ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2020年7月28日

2件の記事があります。

2020年07月28日イタセンパラ調査~イタセンパラ保護池~

中部山岳国立公園 立山 佐藤 裕子

前回の一ノ枝ARの日記に引き続き、国立公園からは外れますが、

環境省の保護増殖事業の一環でひみラボ関係者によって行われたイタセンパラ調査に

同行させていただきました。

私が参加した日は、氷見市にある保護池に行き、事前に仕掛けておいた定置網で

どのくらいイタセンパラなどの淡水生物が生育しているかを確認しました。

「イタセンパラ保護池」は、屋外大小5つの素掘り池からなり、

自然河川の繁殖状況と同等の環境で過ごせるようになっています。

ヤリタナゴ、ミナミアカヒレタビラ(タナゴ類)、モツゴ、メダカ、ドジョウ等の魚類、

またタナゴ類の産卵母貝として、イシガイ、ドブガイなどなど...多種多様な生物が生息しています。

保護池罠

この定置網の先が細くなる形状により、魚類の習性で自然と入ってくるそうです。

保護池 網2

網の"かえし"部分を持って振り落とし、かかった生物を集めます。

■ミナミアカヒレタビラ(左:メス 右:オス)

富山県の指定希少野生動植物種、環境省レッドリストにも載っています。

許可なく捕獲等はできません。

タナゴの仲間で、北陸地方から山陰地方に分布しています。

産卵期は3月から7月頃で、メスは産卵管が出ていました。(左、黒い丸で囲った部分)

産卵管を伸長させ、イシガイやドブガイなどの2枚貝に産卵します。

オスは鮮やかな婚姻色が出ていました。(右)

婚姻色とは異性認知のため、繁殖期(多くはオス)に体表が変化します。

■イタセンパラ

国の天然記念物であり、環境省レッドリストにも載っています。

許可なく捕獲等はできません。

繁殖期は9月から11月。

ミナミアカヒレタビラと同じくタナゴの仲間で、産卵管を伸ばして2枚貝に産卵します。

(教えていただいた"にわか"ですが...)背びれに少しだけある黒い部分が特長です。

その他採取された生物とともにその場で数を計測したのち、また保護池に放流しました。

■オニバス

水面に浮いている丸い葉は、「オニバス」というスイレン科の水生植物です。

環境省レッドリストに載っており、万尾川沿いの"十二町潟オニバス発生地"は天然記念物にもなっています。葉に細かなトゲがついていて、ふと触れてしまい痛い思いをしました。

今後も調査を行い、増殖数を見守って行きます。

希少な生物が生息するイタセンパラ保護池及び河川は、ひみラボはじめ、氷見市教育委員会、富山大学などの教育機関や研究者、地域の方々など多くの人の手で守られています。

★ひみラボ→https://sites.google.com/site/himilab/

★ひみラボTwitter → https://twitter.com/Itasenpara1927

中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新たな生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

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2020年07月28日東大淀小学校レンジャー出前授業(1回目)

伊勢志摩国立公園 小川美代子

 伊勢志摩国立公園管理事務所では、伊勢志摩国立公園の自然について楽しく体験しながら学べる講座「レンジャー出前授業」を行っています。

 7月7日、伊勢市立東大淀小学校でレンジャー出前授業を行いました。

 

 伊勢市立東大淀小学校は、レンジャー出前授業として、4年生を対象に年間を通した「クスノキ学習」を平成30年から3年間継続して行っています。今年も年間4回の学習を予定していました。しかし、1回目の学習は学校が新型コロナウイルス感染予防対策として休校中だったため中止しており、7月7日は待ちに待った1回目の学習でした。

 ここで東大淀小学校の「クスノキ学習」について紹介しておきましょう。

 東大淀小学校の運動場には、大きなクスノキがあり、校舎の高さと変わらないほどの大木に育っています。私も、初めてそのクスノキを見たとき、その大きさと堂々とそびえ立つ姿に感動しました。

 東大淀小学校ではこのクスノキのことを「くすのきさん」と呼び、学校全体で大切にしています。そして、このクスノキにかかわる学習が「クスノキ学習」です。

 4年生では理科の学習でクスノキをとりあげ、1年間(季節)の変化を観察していきます。

 

 7月7日は今のクスノキの様子を観察することが目的でした。

 運動場で観察をしたかったのですが、雨降りだったので、感染症対策として児童同士、また私たちとも十分な間隔がとれるように体育館で行いました。

まずは、国立公園やレンジャーのことについて知ってもらい、東大淀小レンジャーとして活動することの意識付けを行いました。

 次に、体育館の渡り廊下からクスノキ全体の様子を観察し、その後は、体育館に戻って、葉の観察をしました。

 葉の色を観察したり、長さを測ったり、手触りやにおいを確かめたりしました。においをかいだとたん「くさーい!」と口々に言っている児童の様子に思わず笑ってしまいました。ツーンと薬くさいにおいを知っている児童も何人かいて、「葉を折り曲げるとよけいにおいするんやよ。」と私がやりたいことを先んじて言っている児童もいました。クスノキは児童にとって身近な存在です。普段の生活でクスノキの葉のにおいをかいだり、葉を折り曲げたりすることはよくあることなのでしょう。その中で、折り曲げると更ににおいが増すことは経験済みなのでしょう。

 しかし、新たにクスノキの薬くさいにおいに気づいた児童もいました。身近な存在のクスノキですが、クスノキへの関わり方は児童によって様々です。どの児童にとってもクスノキの姿を1年間継続して観察することは、知らなかった新たな一面を知るよい機会になると思いました。

 今回は、クスノキ全体や葉の様子を観察しましたが、季節の変化については観察しませんでした。しかし、4月からの3ヶ月の間にクスノキは確実に変化しています。下の3枚の写真を見ても葉の色が変化していることがわかります。そして、つぼみから花がさき、実が出来はじめているという大きな変化がありました。秋の学習では変化に着目し、実際のクスノキの観察とともに写真などを活用したいと思います。

 

<4月21日 東大淀小クスノキ>

<5月19日 東大淀小クスノキ>

<7月2日 東大淀小クスノキ>

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