ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26)

45件の記事があります。

2011年04月07日願い

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 妙高高原自然保護官事務所のアクティブ・レンジャーとして二度目の春をむかえました。
昨春「自分なりの目線と感性で妙高高原地区の魅力を伝えられるよう精進します。」と意気込んだものの、日々の業務に追われてその魅力を十分に伝えることができませんでした。今年は妙高の四季折々ありのままの姿を、できるかぎり発信していきたいと考えています。
 先日、大震災の余震の影響で延期となった「平成23年度アクティブ・レンジャー国立公園写真展」の写真設置作業を行いました。昨年に引き続き道の駅あらい駅長さんのご厚意で、駅内「くびき野情報館」にある立派な展示室をお借りして3月23日水曜日から3週間開催させて頂いています。
 この「アクティブ・レンジャー国立公園写真展」は、国立公園の魅力やアクティブ・レンジャー及び環境省の取り組みを広く知って頂くことを目的として、平成20年度にスタートしました。1会場1ヶ月をめどに開催される、長野県と新潟県の会場を巡る巡回展です。前年度にアクティブ・レンジャーが撮りためた写真の中から、レンジャーと相談の上セレクトした5枚の写真を、8人分計40枚展示させて頂いています。
 展示にあたっては、パーテーションは倒れる可能性があるため使用しない、スポット・ライトは節電のためなるべく使用しない、展示物はシンプルにするなどを心がけています。




 生き生きとした大自然の写真を見て頂くことで、皆さんに少しでも元気を出して頂けたらとの思いから開催させて頂きましたが、予想以上の反響の大きさに驚いています。各会場のお近くにいらっしゃったときはぜひ寄り道して頂き、「国立公園のいま」を身近に感じていただけたらと思います。

 開催場所等に関するご質問は、

○長野自然環境事務所
〒380-0846 長野県長野市旭町1108 長野第一合同庁舎
TEL:026-231-6570 FAX:026-235-1226
E-mail:NCO-NAGANO @ env.go.jp

まで、お問い合わせ下さい。

 昨日の朝、高速道路の上信越道と平行して走る国道18号から、事務所に向かう登り道、快晴の空のもと妙高山が木々の間から顔をのぞかせて「おはよう!」と声をかけてくれているように感じました。
車を降りてパチリ!




 手前の巨大ミルフィーユのような雪壁の断面、おわかりいただけますか?まだまだこんな状態。地元の宿のご主人も今年はなかなか暖かくならないとおっしゃっていましたが、4月に入りようやく気温が上がってきました。
 レンジャーに同行して事務所の隣のお宅に年度初めのご挨拶に伺うと、目の前の杉の木の枝が黄色い花粉の重みでうなだれています。
道ばたの雪の下からはフキノトウが顔を出しています。
妙高高原も一歩一歩花の季節に近づいています。

 日本中が困難に直面している今回の大震災、厳しい状況はしばらく続くと思いますが、美しい自然にふれて頂くことで、一人でも多くの方の心が癒され少しでも元気をとりもどして頂ければと願ってやみません。
 日曜日に被災者受け入れ会場片付けのボランティア活動をさせて頂きましたが、今後はアクティブ・レンジャーという仕事をとおして、復興にむけて何ができるかを自分に問い続け、できることから少しずつ取り組んでいきたいと考えています。

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2010年10月20日日本のいのち、つないでいこう!COP10

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

《 妙高高原いもり池のいま 》
黄色のシャツに緑のパンツ、紺のキャップという目立つ服装で
ゴミ袋とゴミバサミ、デジカメと鉛筆とファイルを持って、
本当にたくさんの利用者のみなさんの間を
縫うように吸い殻なんかを拾いながら、
池のまわりの写真を撮ったりメモしたり…
すれ違いざまには、笑顔で「こんにちは!」と声をかけてくる。

そんな人がいたら、私は思わず声をかけたくなります。




「なにしてるんだね?」
「あの山はなんという山?」
「紅葉はまだですか?」
「ミズバショウのころは、このいっぱい生えてるアシはなくなるの?」
「珍しい赤トンボがいるのよ、きれいね~。最近トンボいないのよ…」
「このへんもクマ出ますか?」

本当はこのファッションちょっと恥ずかしいんですが、
声をかけてくれる利用者のみなさんの質問には、
時間が許す限り、一つ一つできるだけ丁寧に答えるようにしています。

熱心に耳を傾けて下さる方、
さらに質問する方。
いろんな方がいらっしゃいますが、皆さん最後は
「ありがとう。」
「頑張ってね。」
「仕事のじゃまして、ごめんね。」と
笑顔で歩いて行かれます。

聞けば、石川、大阪、長野…
遠方からわざわざ足を運んで頂きました。

「少しでも喜んでもらえて、ほんとうによかった。」
心から思い、ホッとする瞬間です。




この日は暑くもなく寒くもなく、まさに行楽日和。
散歩したり、写生したり、写真をとったり、ゆっくり風景を眺めたり…
楽しみ方はひとそれぞれ。
皆さんの楽しそうな笑顔をみていると、
いもり池を含めた妙高高原の大自然が持つパワーを
いつも実感します。

今年は今のところ妙高山の紅葉がはっきりしてきません。
まだ少し暖かいのかもしれません。

ただ、先週よく見かけたマユタテアカネは数がへって、
捕まえてみると羽根がボロボロ。




少しずつ秋は深まってきているようです。

変わって、ものすごいスピードで羽ばたきながらホバリングし、
羽根の半分と縁がオレンジ色の美しい晩秋のトンボ
「キトンボ」を見ることができました。

こちらは最近数が減ってきているようです。

幼い頃、図鑑でしか見たことのない生きものを実際にみることができると、
驚きと感動で、こんな年になってもムズムズしてしまいます。

ただ、保護されているこの地域でも、生きものの種類や個体数は
すこしずつ減っているような気がしてなりません。

皆さんのお住まいの地域はいかがですか?

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2010年10月15日日本のいのち、つないでいこう!COP10まで1日前

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

《 秋の妙高いもり池 マユタテアカネ と オオアオイトトンボ 》

先日の朝自主的に続けてきた、いもり池周辺の清掃活動に出かけたときのこと。

例年より紅葉も遅れ気味の、暖かく明るい光に満ちた遊歩道を、
いつものようにゴミ袋とデジカメをぶら下げ、
ゴミバサミで吸い殻やペットボトルのキャップやらアイスクリームの紙なんかを
拾いながら歩いていくと…

脇道に入る木道の上に「赤とんぼ」を発見!
はいつくばってパチリ!

鼻のあたりが黒く、尾の先端が上に反っている「マユタテアカネ」です。

その直後、左目の隅をよこぎる昆虫の影…

そっと振り返ると、今度は枝にイトトンボ!
大きくて青緑色に輝くボディ、しかも羽根を広げて休憩中。
初めて見たその姿に、ちょっと興奮気味でまたパチリ!

「オオアオイトトンボ」です。

両方とも、林に囲まれた水草の多い池のまわりで、
9月から11月によく見られるトンボだそうです。

これまでトンボをじっくりみることがなかった私。
そこで、少し調べてみました。

トンボは、世界に5,500種類くらいいるそうです。

「マユタテアカネ」などの、前羽根と後羽根の形が違う「不均翅(ふきんし)亜目」、

「オオアオイトトンボ」などの、前羽根と後羽根の形がほぼ同じ「均翅(きんし)亜目」、

そして今から2億年くらい前の地層から、このなかまの化石が出ることで有名な
「ムカシトンボ亜目」(世界中で日本とヒマラヤにたった2種類)

の3種類に分類できるそうです。

日本では、2008年5月現在
この3つの亜目、214種類のトンボが確認されているとのこと。

今回であったトンボたちの特徴は…
●卵で越冬して春に幼虫になる。
●幼虫は水のなかでくらし、エラで水中の酸素をとりこんで呼吸。
●何回か脱皮をくりかえしてサナギにはならずに、
幼虫から羽化して成虫になる不完全変態(ふかんぜんへんたい)の昆虫。
●幼虫は水中のアカムシなんかを、
成虫は他の昆虫類やクモなんかを空中で捕食する肉食。
●羽化して成虫になると、水辺を離れて林や草原で生活。
●成熟するとまた水辺に移動し、自分で産卵場所を選ぶ。
●種類によって,好きな水辺が違う。

ということは…

「綺麗な水」、
「水辺だけでなく、林や草原もふくめた豊かな自然」、
「エサとなる他の昆虫などの豊富さと、それを支える環境」

が全てそろわなければ、トンボたちは生きていけないんです。

私が子どもだった30年前、
当時くらしていた埼玉のベッドタウンでも
秋になると空を埋め尽くすほどの
「赤とんぼ」を見ることができました。

最近は昆虫の数も減って、トンボを探すのも難しくなってきているように感じます。

たくさんのトンボ、いろんな種類のトンボが大空を飛び回れる環境は、
人間にとっても良い環境であることは間違いありません。



1日に100種以上のスピードで絶滅していっていると言われている「いのち」。
でも、一度絶えてしまった「いのち」は、二度と元にもどらない…

「生物多様性の危機」を引き起こしているのは、人間です。
が、「生物多様性の危機」をくいとめられる力を持つのも、人間です。

私も父親として、幼い我が子やその子どもたちが
「生物多様性からの恵み」を受け続けていけるように、

これからも身近な「生物多様性」を守っていけるような取り組みを、
できることから続けていこうと考えています。

ただ、ひとりができることにはどうしても限界があります。

だからこそ、
10月18日から名古屋で193の国と地域が集まって開催される
「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」で、
人類の知恵が結集され、
「生物多様性の危機」をくいとめる大きな力になることを
今から期待しているのです。

●全国のアクティブ・レンジャーが綴る「日本のいのち」
日本のいのち、つないでいこう!
http://c-chubu.env.go.jp/nature/mat/m_3_7.html

●環境省 生物多様性ホームページ
生物多様性-Biodiversity-
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/

●COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト
生物多様性条約COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト
http://www.cop10.go.jp/

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2010年10月05日【日本のいのち、つないでいこう!COP10まで10日前】

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

《 森の住人 サンショウウオ 》

先日、整理と清掃で笹ヶ峰にでかけたときのこと。

雨に濡れるのがイヤだったので、施設の横の戸から入りました。
戸を閉めるとき、なんのきなしに足下をみると
黒いゴムパッキンがちぎれてレールに乗っています。
「古くなってきたのかな?」
とりあえず戸がはずれないよう、静かに閉めました。

作業を終えて帰ろうと戸を開けると、
さっきのゴムパッキンの形が変わって長くなっています。

不思議に思いしゃがんでよく見ると、
「ワッタ、ワッタ、ワッタ…」と動きだしました!
捕まえてみると…小さなサンショウウオ!

サンショウウオは「両生類」。
カエルの仲間ですが、シッポがあるので「有尾目」。
サンショウウオ科サンショウウオ属に分類されています。

苦手な方は、この先ご覧にならないほうがいいかもしれません。

あわてて水場で濡らしました。
戸をいつも通りバタンと閉めていたら、今頃つぶれていたかも…

まじまじ眺めると…
「葉っぱじゃな~いよ~カエルだよ~♪」

と聞こえてきそう… 笑っているの?

ボディはまさに「サラマンダー」、マダラ模様です。


頭の先からシッポの先まで携帯と同じくらいの大きさ。

なんでこんなところにいたのか、ただただ驚くばかり…
あまりいじっていてはいけないと思い、急いで近くの水場にはなしました。

おそらくクロサンショウウオという日本固有の種。
近年生息数が激減し、絶滅が心配されています。

「サンショウウオを一匹助けても、なにも変わらないよ。」
そうかもしれません。

ですが、人間も何千万種類の生きものの中の1種類。
その全ての生きものとの目に見えないつながりがなければ、
人間も生きてはいけないはずです。

そういえば、若いころ夢中で何度も読み返したマンガ「火の鳥」の一節に、
「すべてのいのちが目には見えないけれど、網の目のようにつながって…」
というような表現があったのを思い出しました。

「生物多様性」は、「いのちの網の目」や「生かされている」といった、
身近なことばや感覚でおきかえてもいいのではないでしょうか。

世界193の国と地域の代表が集まって名古屋でひらかれる、
今回で10回目の「生物多様性条約締約国会議」(COP10)開催まであと10日。

一人でも多くの方が、
現在1日100種以上のスピードで絶滅しているといわれる
生きものたちとのかかわり方を、考えるきっかけになればと願っています。

施設の入口でであった小さな「森の住人」は、
多くのことを考えるきっかけを、私に与えてくれました。

●全国のアクティブ・レンジャーが綴る「日本のいのち」
日本のいのち、つないでいこう!
http://c-chubu.env.go.jp/nature/mat/m_3_7.html

●環境省 生物多様性ホームページ
生物多様性-Biodiversity-
http://www.biodic.go.jp/biodiversity/

●COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト
生物多様性条約COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト
http://www.cop10.go.jp/

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2010年05月17日みょうこうの新緑

上信越高原国立公園 妙高(~2015.3.26) アクティブレンジャー 西林 琢也

 はじめまして。4月から妙高高原地区のアクティブレンジャーとして着任しました西林と申します。上越地方に移り住んではや8年。遠くから眺めることが多かった妙高山をこの4月から間近に仰ぎみて、豊かな自然の懐に抱かれる喜びを日々かみしめています。
 私は山々のことも自然のことも特に詳しくはありません。ですが、日々学び続け「森の案内人」として、自分なりの目線と感性で皆さんに妙高高原地区の魅力を伝えられるよう精進します。よろしくお願い致します。

 今年の4月は寒さが続いたと思ったら、連休中はTシャツ1枚で平気なくらいに一気に暑く。連休明けの先週はまた3月末に逆戻りと、ジェットコースターなみの気温の変化に地元の皆さんも首をかしげる天候が続いています。
 今はミズバショウの花が終わり、いもり池の周辺は一歩一歩新緑の季節に向かっています。

 今日は朝から5月らしいさわやかな快晴。気温も日中は20度以上と先週とうってかわって過ごしやすい陽気です。そこで私も昼休みを利用して池周辺の状況を確認しに行ってきました。すぐそばで鳴くウグイスの声に耳を傾け、自然保護官事務所の脇に咲くスイセンとチューリップを横目で見ながら5分ほど歩くと、妙高高原ビジターセンターとは反対側の池の遊歩道入り口に到着です。


 遊歩道に入るとすぐ、多くの利用客の方々が木陰で休みながら景色を眺めたり、じっくり腰をすえて写生をしたり、いもり池を一周する遊歩道をゆっくり散策したりと新緑のいもり池を楽しんでいらっしゃいました。目にしみるような輝くグリーンは、この時期にしか味わえない妙高高原の代表的な色彩の一つだと思います。
「奈良から来たのよ。」はずんだ話し声が聞こえてきます。


 池を一周する間に5組ほど声をかけ、記念写真の撮影係を買ってでました。本当に皆さん楽しんで頂いている様子で、その笑顔に撮影する側の私も癒して頂きました。山側の観察場所ではご夫婦がゆったり景色を楽しんでいらっしゃいました。

 ミズバショウの輝く緑葉の前には、花びらに細かい毛が生えていて日にキラキラ輝いて見える白いすてきな花がたくさん咲いていました。調べてみると、氷河期の生き残り「ミツガシワ」でした。寒いところが大好きな植物だそうです。上から見ると葉っぱが3枚きれいに三方に分かれて「三ツ柏」の紋章に似ているところから、この名がついたとのこと。これから見頃を迎えますので、しばらくは訪れる方の目を楽しませてくれると思います。ミズバショウ以外にも四季折々を楽しめるのが妙高高原の大きな魅力です。

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