2021年3月
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2021年03月18日令和2年度 伊勢志摩国立公園「子どもパークレンジャー」
伊勢志摩国立公園 小川美代子
伊勢志摩国立公園管理事務所では、「横山ビジターセンター自然観察会」や「子どもパークレンジャー」などの自然ふれあい事業を行っています。
3月14日には、コロナ禍のため延期されていた「子どもパークレンジャー」を開催しました。伊勢志摩国立公園の「子どもパークレンジャー」は、①子供たちが生活している伊勢志摩国立公園の特徴やパークレンジャーの活動について知る。②レンジャーと一緒に活動しながら、地域の自然や生きものを調べ、記録する。③活動での発見や気づきを多くの人に伝え、自然を守る仲間を増やす。を目的に実施しています。
コロナ禍の影響で参加人数は11名でしたが、小学1年生から6年生までの幅広い年齢構成になりました。
まず、国立公園のことやレンジャーの活動ついての話からスタートしました。「今日は、きみたちもレンジャーだよ」と言われて、ちょっと戸惑っている子供もいました。
次は、遊歩道を歩いて横山天空カフェテラスへ、グループごと(3グループ)に向かいました。遊歩道には、普段から3つの「自然ふれあいクイズ」が用意されています。この季節のクイズは、「ウラジロとコシダ、伊勢志摩地方のしめ縄の飾りに使われているのはどちら?」「冬に英虞湾にみえる緑色の網は、何を養殖しているの?」「ウバメガシはある名産品の材料だけど、それは何?」です。このクイズをやりながら、横山の自然や英虞湾などについて話をしました。高学年の子供たちにとっては、クイズは簡単だったようで、直ぐに「はい!○○やろ。」「ヒイラギ(しめ縄飾りに出てきた)は節分のときにも使うよ。」と発言していました。
横山天空カフェテラスでは、伊勢志摩国立公園の位置や自然、英虞湾の地形などの解説をして、一緒に英虞湾の景色を見ました。風の強い日でしたが、天気もよく、英虞湾の奥の方までよく見え、とてもきれいで、しばらくみんなでその景色を見ていました。
横山展望台へ行った後は、みんなが楽しみにしていたビオトープ周辺での生きもの探しの時間でした。「カエルおるかな。」「カエルの卵を見るのが楽しみ。」と話してくれたり、ズボンが濡れるのも気にせず水に入り、生きものを探してすくったり、「○○がとれたよ!」とうれしそうに報告しにきてくれたりと、楽しい気持ちがこちらにも伝わってきました。
30分後、バケツには水辺のいろんな生きものが集まりました。
ホトケドジョウ、クロゲンゴロウ、ヒメゲンゴロウ、ヨシノボリ、カワムツ、アカハライモリ、コヤマトンボやコシボソヤンマのヤゴ、ヘビトンボの幼虫、ヤマトヌマエビなどのエビ、ツチガエル、アカガエルの卵やおたまじゃくし等々。
室内に戻ったあとは、調査を記録し、伝える時間。まずは、今横山で数を調査しているアカガエルの卵塊一つにどれだけの数の卵があるのかをグループごと、メンバーで助け合って数えました。タピオカみたいな卵を10個ごとに分けて数えます。一番多かったグループは427個でした。その後は、採集したお気に入りの生きものを観察して、その特徴をワークシートにまとめました。どの子供もその生きものの色や形、動きや様子などをよくとらえ、記入していました。最後は、みんなの前で自分の記録を発表!「発表ができない子がいたら・・・」とスタッフで対応を考えていたのですが、その配慮も全く必要なく、みんなしっかり自分の調べたことを発表できました。
<まとめの話>
気がつくと終了の時間。あっという間でしたが、様々な活動ができ、中身の濃い時間になったように思います。子供たちの感想をもっとたくさん聞くことができるとよかったのですが、その時間もなく、終了となったことが心残りでした。(感想は後日、まとめて聞かせてもらえるそうです。)
2021年03月16日あの世とこの世。地獄の山『立山』
中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔
「立山のいまとむかし~立山信仰と歩くアルペンルート~」と題して、立山の魅力をシリーズとして紹介しています。今回は第4回目です。
<第1回目の記事はこちら> 立山が出てくる最古の文学書「万葉集」
<第2回目の記事はこちら> 立山を開山したのは誰?熊と白鷹の伝説
<第3回目の記事はこちら> 旅する掛軸「立山まんだら」って何?
