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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

近自然工法の歩道整備 ~施工編~

2020年11月05日
中部山岳国立公園 関根陽太

中部山岳国立公園管理事務所の関根です。

近自然工法による歩道整備は「現場観察が重要」と前回の日記で取り上げましたが、今回は施工について紹介します。

観察を通して原因を考えましたが、土壌の浸食を抑えて植生が回復するためにはどのように手を加えればいいかを考えていきます。

この現場では、既存階段は土留めとして活用し、洗堀が起きた箇所を補修しつつ近自然工法で新たな階段を作ることにしました。

小枝を並べて新しい階段の構造イメージや必要な資材を皆で共有します。

資材は現地材を活用することにし、手分けして調達しました。

土砂は環境省園路で支障になっていたものを、木材は通景伐採で発生したものを活用しました。

今回の現場では地元の皆さまのご協力もあって資材を無事確保することができましたが、自然公園法や土地所有者との事前調整は、歩道整備を持続的に進める上でとても大切と感じました。


日本の国立公園は環境省だけではなく、地域の方々や関係団体の方々の取り組みがあってこそ成り立っていることが身に染みました。

資材をコツコツ荷運びし、近自然工法の考え方を教わりながら施工スタートです。

現場の状況によって杭を使うこともありますが、今回は杭を使わずに木材を固定します。杭を打つことによって洗堀が進むこともあるからです。むしろ資材の組み合わせによって、踏圧などの力が加わるほど固定される状態を作り出すことが重要とのことです。

そのために歩道の浸食幅より長い木材を使って、岩や根に引っ掛けたり法面(のりめん)に差し込んだりと、上部から流れてきた物が引っかかったり埋まったりしている自然の状況を真似して固定していきます。

階段の木材は平面図として見た際に、ハの字、逆ハの字になるように、

立面図として見た際には、木材の一端を下げて水が蛇行して流れるように工夫します。

蛇行した水が当たる部分には、石材を置いて法面(のりめん)が洗堀されないようにします。

(「登山道を直す 近自然工法の考え方と技法」から抜粋)

一見不思議に思えるかもしれませんが、身体を前に踏み切って登る単調な階段ではなく、身体を横移動させながら登る歩きやすい階段になりました。


木材の天端は、踏んだときに滑らないようにチェーンソーで削ります。


木材と木材の間は石材などを詰めていきます。

石材は天端の高さや水の流れ、木材からの力の受けるようになど考えながら石を据えたり詰めたりします。

石1つでもとても難しいものでした。

歩道上をさらに水が流れないように、階段の下部に水切りも設置しました。

水の処理や足の運び方に配慮した階段ができあがりました。
写真だけでは伝わらない、自然景観に馴染む雰囲気もあります。

今回の業務で地域の方々に工法や考え方を紹介でき、作業後にも「楽しかった」と感想をいただきました。

施工した箇所が想像したように機能するか、来年以降も観察していこうと思います。

また、土壌が安定し植生が回復してくるのもとても楽しみです。

乗鞍高原にお越しの際は、ぜひ現地を見ていただけると嬉しいです。

近自然工法の施工方法は現場ごとに異なります。

考え方は共通しますので、興味のある方は下記もご覧ください。

信越自然環境事務所HP 「登山道を直す 近自然工法の考え方と技法」

大雪山国立公園HP   「大雪山国立公園における登山道整備技術指針 2016 年 改定版」

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