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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

夏の妙高山周辺登山道と生きものたち

2011年08月19日
妙高
 8月も気がつけば下旬です。環境省妙高高原地区パークボランティア活動でバタバタしているうちに、秋の虫たちの声がきこえはじめる季節になっていました。そんな8月中旬過ぎ、自然保護官と地元の方とともに妙高山周辺の歩道状況の調査を行いました。

 朝、関温泉の駐車場で1台に乗り合わせ、燕温泉の駐車場に移動、そこから出発です。出発時は晴れで、絶好の調査日和でした。
 まず、妙仙橋を渡り直ったばかりの「河原の湯」に向かう道から、登山道の分岐点「麻平」を目指します。この「麻平」は山頂へ向かう道と「黄金清水」方面に向かう道の分岐点ですが、今回は「黄金清水」に向かう「燕新道」を通って「大倉池」、「長助池」に向かいました。ところどころキツイ登りもありますが、順調なペースで歩くことができました。樹林帯を抜けてほっと一息、顔をあげると目の前が急に開けました。「長助池」です。
 この妙高山外輪山の内側にある池塘「長助池」は、山々に囲まれた独特の景観を持つ高原湿地です。イワショウブやウメバチソウが風にゆれていて、私たちを優しく迎えてくれました。



 写真正面一番奥の池塘の周りでは、ミズバショウとハクサンコザクラを同時にみることができる時期があるそうです。これから写真の左手奥の外輪山を越えて行きます。
 写真左手に進んで行くと妙高山山頂ルートと黒沢池方面ルートの分岐に出ますが、山頂へは向かわず、先ほどの「長助池」を眼下に眺めながら黒沢池に向かう「大倉乗越」(外輪山の切れ目)を目指して登り道を進みました。
 「大倉乗越」では涼しい風がふきぬけるなか、青空の下の火打山頂を正面に眺めることができました。ここから「黒沢池ヒュッテ」までは下りです。登山道の両脇には太いウダイカンバをみることができます。妙仙橋を出発して5時間、「黒沢池ヒュッテ」に到着しました。

 ここで、少し早い昼食をとりましたが、短い休憩時間にもかかわらず、いろんな生きものが私たちの昼食をのぞきにやってきました。
 まず、シラフヒゲナガカミキリの♀がテーブルの近くに飛んできました。ゴマダラカミキリに似ていますが、♂は名前の通りヒゲが長くかなりカッコイイそうです。
その次にやってきたのは、


 

「キベリタテハ」でした。大型のタテハチョウの仲間で、とても美しいチョウです。
 「あたし(オレ?)、きれいでしょ?」という感じでテーブルに羽根を広げてとまったあと、若い男性の肩にとまってTシャツを一生懸命吸っていました。(なので、やっぱり「あたし」?)
 今年は、この妙高山周辺や火打山登山口周辺の笹ヶ峰でチョウを多くみかける気がします。多くの種類の生きものたちにであえるということは、生きものたちを支える環境がまだ残っているということを教えてくれます。

 昼食後は「三ッ峰」に向かいました。この「三ッ峰」は妙高山の外輪山の一つ「神奈山」山頂への道と燕新道の「大倉池」に向かう道の分岐点となっています。道ばたには登山者の目を釘付けにするオレンジ色の花がいくつも咲いていました。




 クルマユリです。そろそろ花の時期も終わりのようでした。

 「三ッ峰」の分岐にたどりつくころには、周囲が霧に包まれはじめました。左手の道、神奈山山頂方向に進みましたが、草が生い茂っているところが有りなかなか歩きにくい道でした。神奈山山頂への登りの道ばたにはオオヤマボクチ(ヤマゴボウ)の蕾が沢山みられました。この植物の葉の繊維は、蕎麦のつなぎとして昔から利用されていると地元の方に教えて頂きました。
 標高1909mの神奈山山頂にたどりついたのはうれしかったのですが、あたりは霧で真っ白、せっかくの高田平野の眺望も残念ながら全く見ることができませんでした。

 ここから車を駐車しておいた関温泉スキー場の駐車場までは、長い下りです。スキー場の上に出るまでの間には太いブナが多い「大ブナ林」をぬけていきますが、歩幅を広くしすぎたため下りのカーブにあったブナの根っこに乗ってしまい、ハデに転んでしまいました。ただ、この登山道も藪やキツイところがあるコースです。
 関温泉スキー場ゲレンデに入ると背丈ほどもある草をかき分けながら下るところもありましたが、それでも「黒沢池ヒュッテ」から3時間半ほどで関温泉スキー場の駐車場に到着しました。振り返ってみるとこの区間も比較的順調なペースでした。

 今回歩いた登山道はいままで訪れたことがないところが多く、私にとっては新鮮な体験でした。妙高高原地域には全域に似たような生きものたちが生活していますが、それでも標高や場所が少し違えば、出会う生きものたちも違うものだということを改めて実感することができました。他にも植物動物問わず多くの生きものたちと出会うことができましたが、全てご紹介できないのが残念です。

 妙高高原の事務所に戻る途中、30年以上見たことがない大きなミヤマクワガタの♂が車道の脇をヨタヨタと歩いて横切っていきました。妙高高原にはまだまだ豊かな自然が残されています。

 一人でも多くの皆さんに妙高高原の自然の豊かさを知って頂きたい、そして実際にこの豊かな自然を体感して頂くことで、環境保全にも目を向けて頂きたい、そんな願いを込めて今後も妙高高原の自然をご紹介していきたいと考えています。

 最後に今回ご紹介したルート所要時間はあくまで参考の時間です。実際に歩いてみたいと思われた方は、現地の情報を十分ご確認の上、余裕をもった行程と計画で楽しんで頂きたいと思います。