前回、立山曼荼羅(まんだら)を広めることで、立山参りに来てくださいね~と立山の宿坊の主である「衆徒(しゅと)」の人たちが立山信仰を広めていったというお話をしました。
信仰をしていた人たちは全国にいたようですが特に尾張(愛知)周辺の人たちに多くいたようです。そこで、
ここでいきなりクーーイズです^^
「では実際にその人たちは遠路はるばる立山に何を求めに来たのでしょうか?」
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① 立山に素晴らしい景色を求めて
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② 亡くなった人に会いに来た
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③ 高い山に登りたいから
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④ 熊やシカなどの神聖な野生動物に会いに来た
4つの内のどれに当たるでしょうか。答えは、後ほど!
立山曼荼羅を見てみると、「地獄」が描かれており、様々な地獄の様子を映し出しています。曼荼羅の左上部分に集中的に地獄絵図が見受けられます。
<富山県[立山博物館]蔵、『吉祥坊本』国指定重要有形民俗文化財>
※立山博物館より許可を得て掲載しています。
地獄はあの世、つまり「死後の世界」です。地獄にも色々な種類があり、全部で136の地獄があるそうです!!
そして、あの世とこの世をつなぐのが「三途の川」であり、立山信仰では芦峅寺にある「布橋」を境にあの世とこの世を分けていました。現在ある布橋も、橋を渡った先にはお墓があり、その先に民家という家はありません。
<降雪の布橋。冬の時期はアーチ部分がブルーシートで覆われていました。お墓の先は曼荼羅遊園になっている。>
亡くなった人は、十王から厳しい裁きをうけて立山のどこかの地獄へと堕ちると言われたそうです。(実際には仏教では、地獄の道以外にも他の5つの道があるとされています。ややこしいのでそこは割愛します。)
昔の人は、
「立山へ行けば、亡くなって地獄におちた人に会える。立山参拝(信仰)に行けば亡くなった人が成仏し、自分の罪も浄化される。」と信じて、遠路から立山参りをしていたようです。
なので、先ほどのクイズの答えは、
「②亡くなった人に会いに来た」が正解でしたー!皆さん当たりましたでしょうか?!
立山という雄大な山の中に地獄谷という特異な景勝地があったことで、そこを地獄と見たてて立山曼荼羅に描き、信仰を広めていったんですね。立山の自然の素晴らしさと人の想像力の豊かさがあってこその産物です。
<室堂平にある「血の池」>
今もその名は引き継がれており、地獄谷やエンマ台、血の池など訪れた人を魅了しています。(※現在地獄谷は火山ガス濃度が高いため通行禁止となっています。)
参考文献:立山の歴史 立山信仰の歴史[2006 富山県立山センター]
入門!立山ワールドあんない[H30 富山県立山博物館]
立山ふしぎ大発見?![R元年富山県立山博物館]
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中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。
2021年03月11日春めいてきました
上信越高原国立公園 志賀高原 則武敏史
こんにちは、上信越高原国立公園の志賀高原です。
雪はまだまだ豊富です。スキーにお出かけください。
「長野近隣県限定 スキーリフト券半額キャンペーン」が行われています。
長野県報道発表3月9日<https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoshin/happyou/210309press.html>
※「信州版 新たな旅のすゝめ」を参考に、基本的な感染防止対策の実践にご協力をお願いします。<https://www.pref.nagano.lg.jp/kankoki/sangyo/kanko/tabinosusume.html>
