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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

白馬五竜高山植物園

2021年10月25日
中部山岳国立公園 福澤春彦

こんにちは、中部山岳国立公園管理事務所の福澤です。

先日の鹿島槍ヶ岳から五竜岳縦走で遠見尾根を下山しましたが、その際に五竜テレキャビン(ゴンドラ)のアルプス平駅にある白馬五竜高山植物園に立ち寄ることができました。

高山植物園責任者の坪井さんにお会いすることができ、園内を案内して頂きました。

<白馬五竜スキー場のゲレンデ内に造園された植物園>

白馬五竜高山植物園は長野県で初の「(公社)日本植物園協会」加盟植物園で、スキー場のアルプス平パノラマコース上に設園されています。

植物園と坪井さんには環境省も大変お世話になっており、ライチョウ保護増殖事業においてもライチョウの餌となる高山植物の栽培、(公社)日本植物園協会の保全事業として白馬山域における絶滅危惧種の保全、栽培、研究調査にもご協力頂いています。

<手入れ風景>

この植物園は、標高1500mを越えるスキー場の斜面、また白馬山系蛇紋岩の地質から高山植物が好む環境に近い適地だそうです。高山の花のエリアでは、長野県で標高2500m前後に生育するコマクサが見られ、最盛期にはコマクサ通りと名付けられた散策路で淡いピンクの絨毯が間近で観賞することができます。

また吃驚したのは、高低差数メートルの小山の地形を利用して標高3000mまでの植生を再現しているエリアです。その小山の頂上には標高3000mの標柱が建っています。山名は「白馬五竜岳」(有りそうな山名ですが実際はありません)。標柱をよく見ると"3000m相当"と書いてありました。ハイマツ帯があり、その上は森林限界を超えた地帯でイワギキョウ、イワベンケイ、タカネツメクサなど表札が立っていました。この植物園に来れば3000mまで登山した気分になるのは間違い有りません。

<高山の環境を再現した小山>

<標高3000m、相当>

ハイマツ帯にはライチョウも居ました!(ライチョウはくば君)

もう一つの特徴は、絶滅危惧種の栽培です。

北アルプス白馬周辺の限られた場所でしか生育しなくなってしまった植物を環境省と(公社)日本植物園が進める植物保全事業による許可のもと種子を採取し、この植物園で栽培しています。代表的なものは、タカネキンポウゲ、クモマキンポウゲなど。

<絶滅危惧種の栽培>

<様々な希少植物が栽培実験されていました>

このように希少植物の栽培にも実績があり、例えば動物園から餌としての植物栽培を依頼されることもあるそうです。実際、環境省のライチョウ保護増殖事業における餌を資源を確保する面からムカゴトラノオの提供をお願いしています。

<栽培されたムカゴトラノオ>

坪井さんにトラノオの栽培地を見学させて頂きました。そこは植物園を降りた里山にあり、マルチシートが張られた畑に栽培実験が始められていました。

高山植物は高山の厳しい環境でのみ育つと思っていましたが、標高1500mでも地質や斜面や手入れ次第でその環境を再現でき栽培もできることを知りました。

海外の高山植物もエリア化されており、ヒマラヤやヨーロッパアルプスの植物も観賞することができます。

登山しなくとも高山植物が間近に見たい方にはお勧めの場所です。

また遠見尾根を下山される方は是非ともご鑑賞下さい。

植物園は、綺麗な植物を観光客に観てもらう業務と同時に、その地の貴重な植物を保全するための研究も行っていることを知り大変勉強になりました。

坪井さんありがとうございました。

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