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アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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中部山岳国立公園 後立山

50件の記事があります。

2015年06月10日グリーンシーズンの始まり(2) 針ノ木岳慎太郎祭

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

6月7日に長野県大町市において「第58回針ノ木岳慎太郎祭(はりのきだけしんたろうさい)」が行われました。

大町市の総合山開きにあたる催しで、山開きを祝い、今シーズンの山の安全を祈願しました。天気は、午前中は晴れで、昼過ぎからは雲が多くなってきました。

<登山口である扇沢(標高約1,433m)から祭典会場に向かう参加者の列。沢に雪が残っているので無積雪期の登山道ではなく、沢に沿って雪の上を歩きます。>

<神事>

神事の後、針ノ木峠までの記念登山には約200名が参加しました。神事の行われた標高約1,800mから針ノ木峠(標高約2,540m)まで針ノ木大雪渓を上り、そして下ります。

<針ノ木大雪渓を上る記念登山の参加者。針ノ木大雪渓は日本三大雪渓の一つです。>

<大雪渓の途中から振り返った景色。手前の稜線の山は、右から爺ヶ岳(じいがたけ)、岩小屋沢岳(いわこやさわだけ)、鳴沢岳(なるさわだけ)。岩小屋沢岳の右奥に鹿島槍ヶ岳も見えます。>

<「ノド」と呼ばれる付近を振り返ります。傾斜がとてもきつい所です。>

ところで、祭典の名称の「針ノ木岳慎太郎祭」ですが、「針ノ木岳」は山の名前、「慎太郎」は人の名前です。

「針ノ木岳」は、針ノ木峠から無積雪期だと約1時間で頂上に着きます。標高は2,820mです。

また、「慎太郎」は、百瀬慎太郎(ももせしんたろう)の名から付けられています。「山を想えば人恋し 人を想えば山恋し」という言葉は慎太郎のものです。

大町市観光協会<http://www.kanko-omachi.gr.jp/mountain/momose.php>には、

・「岳都おおまち」を語るとき、忘れてはならない人物

・大町では大正6年(1917)、全国でもいち早く登山案内人組合が結成されました。その中心となったのは、日本の近代登山の先駆者の1人としてその名が語り継がれる百瀬慎太郎(1892-1949)です。

・市内で旅館対山舘(たいざんかん)を営みながら登山者の世話をし、登山ルートの整備や山小屋を建てるなど、その生涯をふるさとの"岳"に捧げました。

という功績が書かれています。

最後に余談ですが、慎太郎祭では食の楽しみが2つあります。一つは祭典会場でいただく、お供え物のお下がり「ラッキョウの塩漬け(平武(ひらたけ)漬けと呼ばれる)」、もう一つは下山した所でいただく「おしるこ」です。

なお、針ノ木大雪渓には、写真にもあるとおり傾斜が急な部分があります。アイゼン、ピッケルなどをお持ちいただくことをお勧めします。また、グリーンシーズンの始まりとは言え、標高が高いため天候によっては冬並みの防寒対策が必要になることもあります。十分な準備をしてお出かけください。

そして、ごみ袋と携帯トイレを持参して、持ち帰りをお願いします。

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2015年06月03日グリーンシーズンの始まり 白馬連峰開山祭

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

5月30日に長野県白馬村において、白馬連峰のグリーンシーズンの始まりを告げる「第49回 貞逸祭(ていいつさい)・白馬連峰開山祭」が行われました。

出席し、関係する皆様とともに山開きを祝い、今シーズンの山の安全を祈願しました。天気は晴れで、開山祭イベントの参加者は約320名でした。


安全祈願祭の後、猿倉(標高約1,230m)から白馬大雪渓下部の白馬尻(標高約1,550m)までトレッキングを行いました。

<猿倉からの林道はほぼ現れています。今年度は歩道脇の残雪が多く、雪の重みで傾いた幹で道幅が狭くなっている箇所がありました。>


逆に、昨年度と比べて残雪が少ないところもありました。左が今年度、右が昨年度(平成26年5月31日)の写真です。昨年度は残雪の上を歩いていきましたが、今年度は雪が解けているので通常の登山道を歩きました。