さて、雪は豊富ですが、春めいてきました。
■国立公園内の標高約1,500メートルにある事務所への進入路の写真です。
まだ、進入路の脇には、自然の積雪+除雪機で吹き飛ばした雪でできた、2メートルくらいの高さの雪の壁があります(中央のポールの長さが2メートル)。これでも、このところの暖かさで、嵩(かさ)が減りました。
また、進入路の所々で雪が解けて、アスファルト(通路の黒い部分)が見えるようになってきました。
事務所へのアクセス道路である国道292号は、麓から事務所までの区間では、積雪はほとんどなく、無積雪期と同じような感じで運転できます。
ただ、気温は昼間でも氷点下のままという日があります。スタッドレスタイヤの装着やチェーンの携行(または装着)など、雪道の運転の準備は必要です。
<写真撮影者の背中側に事務所がある。3月11日撮影。>
■道路脇の霜柱(しもばしら)
霜柱は冬のイメージかもしれませんが、積雪のある場所では、雪が解けて地面が見えるようになってようやく見ることができるものです。
雪が解けても気温の低い日があることが分かります。
<3月9日撮影>
霜柱の写真を撮影した場所の背中側には琵琶(びわ)池があります。まだ一面に雪があります。しかし、山の斜面では、木の幹の根元の雪が解け始めていて、春の気配を感じます。
<標高約1,400メートル。奥に見えるのは坊寺(ぼうでら)山。3月9日撮影。>
【新型コロナウイルス感染拡大防止についてのお願い】
上信越高原国立公園の利用においては、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、身体的距離の確保、マスクの着用、手洗いや3つの密を避けるといった「新しい生活様式」の実践をお願いします。また、上信越高原国立公園へお出かけの際には、上信越高原国立公園のページ<https://www.env.go.jp/park/joshinetsu/>、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認ください。皆様のご協力をお願いします。
厚生労働省「新しい生活様式の実践例」
<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html>
2021年03月01日戸隠小学校6年生 鏡池スノーハイク
妙高戸隠連山国立公園 戸隠 土屋達郎
年が明けてからあれよあれよという間に時間が過ぎ更新が止まっておりました。皆様いかがお過ごしでしたでしょうか。

<戸隠小学校6年生 ※撮影のため一瞬だけマスクを外しています>
今回は、先日戸隠小学校6年生の子どもたちとスノーハイクに行ってきましたのでそのご報告です。
これは昨年秋の「荒倉山と鬼女紅葉伝説を訪ねて」でもご紹介しました、子どもたちに自分たちの地元である妙高戸隠連山国立公園への理解をより深めてもらうために環境省が行っている事業の一環です。
戸隠小学校6年生21名と先生方、保護者の方、そしてガイドを担当される「戸隠を知る会」の方々とともに、クロスカントリースキーを履き戸隠神社奥社入り口から随神門を経て鏡池までのルートを行きました。
子どもたちはさすが戸隠っ子だけあって、皆さんスキーが上手でしたね。普段から体育の授業でスキーをしているそうです。子どもの頃からスキーが日常にあるなんて羨ましすぎます。「あー長野県に生まれたかった~」
大人になってからスキーが出来るか出来ないかで人生の幸福度はだいぶ違ってくると確信している「たっつあん」です。
「戸隠を知る会」の方の楽しい解説を聞きながら、ブドウのつるのブランコを体験し、ミズナラ大王に出会い、思い思いのルートを歩きながら随神門へ。夏は参道しか歩けませんが、冬はスノーシューやクロスカントリースキーがあればどこでも歩けるのが大きな魅力ですね。随神門までは割と平坦でしたが、随神門から鏡池までは緩やかに下っていて、スキーにとっては楽しいルートです。
