりましたことを、この場をお借りし、担当者として心からお礼申し上げます。

 今後この写真展は12月~1月に「休暇村乗鞍高原」、2月前半に「長野県庁」、2月後半に「大町合同庁舎」を会場として巡回展示させて頂く予定で、3月中旬からは「道の駅あらい くびき野情報館」でも開催を予定しています。

 寒さが日ごとに厳しくなってまいりますが、お近くにお寄りの際は是非各会場に足を運んで頂き、四季折々の国立公園のありのままの姿を感じて頂ければと考えております。また、写真展だけにとどまらず、様々な業務を通して、環境省の日々の取り組みを一人でも多くの方にお伝えしていきたいと考えております。

 今後の写真展開催に関する詳しい情報は、

「環境省長野自然環境事務所」 電話 026-231-6570

 までお問い合わせ頂くか、

「環境省長野自然環境事務所ホームページ」
http://c-chubu.env.go.jp/nagano/

 でご確認ください。

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2011年10月25日笹ヶ峰ミニビジターセンター閉館

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也


 青空に薄い秋の雲がかかる朝、一週間ぶりに笹ヶ峰に出かけました。

 火打山登山口付近に設置してある登山者カウンターのチェックと笹ヶ峰ミニビジターセンターの閉館確認のためです。道中のカラマツはかなり黄色に色づきはじめていて、笹ヶ峰周辺は既に紅葉も終わりでした。
笹ヶ峰牧場の牛たちも姿は見えませんでした。

 まず、常設と仮設の登山者カウンターのチェックです。(手前が仮設で、奥の木箱が常設です。)




 ぽかぽか陽気でしたが、平日でしかも木々の多くは葉を落としてしまっているせいか、先週末とくらべると利用者の方もかなり少なくなってきています。(腕がつりそうな体制での「自分撮り」でした。)

 登山道入口近くの石に腰を下ろし、トイレを我慢しながらカウントを続けていると、木道の上をうろうろ歩いているバッタに目がとまりました。
 なんだか幼虫のような姿です。そのうち木道の隙間にお尻をつっこんで動かなくなりました。




 産卵です。大人になっても羽根の短い「ミヤマフキバッタ」の仲間だそうで、こんな山の上でも生き抜いているけなげな姿、撮らずにはいられませんでした。このバッタの仲間も日本固有の種が多いそうです。

 カウント作業終了後、今度は笹ヶ峰ミニビジターセンターの閉館確認です。
 笹ヶ峰ミニビジターセンターは職員が常駐していない環境省の施設です。雪の非常に多い笹ヶ峰では、残念ながら冬期閉館せざるをえません。すでに玄関には鍵がかけられています。

 開館中多くの方に利用して頂いた「全国自然いきものめぐりスタンプラリー」のグッズ類を片付け、入館者名簿の整理などを行ってから、館内を確認し「閉館表示」を張り出して再び玄関を施錠しました。




 玄関前のシラカバは葉を落とし、ツタウルシもすでにツタだけになっていました。

 玄関右手のトイレ入口脇には、雪囲い用の板が立てかけてあります。
館内の清掃や雪囲いが完了すると、6月まで半年以上はお休みとなります。

 今年は昨年より多くの方に利用して頂きました。ほんとうにありがとうございました。

 さまざまな貴重ないきものたちが、たくましく生きるこの笹ヶ峰の自然を守っていくためにも、拠点となる施設は必要です。笹ヶ峰の豊かな自然を多くの方に体感して頂き、生物多様性の重要性に目を向けて頂くために、「笹ヶ峰ミニビジターセンター」を今後も大切な情報発信の場の一つとして活用していきたいと考えております。

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2011年10月14日秋の笹ヶ峰、紅葉だより

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 雲は多いものの、時々晴れ間の除く10月12日の朝、笹ヶ峰ミニビジターセンターの附属施設の確認のため、10日ぶりに笹ヶ峰に出かけました。
 10日前「秋の笹ヶ峰自然教室」運営のため笹ヶ峰を訪れたときは、まだウルシ類が少し色づいた程度で紅葉が始まったばかりでした。ここ数日で標高750m程の事務所近くのいもり池周辺のツタウルシも真っ赤に色づきましたので、標高1300m程の笹ヶ峰では紅葉も終わりに近いだろうな、と思いながら向かいました。
 今年は例年より10日以上早い10月3日に隣の妙高山も初冠雪し、天気も変わりやすい日が続いていましたので、紅葉は正直あまり期待していませんでした。

 杉野沢の、ほんのり色づきはじめたカラマツ林をぬけて笹ヶ峰に近づくつれ、あたりは黄色一色の世界に変わりはじめました。去年の秋は、紅葉がはっきりしないまま冬になってしまった印象がありましたので、この黄色の世界は、私にとって嬉しい誤算でした。

 黄金のトンネルを抜けてまたしばらく進むと、白樺で作った「笹ヶ峰高原」の看板が右手に見えてきます。看板の周りには芝生が広がっていて、「笹ヶ峰一周歩道」を歩く皆さんの休憩ポイントにもなっています。




広場の奥、妙高山の外輪山「三田原山」も錦の衣をまとっていました。

 さらに進んで「火打山登山口」に向かう最後のカーブでは、




息を呑むほどの紅葉のトンネルになっていました。

 火打山登山口の駐車場は40台ほどでいっぱいになってしまいますが、平日にもかかわらず満車の状態で、ナンバーをみると全国各地から訪れて頂いていることが一目瞭然です。火打山の高谷池にある「高谷池ヒュッテ」も連休中満員だったようで、昨今の山ブームに紅葉の時期が重なり、多くの方に利用して頂いていることがわかります。「笹ヶ峰キャンプ場」側にも大きな駐車場がありますが、連休中はこちらもいっぱいだったそうです。この日は20台ほど駐車されていました。

 両方の駐車場の周りにある木々も鮮やかに色づき、白樺の白い樹皮に紅やオレンジや黄色が映えて、駐車場の周りだけでも、高原でしか味わうことのできない景色を楽しむことができます。

 駐車場に車を止めて、キャンプセンターの横を通り過ぎると、笹ヶ峰ミニビジターセンターが左手に見えてきます。ビジターセンターの周辺でも、




ご覧のとおりでした。

 この奥のキャンプサイトやキャンプ場周辺の遊歩道でも、美しい紅葉を見ることができました。

 10月11日から12日の「火打山ライチョウ調査」から戻った職員曰く、火打山登山道の十二曲り周辺でも美しい紅葉が楽しめたとのことですので、今週末まで笹ヶ峰周辺で紅葉を十分楽しめるのではないかと思います。

 JR妙高高原駅から車で45分程で秋の高原を満喫できる笹ヶ峰に、是非一度いらしてみてはいかがですか。

 国立公園の保全と利用のバランスとりつつ生物多様性を維持していくことは非常に難しい問題ですが、まず、この景色を一人でも多くの方に味わっていただくことが、素晴らしい自然環境を守り、次の世代に受け渡していく行動につながる第一歩ではないかと考えております。

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2011年09月16日特定外来植物「オオハンゴンソウ」と妙高高原での駆除活動

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 突然ですが皆さんは「オオハンゴンソウ」という植物をご存知ですか?
 「オオハンゴンソウ」は、日本各地で分布を拡げつつある、「特定外来生物」です。
 「特定外来生物」とは、もともと日本にいなかった生きもののうち、日本の生態系などに大きな被害を及ぼすものとして、「外来生物法」に基づき指定されている動植物を指します。この「オオハンゴンソウ」の問題点は、根から他の植物の成長を阻害する物質をだし、在来の植物を駆逐してしまう点にあります。そこで、「特定外来生物」は飼育・栽培・保管・運搬・輸入・販売・譲渡・野外放置等が規制され、定着(帰化)しているものは必要に応じて防除が実施されています。

 環境省妙高高原自然保護官事務所でも、妙高高原地域の笹ヶ峰において一昨年から「オオハンゴンソウ」の調査及び駆除活動に力を入れ始めました。私は今年で2年目になりますが、この「オオハンゴンソウ」、実際に駆除を行ってみると、本当にやっかいな相手だと気付きます。
 地上部分を刈り取っても、主根が残っているとまた生えてきます。しかし、完全に抜き取ろうにも途中で主根が折れてしまったりして、駆除には多大な時間と労力がかかります。さらに、種は小さく量も多くてぱらぱらと簡単にこぼれ落ち、広範囲に広がります。湿った場所を好み、沢伝いに広がって他の植物と混在してしまうので、繁茂状況の確認だけでも一苦労です。このため、広大な笹ヶ峰を環境省職員と環境省パークボランティアとの活動で全てを調査し、駆除することには限界があります。
 このような状況の中、昨年度から上越森林管理署と妙高市及び地元関係者、そして環境省とが一体となって、笹ヶ峰の「オオハンゴンソウ」繁茂を少しでも防除し、生物多様性を保全しようという取り組みがスタートしました。観光協会や地元の民間企業、専門学校のご協力も得て、昨年度は60名ほどの参加者で笹ヶ峰キャンプ場内のオオハンゴンソウを3000株以上駆除することができました。
 ところが、この取り組みを今年度も実施するにあたり、笹ヶ峰キャンプ場内の今年度駆除ポイントの事前調査を行ったところ、昨年度の駆除活動実施ポイントがほぼ元の状態に戻っていました。これには正直驚きました。そこで今年度も昨年と同じポイントで駆除活動を実施する事になりました。

 9月初旬の平日、朝から曇天の笹ヶ峰キャンプ場に入りました。まず、環境省レンジャーから特定外来生物に関してとオオハンゴンソウの見分け方及び駆除方法の説明を、抜いてきたばかりのオオハンゴンソウの実物を見てもらいながら行いました。



 ご覧の通り、笹ヶ峰のオオハンゴンソウは丁度花期でしたので、初めての方でも見分けやすい状態でした。また、上越森林管理署からは、「国際森林年」とオオハンゴンソウ駆除活動と併せて実施する「在来種植栽活動」について説明していただきました。「国際森林年」及び「在来種植栽活動」の詳細については、下記ホームページをご参照ください。

http://www.rinya.maff.go.jp/kanto/joetu/news/230901.html

 一通り説明を済ませてから実際の駆除活動に入りました。今回はキャンプサイト内の群生地を3つのグループに分かれて作業します。
 最初は苦戦する方が多かったのですが、徐々に皆さん慣れてきて駆除のスピードも上がっていきました。



 歩道脇の林の斜面にも、写真のように入り込んでしまっています。このポイントには後から私も入りましたが、野バラでしょうか、トゲで、露出した腕をさんざん引っ掻き半袖だったことをあとで悔やみましたが、長袖でも苦労するポイントでした。

レンジャーも、
森林管理署職員さんも、
専門学校の先生も、
みんな汗だくになりながら、夢中で駆除に没頭しました。

 私は一人でも多くの方にオオハンゴンソウの問題点を理解してもらおうと、時々手を止めて、だれかれかまわず近くにいる人に主根の取り方の説明などを行いながら作業を進めました。

 駆除したものはグループ毎に集められ、記録係の方に各自駆除した株数を各自報告する形で集計していきます。最後に3箇所全ての「オオハンゴンソウ」を一箇所に集め、総数の把握を行いました。



 今回の「オオハンゴンソウ」駆除活動は総勢約70名の参加があり、自己申告ではありますがトータル8000株ほどを駆除することができました。1時間程の作業でしたが皆さん汗だくで、とても長い時間作業していたような気がしました。
 今回の活動を通して、「オオハンゴンソウ」は一度定着・拡散してしまうと駆除が困難な「特定外来生物」であることを改めて強く感じました。今後も地元の皆さんと協力しながら、地道に駆除活動を継続していかなくてはならないと考えています。

 いま、日本は「外来生物天国」といわれるほど、様々な外来生物が、様々なかたちで入り込んできています。日本固有の生きものたちを守り、生物多様性を維持して次の世代にうけついでいくためにも、ここで外来生物による被害を予防するための「外来生物被害予防3原則」を是非お伝えしておきたいと思います。

1.(悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に)
「入れない。」

2.(飼っている外来生物を野外に)
「捨てない。」

3.(野外にすでにいる外来生物は他地域に)
「拡げない。」

 この「外来生物被害予防3原則」を頭のどこかに置いて頂いたうえで、日本固有の生きものたちに目を向けて頂ければ幸いです。

 なお、最初にご説明したように「特定外来生物」は「外来生物法」で「飼育・栽培・保管・運搬・輸入・販売・譲渡・野外放置等が規制」されていますので、安易に駆除等を行うことはできません。「特定外来生物」の詳しい取り扱いについては、下記ホームページ等でご確認の上、正しい知識を得ていただき、皆さん一人一人の理解と適切な対処を切にお願いいたします。

外来生物法ホームページ
http://www.env.go.jp/nature/intro/

<お知らせ>
 妙高高原自然保護官事務所では、来る10月2日の日曜日に、笹ヶ峰ビジターセンター周辺で妙高高原地区パークボランティアの皆さんの解説によるガイド・ウォーク「秋の笹ヶ峰自然教室」を開催する予定です。詳しい内容は下記ホームページ等でご案内しておりますので、ぜひ秋の爽やかな高原と妙高高原の豊かな自然を満喫しにいらしてはいかがでしょうか。
皆様のお越しを心からお待ち致しております。

「秋の笹ヶ峰自然教室」参加者募集ホームページ
http://c-chubu.env.go.jp/nagano/

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2011年08月19日夏の妙高山周辺登山道と生きものたち

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 8月も気がつけば下旬です。環境省妙高高原地区パークボランティア活動でバタバタしているうちに、秋の虫たちの声がきこえはじめる季節になっていました。そんな8月中旬過ぎ、自然保護官と地元の方とともに妙高山周辺の歩道状況の調査を行いました。

 朝、関温泉の駐車場で1台に乗り合わせ、燕温泉の駐車場に移動、そこから出発です。出発時は晴れで、絶好の調査日和でした。
 まず、妙仙橋を渡り直ったばかりの「河原の湯」に向かう道から、登山道の分岐点「麻平」を目指します。この「麻平」は山頂へ向かう道と「黄金清水」方面に向かう道の分岐点ですが、今回は「黄金清水」に向かう「燕新道」を通って「大倉池」、「長助池」に向かいました。ところどころキツイ登りもありますが、順調なペースで歩くことができました。樹林帯を抜けてほっと一息、顔をあげると目の前が急に開けました。「長助池」です。
 この妙高山外輪山の内側にある池塘「長助池」は、山々に囲まれた独特の景観を持つ高原湿地です。イワショウブやウメバチソウが風にゆれていて、私たちを優しく迎えてくれました。



 写真正面一番奥の池塘の周りでは、ミズバショウとハクサンコザクラを同時にみることができる時期があるそうです。これから写真の左手奥の外輪山を越えて行きます。
 写真左手に進んで行くと妙高山山頂ルートと黒沢池方面ルートの分岐に出ますが、山頂へは向かわず、先ほどの「長助池」を眼下に眺めながら黒沢池に向かう「大倉乗越」(外輪山の切れ目)を目指して登り道を進みました。
 「大倉乗越」では涼しい風がふきぬけるなか、青空の下の火打山頂を正面に眺めることができました。ここから「黒沢池ヒュッテ」までは下りです。登山道の両脇には太いウダイカンバをみることができます。妙仙橋を出発して5時間、「黒沢池ヒュッテ」に到着しました。

 ここで、少し早い昼食をとりましたが、短い休憩時間にもかかわらず、いろんな生きものが私たちの昼食をのぞきにやってきました。
 まず、シラフヒゲナガカミキリの♀がテーブルの近くに飛んできました。ゴマダラカミキリに似ていますが、♂は名前の通りヒゲが長くかなりカッコイイそうです。
その次にやってきたのは、


 

「キベリタテハ」でした。大型のタテハチョウの仲間で、とても美しいチョウです。
 「あたし(オレ?)、きれいでしょ?」という感じでテーブルに羽根を広げてとまったあと、若い男性の肩にとまってTシャツを一生懸命吸っていました。(なので、やっぱり「あたし」?)
 今年は、この妙高山周辺や火打山登山口周辺の笹ヶ峰でチョウを多くみかける気がします。多くの種類の生きものたちにであえるということは、生きものたちを支える環境がまだ残っているということを教えてくれます。

 昼食後は「三ッ峰」に向かいました。この「三ッ峰」は妙高山の外輪山の一つ「神奈山」山頂への道と燕新道の「大倉池」に向かう道の分岐点となっています。道ばたには登山者の目を釘付けにするオレンジ色の花がいくつも咲いていました。




 クルマユリです。そろそろ花の時期も終わりのようでした。

 「三ッ峰」の分岐にたどりつくころには、周囲が霧に包まれはじめました。左手の道、神奈山山頂方向に進みましたが、草が生い茂っているところが有りなかなか歩きにくい道でした。神奈山山頂への登りの道ばたにはオオヤマボクチ(ヤマゴボウ)の蕾が沢山みられました。この植物の葉の繊維は、蕎麦のつなぎとして昔から利用されていると地元の方に教えて頂きました。
 標高1909mの神奈山山頂にたどりついたのはうれしかったのですが、あたりは霧で真っ白、せっかくの高田平野の眺望も残念ながら全く見ることができませんでした。

 ここから車を駐車しておいた関温泉スキー場の駐車場までは、長い下りです。スキー場の上に出るまでの間には太いブナが多い「大ブナ林」をぬけていきますが、歩幅を広くしすぎたため下りのカーブにあったブナの根っこに乗ってしまい、ハデに転んでしまいました。ただ、この登山道も藪やキツイところがあるコースです。
 関温泉スキー場ゲレンデに入ると背丈ほどもある草をかき分けながら下るところもありましたが、それでも「黒沢池ヒュッテ」から3時間半ほどで関温泉スキー場の駐車場に到着しました。振り返ってみるとこの区間も比較的順調なペースでした。

 今回歩いた登山道はいままで訪れたことがないところが多く、私にとっては新鮮な体験でした。妙高高原地域には全域に似たような生きものたちが生活していますが、それでも標高や場所が少し違えば、出会う生きものたちも違うものだということを改めて実感することができました。他にも植物動物問わず多くの生きものたちと出会うことができましたが、全てご紹介できないのが残念です。

 妙高高原の事務所に戻る途中、30年以上見たことがない大きなミヤマクワガタの♂が車道の脇をヨタヨタと歩いて横切っていきました。妙高高原にはまだまだ豊かな自然が残されています。

 一人でも多くの皆さんに妙高高原の自然の豊かさを知って頂きたい、そして実際にこの豊かな自然を体感して頂くことで、環境保全にも目を向けて頂きたい、そんな願いを込めて今後も妙高高原の自然をご紹介していきたいと考えています。

 最後に今回ご紹介したルート所要時間はあくまで参考の時間です。実際に歩いてみたいと思われた方は、現地の情報を十分ご確認の上、余裕をもった行程と計画で楽しんで頂きたいと思います。

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2011年06月29日生きものたちの楽園「妙高高原」

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 先回の日記から3週間以上過ぎてしまいました。
梅雨どきの妙高高原は様々な生きものたちが活発に動きはじめる季節。
この三週間で出会った生きものは、工事現場に現れた「ニホンリス」の子どもやいもり池を飛び回るトンボの「コサナエ」、車の前に飛び出してきた「モリアオガエル」やひらひらと舞う「ウスバシロチョウ」「アサギマダラ」など様々でしたが、一つだけご紹介。
羽化直後の「ミヤマカラスアゲハ」です。




 6月上旬の夕方、保護官事務所からいもり池に向かう車道の道ばたで小雨に打たれていました。何枚もしつこく写真を撮るといやがって向きを変えてしまいました。

 さて、6月の後半になって新潟も梅雨入りしました。
梅雨入り後の週末、早朝から地元の皆さんによる妙高山の登山道整備に同行しました。
 登山道の倒木や繁茂するネマガリダケの状況を確認しながら、赤倉登山道の上にある温泉管理小屋から分岐点の通称「天狗堂」まで進みました。燕温泉側からあがってきた班と合流し、石の祠の前でしばし休憩です。




 まだ足下には雪が残っていました。写真左手の奥から山頂に向かう途中にも、ところどころ雪が残っているとのことでした。今年は雪消えが例年より遅いようです。妙高山に登られる皆さんは事前に十分に情報を集めた上、「無理のない計画で、楽しい登山を!」お願いします。

 天候には恵まれませんでしたが、無人の避難小屋「大谷ヒュッテ」まで戻り池の平温泉と妙高温泉の源泉「南地獄谷」に向かう途中、地元の方も驚くほど濃いピンク色のイワカガミを見ることができましたし、幻想的な霧の中高さ10㎝に満たないこんな可憐な花にも出会えました。




 これはアカモノというツツジ科シラタマノキ属の常緑小低木で、真っ赤な実をつけることから「赤桃(あかもも)」と呼ばれていたのが、いつしか訛って「アカモノ」と呼ばれるようになったそうです。別名は「イワハゼ」。

 3種あるイワカガミも写真のアカモノも、上信越高原国立公園の「指定植物」です。「指定植物」には多くの種類がありますので、ぜひHPで一度確認してみてはいかがでしょうか。

 詳細な情報は、環境省ホームページトップの右下「国立公園」から、
右側「関連法令・各種資料」→資料「自然保護各種データ」→自然公園について「国立・国定公園特別地域内指定植物」と進んでください。
アドレスは、
http://www.env.go.jp/park/doc/data/plant.html
です。

 植物だけでも本当に多くの貴重な種があることがわかっていただけると思います。子ども達や次の世代へ豊かで安全な環境を受け継いでいくために今取り組むべきことは何か、考えていただくきっかけになれば幸いです。

 アカモノの写真を撮ったあと、予想外の強い雨に追われるように山を下りました。今度は是非天候の良い時に、訪れてみたいと思いました。

皆さんも豊かな自然の宝庫「妙高高原」の生きものたちに会いに来ませんか?

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2011年05月30日妙高高原はなだより

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 先週一週間は、わりと晴天にめぐまれた妙高高原。ミズバショウの葉がぐんぐん大きくなっているいもり池周辺は「ミツガシワ」が咲き始めました。




 ミズバショウに負けず劣らず咲き誇るこの花、氷河期の遺存種といわれています。つぼみの先端は桃色に染まり、5つにわかれて開いた花冠の内側には縮れた毛が見られます。ヨシが大きくなる前に見ることができれば、ミズバショウとはまた違った表情をみせるいもり池を味わっていただけると思います。

 一方、火打山登山口近くの笹ヶ峰にもようやく遅い春がやってきました。
調査をかねて訪れた笹ヶ峰ダム(乙見湖)の奥は「春の妖精=スプリング・エフェメラル」たちの楽園でした。

 「春の妖精=スプリング・エフェメラル」とは、春先に花を咲かせ、夏までの間に光合成を行って地下の栄養貯蔵器官や種子に栄養素を蓄え、その後は翌年の春まで地中の地下茎や球根の姿で過ごす、といったライフ・サイクルを持つ植物で、「林床性多年生植物」と言ったりするようです。

カラマツを抜ける歩道のわきにはその「春の妖精」の一つ、




 エゾエンゴサクがそよ風にゆれていました。

 ミズバショウとカタクリは最盛期で、そのほかにもキクザキイチゲ、リュウキンカ、ニリンソウ、エンレイソウ、シロバナエンレイソウなどを見ることができました。

 さらに、新潟以北の日本海側に限って見ることができる、




コシノカンアオイ「三兄弟(?)」もひっそりと咲いていました。

 こんなに一度に多くの種類の花々が咲き乱れる光景を見ることができたのは、生まれて初めてです。

 歩道わきの池ではクロサンショウウオの団体さんとその卵をみることができましたし、乙見湖休憩舎付近では飛び交うイワツバメも見ることができました。

 標高750mほどのいもり池周辺から1300mほどの笹ヶ峰まで、車で片道40分程度の間に、様々な自然の息づかいを体感できることが、この地域の大きな魅力の一つでもあります。

 また一つ、妙高高原の自然の奥深さと豊かさを学ぶことができました。

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2011年05月18日「日常の一コマ」と「お知らせ」

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 今日は朝から抜けるような青空。いもり池のミズバショウは盛りを過ぎ、フキノトウとタラの芽は15㎝くらい、ともに食べ頃は過ぎました。事務所の周りも日に日に緑が濃くなってきています。

 午前中、保護官に同行して融雪後の施設確認に行ってきました。
まだ赤倉から関温泉にぬけるルートは通行できないため、一旦国道18号バイパスに出て上越方面に進み、妙高山麓直売センター「とまと」が目印の「坂井北」交差点を妙高山に向かって登ります。国立妙高青少年自然の家と休暇村妙高を過ぎると「五最杉園地」に到着です。

 手軽な散策コースですが、休暇村妙高職員の方の案内で、歩道には雪の重みに耐えられなかった木が覆い被さっていて危険な箇所がないか、また雪で壊れた施設がないかチェックしながら園地内の各施設をまわります。

まず、休暇村妙高駐車場の脇から遊歩道に入り、




五最杉園地駐車場周辺が一望できる丘の上の東屋に向かいます。




 こういった施設の確認作業も、一般の皆さんに安全に利用していただくための大切な業務の一つ。地味な作業ですが、この地域一帯の環境保全と適切な利用のため日々頑張っています。

 ところで、巡視の合間にちょっと目立つ柄の甲虫を発見!




 テントウムシにしては少し大きめだし、形も柄も違います。

 保護官から、発見場所周辺に「イタドリ」が生えているのを教えてもらったことがヒントとなり、後で「イタドリハムシ」とわかりました。
このハムシの仲間はだいたいが葉っぱを食べます。だから「葉虫」。なかでもイタドリハムシは成体、幼虫ともにイタドリやスイバの葉っぱを好んで食べます。成体で越冬し、春に良く見られるそうです。もっと近くで撮影しようとすると、元気よく青空に飛んで行きました。

 小さな昆虫ですが、妙高高原の厳しい冬に負けない強い生命力を感じます。ちょっとだけその生命力を分けてもらった気がする、そんな楽しい出会いでした。

 さて、タイトル通り、妙高高原自然保護官事務所よりお知らせです。
ただいま、環境省では「妙高高原地区パークボランティア」を追加募集しています。環境省が力を入れている「妙高高原の素晴らしい自然を守る」活動のお手伝いをしていただける方、妙高高原地区の環境保全に興味がおありの方がいらっしゃいましたら、環境省長野自然環境事務所ホームページ等に掲載中の募集要項をご確認の上、専用応募用紙に必要事項をご記入頂き、妙高高原自然保護官事務所までご応募下さい。

 ご不明の点がございましたら、下記までお問い合わせ下さい。

○環境省長野自然環境事務所ホームページアドレス

http://c-chubu.env.go.jp/nagano/

○お問い合わせ

環境省妙高高原自然保護官事務所
〒949-2112 新潟県妙高市大字関川2279-2
電話:0255-86-2441, FAX:0255-86-2464

※定員がございますので、ご希望に添えない場合もございます。ご了承下さい。

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2011年05月11日妙高山の雪形「跳ね馬」といもり池のミズバショウ

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 連休中はあまり安定した晴天に恵まれず、気温も上がったり下がったり。雪解けも思ったほど進んでいないようで、平地でも日陰に雪が残っていたりします。

 そんな連休明けの5月9日月曜日。気温はぐんぐんあがり、朝からぽかぽか陽気。出勤途中、快晴の空のもと妙高山の外輪山に少し太り始めた雪形「跳ね馬」が、あまりにくっきり浮かんでいたので、車を脇にとめて降りてみました。




 丸で囲んでみましたが、ちょっと小さすぎたでしょうか?なんとなくでもわかって頂ければ嬉しいです。国道18号バイパスを長野方面に向かう車線。「道の駅あらい」の手前「梨木」の信号付近から撮った1枚です。

 この躍動感あふれる「跳ね馬」は農作業開始の目安といわれており、妙高の春をいろどる代表的な風景の一つです。この「跳ね馬」、雪がとけるにつれて徐々に太っていきます。その様子も、私にはいとおしく感じられます。

 国道の右手側には八重桜の並木が続き、ほんの数日前まで濃い桜色に染まっていましたが、今朝は少し残っている程度でした。

 さて、「跳ね馬」を右手に見ながら18号を長野方面にさらに進むと、近づくにつれて「馬の鼻」側を通行するかたちとなり、ついには完全に雪形の斜面の真横をすぎて、見ることができなくなります。妙高高原の自然保護官事務所に近づいた証拠です。

 事務所到着後、朝のいもり池に向かってみました。5月2日池周囲の清掃活動をした時には、まだちょぼちょぼだったミズバショウ。1週間経ってどんなもんでしょうか?




 風もなく穏やかで、池ごしにせまる妙高山の圧倒的な迫力とその美しさに、まず見とれてしまいました。遊歩道を進んでいくと、お目当てのミズバショウです。どれどれ…




 こんな感じでした。でも、去年はもっと多かったような気がします。ということは…
今週末こそ、ミズバショウに埋め尽くされた湿原のピークを楽しむことができるかもしれません。「もう終わってるだろうな。」と残念がっている皆さん、これからでも妙高高原のいもり池に足を運んでみてはいかがですか?きっと妖精のようなミズバショウたちが皆さんを大歓迎してくれると思います。

 なかなか暖かくなった感じがしない今年の春。それでも少しずつ新緑の季節に向かっているようです。ミズバショウが終わるころ、もう一つの春の顔「ミツガシワ」がいもり池をいろどります。

※ミズバショウの開花状況は、今後の気象条件によって大きく変化します。

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2011年04月22日妙高高原自然保護官事務所周辺のいま

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 4月の中旬から気になり始めるのが、いもり池周辺の花々の開花状況です。今年の春はなかなか暖かくならず、いつまでも雪が残ってしまってヤキモキする毎日です。昨日は数日ぶりの晴れ間でしたので、午後からいもり池の周囲の状況を確認しに出かけました。いもり池は妙高高原自然保護官事務所から歩いて数分でビジターセンターと反対側の入口に到着です。




奥に見えるのは黒姫山です。
まだ運動靴ではちょっと歩きにくい状況。それでも、待ちきれないお客様が春のおとずれを楽しんでおられました。妙高山側の湿地には、ようやくミズバショウのまっしろな仏炎ホウ※がぽつぽつ出始めました。最盛期には、まるで妙高山の裾野が全てミズバショウで覆われてしまうかのような、見事な群落をみることができます。




 池をめぐる遊歩道の半分は、すでに雪が消えています。池は山側の流れ込みと道路側の流れだしのまわりで水面が現れ、遠くから様々なトリたちのさえずりとカエルの鳴き声も聞こえてきます。


 

 例年この時期から5月の連休いっぱいまで、妙高高原ビジターセンターの協力で、環境省妙高高原地区パークボランティアの皆さんが「ミズバショウ解説活動」を行っています。
 今日、自然保護官が状況を確認に行ったところ、妙高市の職員の皆さんを中心にスコップで残った遊歩道上の雪を除雪されていたそうですので、今週末は仏炎ホウも増え、遊歩道も一層歩きやすくなっていると思います。
 私も事務所の車と「ピーター」(除雪機のことです)をいれかえて車庫にしまい、グリーンシーズンに向けて準備を始めました。
 昼頃には、アカゲラが雪で倒れた木の幹を一生懸命つついて幼虫を食べる姿もみることができました。
 妙高高原に花々が咲き乱れ、生きものが活発に活動する季節まで、あと少しです。

「ミズバショウ解説活動」に関するお問い合わせは、

○環境省妙高高原自然保護官事務所
〒949-2112 新潟県妙高市大字関川2279-2
電話:0255-86-2441, FAX:0255-86-2464
MAIL:TAKUYA_NISHIBAYASHI@env.go.jp

または、

○上信越高原国立公園妙高高原ビジターセンター 
〒949-2112 妙高市大字関川(池の平)2248-4
TEL・Fax 0255-86-4599
E-mail myokovc@myoko.tv
URL http://www.myoko.tv/mvc/
  
まで、おきがるにご連絡下さい。

※「ホウ」の漢字は、くさかんむりに「包」です。

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