伊勢志摩国立公園
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2020年08月18日小俣小学校レンジャー出前授業
伊勢志摩国立公園 天満理恵
伊勢志摩国立公園管理事務所では、伊勢志摩国立公園の自然について楽しく体験しながら学べる講座「レンジャー出前授業」を行っています。レンジャーがご要望のあった学校などに出張し、映像や実物を使いながら自然や生物についてのお話しをしたり、一緒に自然観察をしたりしています。
今年も昨年に引き続き、伊勢市立小俣小学校で7月15日・16日に小学校の近くにある汁谷川についての出前授業を行いました。今年の4年生は合計で123名でしたが、三密を避けるため現地での授業ではなく、汁谷川に住む生物を事前に採集し、4つのクラスごとに理科室でレクチャーと生物観察を行いました。
授業では伊勢志摩国立公園と、その自然を守るレンジャーの仕事について紹介しました。また学校の近くにある汁谷川の生物と環境をレンジャーの視点で紹介し、身近な自然環境を意識したり大切に思う気持ちを育むことを目指しました。他にも、安全の為に川には大人と一緒に行くこと、服装や持ち物に関してや、あぶない生物についても紹介しました。
児童に観察してもらった生物は、メダカ・ヤゴ・カワニナ・カニ・カエルです。児童はとても熱心に生物を観察していましたが、なかにはトンボの幼虫のヤゴを初めて見て、その姿に驚いている児童もいました。
一緒に生物を観察した児童が「自分もレンジャーになりたい!」と話しかけてくれました。授業を通して自然保護の仕事に興味をもってくれたようです。新型コロナウイルス感染拡大防止の為制限もありますが、児童は楽しそうに生物を観察していました。
2020年07月28日東大淀小学校レンジャー出前授業(1回目)
伊勢志摩国立公園 小川美代子
伊勢志摩国立公園管理事務所では、伊勢志摩国立公園の自然について楽しく体験しながら学べる講座「レンジャー出前授業」を行っています。
7月7日、伊勢市立東大淀小学校でレンジャー出前授業を行いました。
伊勢市立東大淀小学校は、レンジャー出前授業として、4年生を対象に年間を通した「クスノキ学習」を平成30年から3年間継続して行っています。今年も年間4回の学習を予定していました。しかし、1回目の学習は学校が新型コロナウイルス感染予防対策として休校中だったため中止しており、7月7日は待ちに待った1回目の学習でした。
ここで東大淀小学校の「クスノキ学習」について紹介しておきましょう。
東大淀小学校の運動場には、大きなクスノキがあり、校舎の高さと変わらないほどの大木に育っています。私も、初めてそのクスノキを見たとき、その大きさと堂々とそびえ立つ姿に感動しました。
東大淀小学校ではこのクスノキのことを「くすのきさん」と呼び、学校全体で大切にしています。そして、このクスノキにかかわる学習が「クスノキ学習」です。
4年生では理科の学習でクスノキをとりあげ、1年間(季節)の変化を観察していきます。
7月7日は今のクスノキの様子を観察することが目的でした。
運動場で観察をしたかったのですが、雨降りだったので、感染症対策として児童同士、また私たちとも十分な間隔がとれるように体育館で行いました。
まずは、国立公園やレンジャーのことについて知ってもらい、東大淀小レンジャーとして活動することの意識付けを行いました。
次に、体育館の渡り廊下からクスノキ全体の様子を観察し、その後は、体育館に戻って、葉の観察をしました。
葉の色を観察したり、長さを測ったり、手触りやにおいを確かめたりしました。においをかいだとたん「くさーい!」と口々に言っている児童の様子に思わず笑ってしまいました。ツーンと薬くさいにおいを知っている児童も何人かいて、「葉を折り曲げるとよけいにおいするんやよ。」と私がやりたいことを先んじて言っている児童もいました。クスノキは児童にとって身近な存在です。普段の生活でクスノキの葉のにおいをかいだり、葉を折り曲げたりすることはよくあることなのでしょう。その中で、折り曲げると更ににおいが増すことは経験済みなのでしょう。
しかし、新たにクスノキの薬くさいにおいに気づいた児童もいました。身近な存在のクスノキですが、クスノキへの関わり方は児童によって様々です。どの児童にとってもクスノキの姿を1年間継続して観察することは、知らなかった新たな一面を知るよい機会になると思いました。