森を抜けるといきなり視界が開けて広~い鏡池の上に滑り出ます。そして荒々しい戸隠山が目の前にどーん。それまでとは別世界になる時のいきなり感が楽しいですね。
子どもたちの何人かは鏡池の堤防の法面を使ってスキーで滑って遊び始めました。大人でも怖がるような急斜面でも物怖じせずに滑り下りる子どもたち。
凍った鏡池の上でお昼を食べた後は、自然と雪合戦が始まりました。内心「こんな広いところで雪合戦やったら楽しいだろうな。でも怪我されても困るから子どもたちをそそのかすのはやめておこう」と大人な判断をする私でしたが、何も言わないうちから雪合戦を始める元気な子どもたちには笑ってしまいました。
<雪合戦>
鏡池の堤防滑りで度胸がついたのか、帰り道は平坦な道ではなく敢えて木々の間とか斜面のルート取りをする私の後をついてくる子が何人かいましたよ。
子どもたちにとっては、妙高戸隠連山国立公園を全身で楽しんだ思い出に残る1日となったことでしょう。
こんにちは、中部山岳国立公園管理事務所の福澤です。
3月19日から20日、西穂高方面へ冬期巡視に行ってきました。
北アルプスの冬期登山は敷居が高く、経験豊富な一部の登山者にのみ許された
狭き門、と一般的には思われるでしょう。
実は、その入り口に立って比較的簡単に冬の北アルプスの景色を垣間見ること
ができる場所があります。
それは、新穂高ロープウエイで西穂高口駅まで行くことにより体感できます。
新穂高温泉口駅から2本のロープウエイを乗り継ぎ、降り立った西穂高口駅は
もう北アルプスの標高2156m付近です。
昨年リニュアルされた新穂高ロープウエイはAR日記でも紹介しましたが、お
洒落なパン屋さん、カフェなど施設も充実しており気軽に訪れることができる
北アルプスの玄関口です。
https://chubu.env.go.jp/blog/2020/07/post-1030.html
<新穂高ロープウエイと笠ヶ岳>
ここまでは旅行として十分楽しめますが、本格的な北アルプス冬期登山に興味
のある方は西穂山荘まで登山される事をお勧めします。
もちろん冬山登山装備は必須で、そのうえで天候判断を確実に行ってください。
西穂山荘まではトレースや標示板がついていますがホワイトアウトや大量の雪
が降ったときには道迷いの危険性がありますので慎重な行動が肝心です。
<千石園地にできた登山道>
<標示板と竿標示>
西穂山荘は森林限界に位置しており、これまで歩いてきた樹林帯から一気に
視界が開け、目の前に北アルプスの山々を目の当たりにします。
<西穂山荘に到着>
山荘からの景色でも十分素晴らしいのですが、西穂高岳の稜線に位置
する丸山まで登ると沢山の高山を望むことができます。尾根の正面には独
標から西穂高岳山頂の荒々しい岩稜、飛騨側には笠ヶ岳から続く稜線と
波打つように連なる北アルプス最深部の山々、上高地方面には明神岳
から前穂高岳、そして下に見える西穂山荘の向こうには焼岳や乗鞍岳。
7月に巡視したAR日記と是非景色を見比べてみてください。
https://chubu.env.go.jp/blog/2020/08/post-1045.html
<西穂高岳に続く荒々しい岩稜>
<焼岳と乗鞍岳>
今回も西穂山荘に宿泊し、村上社長と粟澤支配人から貴重なお話を聴くこと
ができました。
マクス徹底から細目な消毒、十分な距離が取れる少人数宿泊、食卓のパー
ティションなどしっかりとした感染症対策、冬期ならではの小屋内の換気
ダクトは手作りで驚かされました。
また冬期ならではの遭難要因となるホワイトアウトや氷雪のスリップ、地形
による風や天候の特徴など現場で詳しくレクチャーして頂きました。
冬期の厳しい中部山岳国立公園で登山者に安心を与えてくれる山のプロフェッ
ショナルの一言一言に経験の重みと感謝を感じた今回の巡視でした。
<粟澤支配人より地形と風のレクチャーを受ける>
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中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします