ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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中部山岳国立公園 立山

171件の記事があります。

2021年06月04日ライチョウについての講演・観察会

中部山岳国立公園 立山 平松新一

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の平松です。

 立山では雪解けが進むと同時に、ライチョウは真っ白だった冬羽が夏羽に変わります。そんな時期、富山県立山自然保護センターでライチョウの講演・観察会があるとお聞きしたので参加してきました。

講演されたのは富山雷鳥研究会の松田勉さんです。松田さんは富山県が5年に一度行っているライチョウ調査の中心メンバーとして活動され、立山のライチョウについて長年研究されてきた方です。

 

<立山自然保護センターで講演される松田勉さん>

講演では松田さんらをはじめとする富山雷鳥研究会が調査研究を行ってきた成果を中心に、立山のライチョウの生態についてとても興味深いお話を伺うことができました。例えば、ライチョウはときどき長距離移動することがありますが、それはほとんどがメス個体だそうです。確かに石川県の白山で数年前に目撃されていた個体もメスでした。オスは繁殖時期の間縄張りをつくり、その縄張りから離れることができないのに対して、メスはより良い場所を見つけるために遠くまで移動することと関係しているようです。

縄張りをつくることができなかったあぶれオスに関する話も聞きました。あぶれオスは、縄張りをもったオスの領域に入るとそのオスから追い払われてしまいます。行く場所行く場所で追いやられ、肩身の狭い思いをするあぶれオスですが、時には縄張りを持ったオスの目を盗み、縄張り内にいるメスに交尾を迫ることもあるということでした。ライチョウの世界もなかなかのものですね。

 

<観察会で話をされる松田勉さん>

観察会ではみくりが池付近まで歩き、ライチョウやその痕跡を見つけました。指まで羽毛が生えていることや、餌となる植物のガンコウラン、ライチョウのフンまで観察でき、ひとつひとつ丁寧に解説いただきました。

 

<夏羽に変わってきたオス>

 

<雪上に残っていたライチョウのフン>

 このような講演や観察会に参加することで、ただ歩いているだけでは気づかなかったことにも目が向くようになります。立山だけでなくそれぞれの地域で様々なイベントが行われています。皆さんもぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。

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2021年05月13日ナチュラリストによる自然観察ツアー

中部山岳国立公園 立山 平松新一

 こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の平松です。4月から新たにアクティブ・レンジャーとなりました。これからよろしくお願いします。

 さて、連休中は天気が荒れていたことや、新型コロナの影響もあって、立山に来られた方は例年よりも少ないようでした。ただ、5月4日は好天に恵まれ、室堂には多くの方が訪れていました。

 

<好天に恵まれた5月4日の白山室堂>

 そんな中、富山県立山自然保護センターでは、弥陀ヶ原と室堂平でナチュラリストによる自然観察ツアーが行われていました。立山の自然や歴史について解説いただけるとてもいい機会でしたので、私も室堂平のツアーに参加しました。

 今回解説いただいたのは佐伯克美さん。元中学校の校長先生で、現在は県のナチュラリスト協会に所属し、立山などで自然解説を行っているほか、富山県の山岳関係の本も執筆されている著名な方でした。

<山岳情報ボードの前で解説される佐伯克美さん>

 観察ツアーは約2時間、立山自然保護センターを出発し、室堂山荘からミドリガ池、ミクリガ池を経由して戻ってくるコースです。私自身も白山麓などで自然解説をした経験はありますが、雪上の高山でガイドを行ったことがなく、とても楽しみでした。

 予想通り佐伯さんの解説は素晴らしく、自分が山に登った体験を踏まえて立山地域の説明をしたり、室堂の歴史や周囲に見える山々の説明をしたりととても興味深いものでした。また坂道では歩き方にも気を配るなど、参加者が安心して歩けるよう配慮されていました。おかげで、2時間近く歩いたにもかかわらず、とても楽しく、かつ勉強になる充実した時間を過ごすことができました。

<室堂石室での解説>

<立山連峰についての解説>

 立山では佐伯さんのような方々をはじめ、多くの人たちが立山の自然について皆さんに知ってもらうための活動や、貴重な自然を守るための活動をしています。今後もこのような人たちや立山で行われている活動、また立山の自然についてこの場を通して情報発信していきたいと思います。

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2021年04月30日ゴールデンウィーク初日。室堂平周辺の様子。

中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝です。

ゴールデンウィーク(GW)初日の4月29日に室堂平へ行ってきました。

昨年は、新型コロナウィルスのため緊急事態宣言でアルペンルート開通も延期となってしまいました。

今年は、4月15日より開通をしています。

29日のGW初日ですが、あいにくの雨模様です。

<室堂から雷鳥荘へ向かう歩道>

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令されている地域もあり、室堂ターミナル周辺の人もまばらでした。

4/29午前中の室堂ターミナル>

昨年に引き続き、例年のような賑やかさを取り戻すのにはもう少し時間がかかりそうです。

それでも、室堂ではまだまだ雪があり、スキー、スノーボード、登山、を楽しめます。

中には徐々に積雪から植生が見えだしてきた場所もあります。植生保護のため、植生内には踏み入れないようにお願いします。

<ハイマツがかなり見えだしている。建物はみくりが池温泉>

また、火山ガス事故防止のため、地獄谷エリアの立入りを禁止しています。ロープが張っている場所や看板、ポールでバッテン(×)している先へは立ち入らないでください。

 

 

<看板やポールも融雪、風など環境により変化していくため、メンテナンスが必要>

皆さまのご協力をお願いします。

<てくてく歩いていたライチョウ1羽>

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2021年04月26日アルペンルート全線開業50周年。積雪期の利用ルール。

中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝です。

4月15日より立山黒部アルペンルートが開通しました。

今年は全線開業50周年という記念すべき年で、様々な催し物が開催されています。

室堂平はアルペンルート上で最高地点の標高2450mです。立山の冬は厳しい豪雪地帯ですが、その中でも特に集中して雪が積もる場所が室堂平にあります。それが「雪の大谷」です。

今年は「雪の大谷メモリアルウォーク」として歩くことができます。

<雪の大谷とバス>

開通当日(4/15)で最高14mの高さがあります。例年に比べて積雪は少ないですが、今年は開業当初の雪の大谷を再現している区間があります。1車線の区間を通過する際は大迫力です!(※歩いて通行はできません。)

<この先が1車線区間。車内から臨場感を体験できる。>

また、雪の大谷を上から見ることができる場所まで歩いて行くことができます。(一度室堂ターミナルへ戻り、屋上へ出て歩きます。)

<当然ですが、雪の上を歩いて行きます。>

<上から見た雪の大谷>

<雪のカレンダー>

<除雪車「熊太郎」展示>

お立ち寄りの際はぜひご覧ください。

また、この時期に室堂平周辺では利用ルールがありますのでご覧になり、ルールをお守りください。

ルールマップ印刷はこちら

○立入り禁止区域があります。(詳しくはマップをご確認ください)

・地獄谷立入禁止区域

・除雪作業区域

・ライチョウ保護区域

○ハイマツなどの植生が出ている場所は踏み込まないでください。

○登山、スキー、スノーボードをされる方は以下の点もお守りください。

・入山届を室堂ターミナルで提出をお願いします。

・雪崩ビーコン、プローブ、ショベルを携帯ください。

・携帯トイレを携行してください。

・融雪防止剤は使用しないでください。

・山岳保険に加入しましょう。

室堂平駅をはじめ、アルペンルート各駅周辺にポスターやチラシを掲載しております。(※新型コロナのため、パンフレットを設置していない場合があります。)

この時期の室堂平は厳冬期に近い気象条件です。登山、スキー、スノーボードをするには冬山に対する知識・技術が必要になりますので、十分な計画、情報収集をお願いします。

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2021年03月16日あの世とこの世。地獄の山『立山』

中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔

「立山のいまとむかし~立山信仰と歩くアルペンルート~」と題して、立山の魅力をシリーズとして紹介しています。今回は第4回目です。

<第1回目の記事はこちら> 立山が出てくる最古の文学書「万葉集」

<第2回目の記事はこちら> 立山を開山したのは誰?熊と白鷹の伝説

<第3回目の記事はこちら> 旅する掛軸「立山まんだら」って何?

前回、立山曼荼羅(まんだら)を広めることで、立山参りに来てくださいね~と立山の宿坊の主である「衆徒(しゅと)」の人たちが立山信仰を広めていったというお話をしました。

信仰をしていた人たちは全国にいたようですが特に尾張(愛知)周辺の人たちに多くいたようです。そこで、

ここでいきなりクーーイズです^^

「では実際にその人たちは遠路はるばる立山に何を求めに来たのでしょうか?」

  1. ① 立山に素晴らしい景色を求めて

  2. ② 亡くなった人に会いに来た

  3. ③ 高い山に登りたいから

  4. ④ 熊やシカなどの神聖な野生動物に会いに来た

4つの内のどれに当たるでしょうか。答えは、後ほど!

立山曼荼羅を見てみると、「地獄」が描かれており、様々な地獄の様子を映し出しています。曼荼羅の左上部分に集中的に地獄絵図が見受けられます。

<富山県[立山博物館]蔵、『吉祥坊本』国指定重要有形民俗文化財>

※立山博物館より許可を得て掲載しています。

地獄はあの世、つまり「死後の世界」です。地獄にも色々な種類があり、全部で136の地獄があるそうです!!

そして、あの世とこの世をつなぐのが「三途の川」であり、立山信仰では芦峅寺にある「布橋」を境にあの世とこの世を分けていました。現在ある布橋も、橋を渡った先にはお墓があり、その先に民家という家はありません。

<降雪の布橋。冬の時期はアーチ部分がブルーシートで覆われていました。お墓の先は曼荼羅遊園になっている。>

亡くなった人は、十王から厳しい裁きをうけて立山のどこかの地獄へと堕ちると言われたそうです。(実際には仏教では、地獄の道以外にも他の5つの道があるとされています。ややこしいのでそこは割愛します。)

昔の人は、

「立山へ行けば、亡くなって地獄におちた人に会える。立山参拝(信仰)に行けば亡くなった人が成仏し、自分の罪も浄化される。」と信じて、遠路から立山参りをしていたようです。

なので、先ほどのクイズの答えは、

「②亡くなった人に会いに来た」が正解でしたー!皆さん当たりましたでしょうか?!

立山という雄大な山の中に地獄谷という特異な景勝地があったことで、そこを地獄と見たてて立山曼荼羅に描き、信仰を広めていったんですね。立山の自然の素晴らしさと人の想像力の豊かさがあってこその産物です。

<室堂平にある「血の池」>

今もその名は引き継がれており、地獄谷やエンマ台、血の池など訪れた人を魅了しています。(※現在地獄谷は火山ガス濃度が高いため通行禁止となっています。)

参考文献:立山の歴史 立山信仰の歴史[2006 富山県立山センター]

     入門!立山ワールドあんない[H30 富山県立山博物館]

     立山ふしぎ大発見?![R元年富山県立山博物館]

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2021年02月25日旅する掛軸「立山まんだら」って何?

中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝です。

「立山のいまとむかし~立山信仰と歩くアルペンルート~」と題して、立山の魅力をシリーズとして紹介しています。今回は第3回目で、「立山曼荼羅(たてやままんだら)」についてです。

第1回目の記事はこちら

第2回目の記事はこちら

立山曼荼羅(たてやままんだら)とは、立山信仰を全国に広めるために、立山山麓に住む人たちが「日本の越中に立山って言う場所があって、そこにはこんな世界が広がっているんだよ。ぜひお越しください。」と布教を行ったものです。

立山の歴史・文化について精通されている「立山博物館」では、所蔵されている立山曼荼羅が50点程あるようです。

<立山町芦峅寺にある 立山博物館>

立山曼荼羅は、掛け軸(掛幅)になっており、通常は4枚で1つの立山信仰の世界が描かれています。大きいものでは、縦180cm×横240cmのサイズがあります。4つに分割をすることで、携帯性を良くし、全国に持って行きやすいようにしたようです。

この立山曼荼羅は、立山信仰を広めるために重要な役割を担っていました。

口頭で「立山ってこんなすごいところがあるんだよ~」と伝えるよりも、絵を通して伝えた方がよりわかりやすく、説得力があります。確かに、現代でも写真を使った方がその場所の情報を伝えやすいですし、「行ってみたい!」という気になります。

先にご紹介をしたように立山曼荼羅でもたくさんの種類があります。その中の1つが「吉祥坊本」です。立山曼荼羅ごとにも名前が付いているんですね。

<富山県[立山博物館]蔵、国指定重要有形民俗文化財>

※立山博物館より許可を得て掲載しています。

そして、こちらが「善道坊本」です。

<富山県[立山博物館]蔵、国指定重要有形民俗文化財>

※立山博物館より許可を得て掲載しています。

写真ではわかりずらいですが、立山曼荼羅には、いくつも種類があり、その中でも描かれているものが異なっているようです。立山曼荼羅の中には、「様々な地獄」が描かれていたり(現在の地獄谷)、「立山開山」した場面が描かれていたり、その他にも雄山山頂の「峰本社」や、剱岳、浄土山、室堂、美女杉など現在でも呼ばれている地名が描かれています。絵と照らし合わせて、現在の場所と比較してみると「ここは、ここのことか~!」と発見があり面白いです。

「立山曼荼羅」を見て「立山登山・周遊観光」をしてみても面白いですし、

「立山登山・散策(観光)」をした後に「立山曼荼羅」を見てみるというのもまた面白いです。

立山へお越しの際には立山曼荼羅を展示している、「立山博物館」へセットで立ち寄るのもお勧めです。ちなみにすぐ隣は雄山神社中宮祈願殿がありお参りもできます。

<雪の雄山神社中宮祈願殿>

富山県側から立山駅へ向かう途中の「芦峅寺」という集落に立山博物館はありますのでぜひ寄ってみてはいかがでしょうか。

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2021年02月05日立山を開山したのは誰?熊と白鷹の伝説

中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝です。

「立山のいまとむかし~立山信仰と歩くアルペンルート~」と題して、立山の魅力をシリーズとして紹介しています。今回は、第2回目です。シリーズ前半は立山の昔話、つまり立山信仰を中心にとりあげていきます。

○第1回目の記事はこちら

<<立山が出てくる最古の文学書「万葉集」>>

前回、立山に関する最も古い文献として残っているのが万葉集ということを書きました。その頃から立山は、神がすむ山として崇められていることが推測できます。

さて俗に言う、立山を開山したのは誰なのでしょうか?

そのことが書かれている書物が「立山開山縁起(たてやまかいざんえんぎ)」です。

「立山開山縁起」にも様々な種類があるようですが、その中の「立山略縁起(たてやまりゃくえんぎ)」というものには次のように書かれています。

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越中の国の城主である「佐伯有若(さえき ありわか)」の息子「佐伯有頼(さえき ありより)」がいました。有頼は、父が大切にしていた白鷹をもって狩りに出かけましたが、その最中に山の方へ逃げてしまいました。探しに行った有頼は、苦労しながらも白鷹を見つけ出したところに、熊が現れ白鷹は逃げてしまいました。その後、熊が襲いかかってきたので矢を射ったところ、矢は熊の月輪に命中しましたが、絶命せず、熊が逃げていきました。有頼はその熊の血の跡を追い、立山山中で熊と白鷹を見つけました。するとその両者とも玉殿窟(たまどののいわや)に逃げ込みました。洞窟に入ると、そこに阿弥陀如来と不動明王が現れ、有頼に立山を開山するよう導きました。その後、有頼は「慈興(じこう)」上人と名のり立山を開山しました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その伝説が語り継がれて、現在も一般的に佐伯有頼(慈興上人)が立山を開いたとされています。

その他の説としては、狩人が開山をしたという説や、有頼の父佐伯有若が開山したという説もあるようです。(諸説あるようです)

また、熊は日本のみならず世界でも神聖な動物とされており、立山開山縁起でも、熊は立山の神か、その使いを象徴しています。

日本古来から有する山岳信仰(山に神がいるという、自然に対する畏敬の念)と外来信仰である仏教信仰とが合わさり、神仏習合となっていることが伺えます。

佐伯有頼像は、室堂ターミナル内と富山市内の呉羽山公園展望台にて見ることができます。

<室堂ターミナルに立つ佐伯有頼像>

<呉羽山展望公園 佐伯有頼像と立山連峰 2021.1.20撮影>

参考文献:立山の歴史 立山信仰の歴史[2006 富山県立山センター]

     入門!立山ワールドあんない[H30 富山県立山博物館]

     

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2021年01月27日立山が出てくる最古の文学書「万葉集」

中部山岳国立公園 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝です。2021年に入り、初投稿です。

冬の時期は、現場に行ける機会が極端になくなってしまうのが立山です。(立山黒部アルペンルート、黒部峡谷鉄道の営業が11月末まで)

冬の間は、シーズン中にできなかった事務作業や春の開山に向けた準備諸々を行っています。

その中でも、立山についての魅力を発信できないかと、こんな企画を考えました!

題して、「立山のいまとむかし~立山信仰と歩くアルペンルート~」

不定期ではありますが、何回かのシリーズ編として立山の歴史を中心にご紹介をしつつ、今の国立公園との関わりについて触れていけたらと思っています。

専門家ではないため、拙い知識や文章が見受けられるかもしれませんが、僕自身も今回の企画を通し学んでいき、立山の魅力が少しでも伝われば幸いです。

第1回目の今回は、立山の景観を詠んだ万葉集の一首を紹介します。

「万葉集」は、奈良時代に歌われた日本で最古の和歌集です。

学校教育でも出てくるので、中身は知らなくても誰もが聞いたことがある言葉だと思います。

一方で、越中国守(富山)であった『大伴家持(おおともの やかもち)』が万葉集に大きく関わっていたというのはご存じでしょうか。その万葉集の中で、立山について歌った短歌があります。立山という言葉が出て来る中では最も古く、天平19年(747)に「立山の賦」と題して発表されました。

「立山に降りおける雪を常夏に見れどもあかず神からならし」

「真夏になっても降り積もって残っている白い立山をいつ見ても飽きないのは、立山に神がいるからだろう。」

現代の日本語に要約するとこんなニュアンスでしょうか。

ちなみに、この頃は「立山(たてやま)」ではなく、「立山(たちやま)」と呼んでいたそうです。

この歌からもわかるように、昔の人々は雄大な立山を神聖なものとしてとらえていたことが伺えます。

また、外来宗教である仏教が日本に伝来されていき、修行者などの仏教の面からも立山は大きな意味をもつ山となっていきます。

大伴家持や昔の人たちが立山をどの位置から見ていたのかわかりませんが、天気がいい日には富山の海岸線から立山連峰と海を望むことができます。

こちらは、雨晴海岸からの景色で、富山湾と立山連峰が望める有数のスポットです。この時は、うっすらと後ろに立山連峰が見えました。

<雨晴海岸にて。2020年3月撮影>


こちらは、射水市にあるみなとオアシス海王丸パークからです。新湊大橋が印象的でもあります。

<みなとオアシス海王丸パークにて。海と立山連峰>

富山市よりの海岸になると、立山連峰でも北側(毛勝三山)がよく見えます。

<浜黒崎海水浴場にて。2020年4月撮影>

富山へお越しの際には、お気に入りの立山連峰が見える場所を探されてみてはいかがでしょうか。

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2020年12月08日アルペンルート営業終了。室堂平仮設野営指定地の状況

中部山岳国立公園 立山 一ノ枝亮輔

こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の一ノ枝です。

11月30日で立山黒部アルペンルートの営業が終了しました。

<11/29 室堂ターミナルから雄山方面>

室堂平では山小屋が営業終了後の11月25日~11月30日の間、仮設野営指定地を設置しました。

<11/28 仮設野営指定地>

11月末に1日に60cm程積もる雪が降ったことで室堂周辺もかなり植生が隠れて白くなってきました。最終の土日の28,29日には、テントが50張を越える数の利用者が見受けられました。

<11/29 仮設野営指定地>

多くの人は今シーズン初のスキー・ボードを楽しみに求めてこられている方々のようです。

<スキーヤー・ボーダーが山へ向かう様子>

この時期に室堂平周辺を利用するにあたっては、利用ルールが定められています。

ルールについては、佐藤ARの投稿をご覧ください。

11月の積雪期に立山室堂平周辺に訪れる皆様へ(リンク)

日頃から、中部山岳国立公園の適切な利用にご協力いただきありがとうございます。

仮設野営指定地は、極力植生のダメージが少ない場所を選び決められています。トイレについては、室堂ターミナルのトイレ(24時間使用可。ターミナルまでは直線で200m程)を使用するか携帯トイレの使用をお願いしております。

<室堂ターミナルにて販売しています。1個300円>

<ゴミ箱は、室堂ターミナルに設置されています。緑色が携帯トイレ用>

<11/29 仮設野営指定地から奥に見える建物が室堂ターミナル >

僕の担当が土日だったため、利用者が多い日に巡視をしましたが、屎尿が散見されました。

<中には、大のほうも、、、>

自然保護の観点からもそうですが、次の利用者が見た際にこの場所にテントを張りたいと思うでしょうか。

みんなが、気持ちよく利用するためにも、自然や次の人のことを考えてお互い思いやりの気持ちを心がけて行動をして欲しいと思います。

また、スキーで滑走をする際には植生がまだ出ている箇所は、踏んでしまうとダメージを与えてしまうため、植生を避けての滑走をお願いしております。

<こちらは、地獄谷立入り禁止区域の看板>

  1. 植生が見えている箇所での滑走跡、踏み跡が見受けられました。

<植生上の踏み跡>

<ガンコウランの上の踏み跡>

ほとんどの利用者の方は適切なマナーをもって、この自然を楽しんでいると思いますが、こういった現状もあることを知ってもらいたいということで、今回書かせていただきました。

はるばる、アルペンルートに乗って、雄大な立山の自然を求めて来ていただけているので、皆さんに気持ちよく利用していただき、

「立山来て良かったなあ~楽しかったな~」

と思って帰っていただきたいです。

<自然が織りなす造形美>

昨今では、「SDGs(エスディージーズ)」という言葉が頻繁に出てくるようになりました。

その体験が、後世にも続くように、自分たちができることを心がけていきたいです。

僕自身も、アクティブレンジャーとして、いち個人として何ができるのかを改めて見直して小さなことからアクションしていければと思います。

立山黒部アルペンルートや黒部峡谷鉄道(トロッコ列車)も11月30日で営業を終了しました。山での現場業務は来春までお休みです。

今シーズンは、激動の年となりました。それでも変わらずにある立山の自然に感謝をしつつ、コロナが落ち着いて来年は多くの方が立山に来てもらえることを願っています。

<ミクリガ池と雄山(立山)>

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2020年11月13日11月の積雪期に立山室堂平周辺に訪れる皆様へ

中部山岳国立公園 立山 佐藤 裕子

積雪期に立山室堂平周辺を訪れる利用者の皆様の安全確保と自然環境保全のため、立山室堂地域関係者で構成する「室堂平周辺積雪期利用適正化協議会」では、積雪後から11月30日まで「室堂平の積雪期利用ルール」を策定しています。

立山室堂へお越しの際は以下のルールをお守りください。

R2_秋期リーフレット

■積雪期におけるテント泊について

テント泊を予定している方は、冬山に対する高度な知識と技術、十分な装備を持った上で自己責任のもと利用してください。

雷鳥沢野営管理所は10月31日~翌年4月下旬まで冬期閉鎖しています。野営場は利用可能ですが、トイレや水場は使用できないため、携帯トイレをお持ちください。(入山安全相談窓口、ホテル立山2F売店で販売しています)

・テント設営を予定している方は、登山届を事前に提出している場合であっても、室堂ターミナル内の

 入山安全相談窓口にて必ずレクチャーを受けてください。

・少しでも技術、体力、装備に不安のある方は山小屋(山小屋は11月24日(火)宿泊まで営業)やホテルを

 ご利用ください。

■室堂平仮設野営指定地の開設について

山小屋が休業する11月25日(水)~アルペンルートが閉鎖する11月30日(月)までの間、応急的に室堂平仮設野営指定地を開設します。詳細は信越自然環境事務所HPでお知らせしますのでご確認ください。

 ~テント宿泊について~

  11月25日までは雷鳥沢野営場をご利用ください。

  11月25日の宿泊から雷鳥沢野営場もしくは、室堂平の仮設野営指定地をご利用ください。

  室堂平では、上記以外の場所ではテント設営はできません。ご協力お願いいたします。

立山周辺や雷鳥沢野営場、室堂平の植生上、登山道上にし尿やゴミが放置され、環境汚染が懸念されています。携帯トイレをお持ちください。

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