今回は、クスノキ全体や葉の様子を観察しましたが、季節の変化については観察しませんでした。しかし、4月からの3ヶ月の間にクスノキは確実に変化しています。下の3枚の写真を見ても葉の色が変化していることがわかります。そして、つぼみから花がさき、実が出来はじめているという大きな変化がありました。秋の学習では変化に着目し、実際のクスノキの観察とともに写真などを活用したいと思います。
<4月21日 東大淀小クスノキ>
<5月19日 東大淀小クスノキ>
<7月2日 東大淀小クスノキ>
2020年07月07日南伊勢町押渕の昆虫観察会
伊勢志摩国立公園 志摩 天満理恵
はじめまして。5月から伊勢志摩国立公園のアクティブ・レンジャーに着任した天満です。よろしくお願いします。
横山ビジターセンターでは身近な自然環境への興味を深めて頂くため、定期的に伊勢志摩国立公園内で自然観察会を行っています。
南伊勢町の押渕地区には、わき水の豊かな湿地が広がり希少な植物や昆虫が生息しています。今回は二十四節気の夏至である6月21日に観察会を行いましたが、ちょうど半夏生(はんげしょう)の葉の色が、白く化粧したように変わりはじめていました。雑節(二十四節気を補う季節の移り変わりの目安)の半夏生は旧暦では夏至より10日後とされていますが、その頃に葉の色が変わるのでこの名前がつけられたとも言われています。
参加者はクヌギ林と湿地の2カ所で昆虫を採集し観察しました。クヌギ林では主に甲虫類、湿地ではトンボやバッタなどの昆虫が採集できました。最終的にはカブトムシ、コクワガタ、キマワリ、ニジゴミムシダマシ、クロウリハムシ、キベリゴミムシのなかま、ササキリ、ショウリョウバッタ、ヒシバッタ、シバスズ、カマキリの幼虫、チャバネゴキブリ、ハラビロトンボ、モートンイトトンボなどの昆虫やトノサマガエル、カワニナ、ミズグモなどを採集し、観察することが出来ました。今回の講師である伊勢志摩国立公園パークボランティアの中山さんは、観察会の前に毎日のように現地に足を運んで準備し、当日は参加者に昆虫について楽しく解説して下さいました。
横山ビジターセンターでは定期的に伊勢志摩国立公園内で自然観察会を行っています。
7月は「ハマボウの観察会」を行いました。一般参加者とスタッフ合わせ新型コロナウイルス感染予防対策をとりながら20名で観察を行いました。
南伊勢町の伊勢路川河口には、大きなハマボウ群落があります。ハマボウの生育地は河口や内湾などの干潟に限られており、三重県の絶滅危惧種とされています。ハイビスカスと同じ仲間であり、初夏には直径6~8cmの黄色の花を咲かせます。朝に咲いて、夜にはしぼんでしまう1日花ですが、毎日たくさんの花をつけます。
はじめにハマボウの花を観察しました。三重自然誌の会の山本和彦さんが講師となり、花や果実、種子などについて解説をして頂きました。
ハマボウは一般的な土地でも育てることはできるそうですが、他の植物に負けてしまい育たないことが多いそうです。ここで群生できたのは、海辺で育つことができる植物は少ないため、他の植物との競争がおこらなかったのではないかということでした。
また、ハマボウのタネは水に浮きます。海水に浮いて遠くまで流れ、分布を広げるそうです。タネを浮くようにし、育つことができる限られた環境を広い範囲で見つけ出そうとするハマボウの知恵を知り、あらためて感心をしました。
ハマボウの観察の後は干潟でカニの観察をしました。この干潟には、シオマネキやハクセンシオマネキなどの絶滅危惧種のカニがいます。そのカニたちを座って静かに観察しました。干潟の生物は用心深く、動くものを感じるとおびえて隠れてしまいます。しばらく静かに観察をしていると、はじめは見えなかったハクセンシオマネキが次から次に現れ、何匹も見えるようになったかと思えば、左右のはさみの大ききが違うオスが大きなはさみの方を揺らして、近くにいるメスに猛アピールしています。もっと小さなチゴガニのオスもはさみをふって「おいで、おいで」をして、近くにいるメスにアピールしているのも見えてきます。
参加者の皆さんも暑さを忘れて、しばらく見入っていました。
カニの観察の後は、家族単位で干潟の生きもの採集をしました。短い時間でしたが、クロベンケイガニ、ウミニナ、ヤドカリ、ヒモイカリナマコ、ハゼの仲間などが捕れました。個別に観察ケースに入れ、観察するとともに、半田管理官からその生態についてレクチャーを受けました。
梅雨の晴れ間の暑い日、また、マスクなどをつけての観察会でしたので、熱中症にならないよう十分注意しながら、参加者全員が無事活動を終えることができました。