また、林道の終点から先、白馬尻までは雪が残っている箇所が多いので、参加者の中にはアイゼンを付けた方もいました。スリップとともに、雪の踏み抜きに対する注意も必要です。

<写真右方向に行きたいが、流れが見えているのでおそらく雪が薄い。そのまま進んだ場合は雪を踏み抜くおそれがある。これを避けるため、いったん上流方向に歩き、十分な積雪のある箇所で沢を越える。>



<トレッキングの折り返し点の白馬尻。白馬岳山頂は雲の中で見えない。>



さて、林道からは「雪形」が見えます。「雪形」とは、山が雪解けを始めた季節に、山肌に残った残雪によってできる模様を何かに見立てたものです。

まずは「代掻き馬」です。雪が解けた岩肌が馬の形に見えます。写真の中央に、頭が左側で躍動感のある馬が見えますか? 代掻きをしている馬の形ではなく、この雪形を、代掻きを始める目安にしたので「代掻き馬」と呼ばれています。(代掻きとは、水田に水を入れ、土と水をかき混ぜてならして、田植えができる状態にする作業です。)


次は「種まき爺さん」と「種まき婆さん」です。これも雪が解けた岩肌が人の形に見えます。

左の写真では、右上の「婆さん」は腰をかがめた様子が分かると思います。しかし、「爺さん」は周りの雪も解けて分からなくなっています。右は5月8日に八方尾根から撮影した写真で、「爺さん」がよく分かります。



花はエンレイソウ、シラネアオイ、ニリンソウ、オオカメノキ、ムラサキヤシオツツジなどが咲いていました。

<左:エンレイソウ、右:シラネアオイ>



グリーンシーズンの始まりとはいえ、標高の高いところではそれなりの低い気温になります。情報収集と自身の安全を高めるための体と装備の準備をしていただき、楽しい登山になるよう努めていただきたいと思います。

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2015年01月22日いつもと違う山歩きの楽しみ方(景色を見るのではなく観察する)

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー則武 敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

山での楽しみ方はいろいろあります。景色を眺めることもその一つだと思いますが、今回は景色を「眺める、全体的に見る」のではなく、「観察」してみます。

観察する場所があるのは白馬岳から雪倉岳に向かう途中です。この辺りは、中部山岳国立公園の特別保護地区で、国指定特別天然記念物「白馬連山高山植物帯」に指定されています。

今回観察する場所の地図

この場所の標高は約2,500mで、いわゆる高山帯と呼ばれるところにあります。主に見られる植物はハイマツですが、植物のほとんどない場所もあります。

さて、観察する景色は下の写真で、撮影地点から手前の小高い所までの区間の稜線(写真の赤い線)の左右です。稜線の左右の植生(植生のまとまり)に着目します。何を読み取れるでしょうか?

観察する景色の写真

<平成26年9月4日撮影。左奥が鉢ヶ岳、右奥が雪倉岳。>

まず、大きなところでは、稜線の左右で「植生が異なっている」ことに気付きましたか?

(正直に書くと、私は現地ではただこの写真を撮影しただけで、このことに全く気付いていませんでした。)

細かく見ると、次の3点くらいが読み取れます。

・稜線の左側は、ハイマツ群落(緑色のまとまり)が砂礫地(白いところ)にまだら状に分布している。

・稜線の平坦地から右側の斜面上部にかけては、密なハイマツ群落が分布している(緑色が帯状にある)。

・しかし、ハイマツ群落は斜面上部にあるだけで突然終わり、それより斜面下部は急に砂礫地になる(斜面上部の緑色と白色の境界がはっきりしている)。

稜線の左右で植生が違う

では、どうしてこのように植生が異なるのか、気になります。

岩田修二(1980)「白馬岳の砂礫斜面」(地学雑誌Vol.89No.6)に、この場所を含む写真が載っていました。そして、「6月に残雪におおわれている場所は,残雪砂礫斜面や草地になっていることがわかる。」と説明がありました。

岩田が1980年に発表した論文の図

・この写真は岩田が1980年6月に撮影したもの。岩田(1980)の電子ジャーナルhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/89/6/89_6_Plate1/_pdfに2015年1月21日にアクセスし引用。

・この写真の下半分、手前の小高いピークまでが私の撮影した写真で説明している箇所。

・この写真を見ると、稜線の左側の斜面には雪が全くない。

・稜線のすぐ右に黒く帯状に見えるのはハイマツ群落で、そのすぐ脇から斜面下部には雪が残っている。

・私の撮影した写真で稜線右側の砂礫地となっている場所と、この写真の残雪の場所を比べると、岩田の書いているように「6月に残雪におおわれている場所は,残雪砂礫斜面や草地になっていることがわかる。」



このように撮影した季節の異なる写真を比べることで、植生が異なる理由が、残雪によるものであることが分かりました。(まだ稜線の左側の植生の成立については解けていないので、今後の勉強が必要ですが)

景色を観察し、その景色ができた背景を考えることは、とても面白く感じました。

皆さんもこういう楽しみ方、いかがですか。

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2014年09月24日蓮華温泉から朝日岳(歩道の状況と花の写真)

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー 則武敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。
今回は、蓮華温泉(新潟県糸魚川市)と朝日岳(富山県朝日町・新潟県糸魚川市)を結ぶ歩道(登山道)の状況をお伝えします。
この歩道では平成20年度から新潟県への施行委任で、木道、階段等の施設整備を行っています。それら施設の状況を確認しました。歩いたのは9月10日、11日です。

八兵衛平(五輪の森から吹き上げのコルまでの区間)で、木道2箇所が斜面下側に大きく傾いていました。これらは補修する予定です。木道の上を歩くと滑る恐れがあるので、無理のない方法で通過してください。また、誘導標識1箇所が傾き、表示面が見えづらくなっていました。

<斜面下側に大きく傾いた木道。2箇所のうち1箇所。>


同じ八兵衛平にあるテラス付近には巨石があります。これは雪解けの頃に斜面上部から転がってきたものです。現在は斜面上部にすぐに落ちてきそうな不安定な岩は確認されませんでした。しかし、念のため、この付近の歩道を通行する時やテラスで休憩する時は、「斜面上部からの落石に注意」してください。




この他、吹き上げのコルから栂海新道方面にある「照葉の池」では木道が破損しています。こちらも無理のない方法で通過してください。

<最も大きく破損している箇所>





さて、山の上では秋が深まりかけていますが、まだいろいろな花が咲いていました。

<白のお花畑。イワショウブ、ウメバチソウ、シラネニンジンなど。>


<ハクサンフウロ>


<季節外れの開花。ハクサンイチゲ(左)とイワイチョウ。>

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2014年09月16日神の田圃(続き)

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー 則武敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

前回(8月26日)に続き「神の田圃(かみのたんぼ)」の紹介です。前回は、栂池自然園から半径5kmの中にある3箇所のうち2箇所(下図の①、②)を紹介しました。
今回は残りの1箇所の「神の田圃(かみのたんぼ)」(下図の③)を紹介します。
また、その神の田圃を通る、鉱山道(こうざんどう)と呼ばれる歩道(登山道)の状況をお伝えします。

<神の田圃の位置図。今回紹介するのは図の左にある③の神の田圃とそこを通る鉱山道。青色の線は登山道。>


<雪倉岳の東斜面にある神の田圃。奥に見えるのは鉢ヶ岳の稜線。>


さて、鉱山道の状況をお伝えします。今回は蓮華温泉への下りに利用しました(9月4日)。

<鉱山道の入口。写真奥に進むと鉱山道。>


<鉱山道に入ってすぐはザレ場です。岩へのマークを見つけながら歩いてください。>


<飛び石伝いの渡渉が2箇所あります。1箇所目。>


<2箇所目の飛び石伝いの渡渉。手前に残雪が見えますが、残雪が沢全体に薄く残っている時期は慎重な通過が必要になる箇所です。蓮華温泉側から撮影。>


なお、ササ等の刈り払いが行われていたので道ははっきりしており、道を誤りそうな箇所では密にマーキングがされていました。
また、瀬戸川の仮設橋も通行に支障はありませんでした。
瀬戸川を渡り蓮華温泉に近づくと木道が出てきます。木道は滑りやすいので注意して歩いてください。

さて、今回紹介した鉱山道は糸魚川市にあります。糸魚川市のアメダス観測所では9月13日の最低気温が17.0℃でした。この観測所の標高は8mです。気温逓減率を0.5℃/100mとすると標高3,000mでは2.0℃、気温逓減率を0.6℃/100mとすると標高3,000mではマイナス1.0℃になります。この時期からは、北アルプスの稜線を歩くには、それなりの装備が必要になることが分かると思います。



<ミヤマカラマツ。線香花火のように見えました。>

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2014年08月26日神の田圃

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー 則武敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

今回は、長野県小谷(おたり)村の栂池自然園の近くにある「神の田圃(かみのたんぼ)」と呼ばれる小湿原(下の図の①)です。
行き方は、栂池自然園から山麓へ向かう際に、ロープウェイに乗らず、そのまま舗装道路を下ります。3つ目のヘアピンカーブに小さな標識があるので、舗装道路を外れて林内に入り、小屋の脇を通り、木道を歩いていくと、急に視界が広がります。


栂池自然園に比べると本当に小さな湿原です。栂池自然園に多くの利用者がいたのとは対照的に、ここには誰もいませんでした。
木道が湿原の中央を横切るように設置されています。
確認できた花は、イワショウブ、モウセンゴケ、オニシオガマ、コバノトンボソウなど。また、ミズバショウ、チングルマ、ニッコウキスゲなどの果実がみられました。

<湿原の中央にあるベンチからの眺め。ガスがかかっていなければ、白馬乗鞍岳や白馬岳を望めます。中央に見えるのは早大小屋。この神の田圃は第2種特別地域に指定されています。>


さて、「神の田圃」の名称の付く湿原は、栂池自然園の近くだけでなく、栂池自然園から半径5kmの中に他に2箇所あります。

下の写真は、同じ小谷村ですが、風吹大池の近くにある「神の田圃」(下の図の②)です。

<面積はこちらのほうが広いように感じます。木道が設置されています。茶色で立っているのは、この年に開花の当たり年であったコバイケイソウ。平成25年9月19日撮影。この神の田圃は第1種特別地域に指定されています。>


「神の田圃」のもう1箇所(下の図の③)は、蓮華温泉から白馬岳方面へ向かう鉱山道の途中、雪倉岳の山腹(新潟県糸魚川市)にあります。こちらは行ったことがないので写真がありません。この神の田圃は第2種特別地域に指定されています。


標高約1,900mにある栂池自然園は、お盆を過ぎた頃から秋の景色へと変わりつつあります。自然と涼しさを楽しみにお出かけください。



<神の田圃の位置図。今回訪れたのは図の右下、栂池自然園近くにある①の神の田圃。>
青色の線は登山道。赤の四角で囲んだものが湿原。

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2014年08月05日写真展開催中です

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー 則武敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

長野県大町市で国立公園の写真展を開催しています。
大町市は立山黒部アルペンルートの長野県側の玄関口です。お近くにお出かけの際は、ぜひお立ち寄りください。



アクティブ・レンジャーが撮影した約50点の写真を展示しています。
中部山岳国立公園と上信越高原国立公園の風景や動植物などの写真をご覧いただき、国立公園の美しさや素晴らしさを感じてください。


■場所
「ギャラリー・いーずら」(大町市大町3300-1 いーずら大町特産館2階)
・信濃大町駅から北へ400m(徒歩6分)
・駐車場は建物の前にあります。そこが満車でも近くに公共駐車場があります。

■期間
・平成26年8月5日(火)~8月24日(日) 期間中休みはありません
・開館時間は10時から18時

■入場無料

■写真展の名称
大町市教育委員会企画展(環境省共催)
中部山岳国立公園指定80周年記念 国立公園写真展


<信濃大町駅側から撮影。信号のある交差点の角に会場の建物があります。>

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2014年07月09日八方尾根の花_7月

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー 則武敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

白馬村の八方尾根(はっぽうおね)には、八方池山荘から八方池まで「八方尾根自然研究路」というトレッキングコースがあります。
7月7日は様々な花が咲いていました。

<左:イワシモツケ、右:ヤマブキショウマ>


<上左:キバナノコマノツメ、上右:ハッポウウスユキソウ>
<下左:イワカガミ、下右:チングルマ>
ハッポウウスユキソウは、八方尾根の「ハッポウ」を冠する植物一つです。雪解けの遅い場所のチングルマはつぼみでした。


<左:ヨツバシオガマ、右:ユキワリソウ>
ユキワリソウは雪解け後に最も早く開花する植物の一つです。


7月5日(土)から八方尾根自然研究路のうち、木道コースと呼ばれているコースが全区間開通しています。今年は雪が解けるのが早いので開通も早くなりました。ただし、最上部では雪の上を歩く区間が残っています。




なお、八方尾根自然研究路の起点となる八方池山荘(標高約1,830m)までは、麓の八方からゴンドラとリフトを乗り継いで行くことができます。また、八方尾根自然研究路の終点の八方池の標高は約2,060mです。このように、このコースは標高が高いところにあり、山麓とは気温が違います。また、天候の急変の可能性があります。準備を入念になさってお出かけください。


今回は写真を見て分かるとおり雨でした。
八方尾根自然研究路は、晴れていると、白馬三山(はくばさんざん)や五竜岳(ごりゅうだけ)といった山々を間近に眺められます。また、八方池の水面に白馬連峰が映る景色に出会えることもあります。次回、そんな様子を記事にできればと願っています。


晴れていればこんな景色です。

<白馬三山は、右から白馬岳(しろうまだけ)、杓子岳(しゃくしだけ)、白馬鑓ヶ岳(はくばやりがたけ)の3つの山の総称。左の尾根は天狗尾根。平成23年9月27日撮影。>

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2014年06月06日夏山シーズンの始まり

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー 則武敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

5月31日と6月1日は、夏山シーズンの始まりを告げる2つの催しに参加し、関係する皆様とともに今シーズンの山の安全を祈願しました。
5月31日(土)白馬村で第48回貞逸祭(ていいつさい)・白馬連峰開山祭
6月1日(日)大町市で第57回針ノ木岳慎太郎祭(はりのきだけしんたろうさい)
2日間とも晴れで、一般の方もたくさん参加されました。


第48回貞逸祭・白馬連峰開山祭では、安全祈願祭の後、猿倉(さるくら)から白馬尻(はくばじり)までのトレッキングが行われました。白馬尻から少し上った所が、夏季に白馬大雪渓に取り付く場所になります。
トレッキングでは、例年はルートの途中から、白馬大雪渓へと続く雪の残る沢を歩いて白馬尻に向かうのですが、今年は平年より1~2m雪が少ないとのことで、ほとんどの班が雪の残る夏道(積雪期ではない時期の登山道)をたどって白馬尻に向かいました。


<私たちの班は雪の残る沢を歩いて白馬尻に向かいました。奥の山が白馬岳(しろうまだけ)。>


<左は昨年度の貞逸祭(平成25年5月25日)で撮影した写真です。中央の雪が周りより白い所は除雪作業中で、さらに掘っていくと、そこには山小屋(冬期は解体)があります。
ところが、右が今年度の写真で、既に山小屋の基礎が見えています。昨年度より6日遅いとはいえ、雪が少ないことを感じました。>


第57回針ノ木岳慎太郎祭では、神事の後、針ノ木峠までの記念登山が行われました。
神事の行われた標高約1,800mから針ノ木峠(標高約2,540m)まで針ノ木大雪渓を上っていきます。私が上りに要した時間は約2時間でしたが、これは個人の技量、体力により変わります。たいていの人がアイゼンを付け、ストックを持っていました。

途中には急傾斜の場所もあり、見上げると下の写真のように見えます。

<針ノ木峠直下の急傾斜。最も低くなったところが峠。雪庇(せっぴ)の残りが見えるので稜線が近いことが分かります。>


<針ノ木峠から北側を望みます。中央一番奥が白馬岳など。右奥が鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)。手前の稜線は鳴沢岳(なるさわだけ)から岩小屋沢岳(いわこやさわだけ)付近。利用者のいる雪のある谷が針ノ木大雪渓で、下っていくと扇沢に着きます。>

この2日間で、日本三大雪渓と呼ばれているうちの2つを歩いたことになりました。ちなみに、日本三大雪渓残りの1つは剱沢雪渓(富山県立山町)です。


さて、夏山シーズンの始まりとはいえ、標高の高いところでは、まだ雪が降る可能性があるため、冬山に近い登山の準備が必要です。また、開いていない山小屋もあります。自身の安全を高めるための準備や情報収集をしていただき、楽しい登山になるよう努めていただきたいと思います。


「お知らせ」
①「中部山岳国立公園80周年」
中部山岳国立公園は1934(昭和9)年12月4日に指定されました。今年、80周年の節目の年です。

②「信州 山の日」
長野県では、今年度から「7月第4日曜日」が「信州 山の日」に制定されました。今年は7月27日です。

③国民の祝日「山の日」
2016(平成28)年から8月11日が国民の祝日の一つである「山の日」となります。山の日の趣旨は「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」です。
(経緯)
・5月23日に「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律案」が参議院本会議で賛成多数で可決されました。
・「国民の祝日に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第43号)」が5月30日に公布され、「国民の祝日」として新たに「山の日」が設けられることになりました。この改正は平成28年1月1日から施行されます。



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2014年05月21日白馬村のギフチョウ

中部山岳国立公園 後立山 アクティブレンジャー 則武敏史

こんにちは、中部山岳国立公園(≒ 北アルプス)後立山地区からです。

5月17日に「ギフチョウ、ヒメギフチョウなどのパトロール」に参加しました。
参加者は、白馬村教育委員会(主催者)、白馬村の文化財保護監視員と関係する行政機関など合わせて9名でした。
地域の方が主体的に行うこのような活動によっても、国立公園の自然環境が保たれています。


<ギフチョウ。産卵後のしばらくの間、地面でじっとしていました。>


<ミヤマアオイ。ギフチョウは、この葉の裏に産卵し、ふ化した幼虫は葉を食べます。中央左寄りなどの地際には暗い紫色をした花が見えます。500円硬貨は大きさの目安とするために置きました。>


<ギフチョウの卵塊。卵の直径は1mm程度。昨年度のパトロールで撮影したもの。>

白馬村では、ギフチョウとヒメギフチョウは文化財保護条例により天然記念物に指定され、捕獲が禁止されています。また、採集した場合等に10万円以下の罰金等の罰則があります。無許可でギフチョウまたはヒメギフチョウを採集している方を見かけましたら、白馬村教育委員会にご連絡をお願いします。


「お知らせ」
~ 中部山岳国立公園80周年 ~
中部山岳国立公園は1934(昭和9)年12月4日に指定されました。今年、80周年の節目の年です。

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