アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その5 室堂平~雄山山頂
2022年03月09日こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の平松&一ノ枝です。
今回はシリーズ第5回目です。今回は室堂から雄山山頂までの区間を紹介していきます。
<↑今回の区間。 出典:電子地理院地図を加工。>
室堂平に到着後、立山登山をする多くの人は「室堂~一ノ越~雄山山頂」を目指すルートを進みます。かつての立山信仰では現在とは少し違い、「室堂~浄土山~一ノ越~雄山山頂」へ向かうルートが主なルートでした。今回は、後者のルートで雄山山頂を目指していきます。
<今回のルート(青線)>
立山室堂横の分岐を浄土山方面へ進み立山カルデラ展望台を目指します。立山カルデラは、東西約6.5km、南北約4.5km、標高差が500~1,700mの侵食カルデラといわれています。ここから流れる常願寺川は、別名「暴れ川」とも呼ばれており、浸食され溜まっていった土砂は大雨の際に氾濫をおこし、下流の人々の生活を脅かしていました。現在は砂防工事のおかげもあり、かつてのような氾濫はなくなっています。
<展望台から眼下に立山カルデラ>
・浄土山
カルデラ展望台との分岐へ戻り、ここから急登を上がっていき浄土山(2,831m)へ到着です。浄土山の頂上にはかつて阿弥陀堂があったそうです。浄土山は立山三山の一つで、あとの2つは立山(雄山)と別山を言います。この日は山頂付近でライチョウの親子に遭遇しました。ここら辺はよく目撃情報があるのですが、実際に会うことができました。室堂周辺には約300羽のライチョウが生息していると言われています。
ここから一ノ越までは、岩の多い尾根の下りになります。このような場所では、室堂とは違った植物を見ることができます。
<タカネツメクサ 花びらが大きく、近縁のイワツメクサと区別できます>
<チシマギキョウ 近い仲間のイワギキョウは室堂でも見られます>
<タカネヤハズハハコ 花の集まりがブーケのようでかわいいです>
<トウヤクリンドウ 花が白いリンドウの仲間です>
一ノ越に到着し、一休みです。ここには、一の越山荘と公衆トイレがあります。
<一の越山荘>
ここから雄山山頂を目指します。一ノ越から雄山山頂までは比較的多くの登山者で賑わっています。前後の人に配慮しつつ、落石がないように注意して進んでいきます。
その途中、山々を越えて飛んでいるチョウがいました。アサギマダラです。アサギマダラは旅をするチョウとして知られており、夏の終わりから秋にかけて、北アルプスを越えて近畿、中国、四国、九州や沖縄まで飛んでいき、中には台湾まで行く個体もいます。
南方に着いたチョウはそこで産卵し死んでしまいますが、翌春にはそこで育ったチョウが再びこちらまでやってきます。
<アサギマダラ 8月半ばから9月頃にたくさんのチョウが山を越えて飛んでいきます>
上には頂上にある雄山神社の建物が見えます。
<雄山山頂にある雄山神社が見える>
振り返るとこれまで通ってきた一ノ越、浄土山方面です。
立山曼荼羅では、浄土(山)から雄山に向けて阿弥陀如来と多くの菩薩が迎えに来ている様子が描かれています。立山登山中に浄土山の方面を振り向くと、太陽の光が背後から当たり、雲と光によって見る人の影の周りに虹のような光の輪が現れる「ブロッケン現象」が見えることがありました。それが阿弥陀如来と多くの菩薩が浄土から迎えに来る姿と重ね合わさったようです。
<人は映り込んでいないが、別の日の立山登山中に見えたブロッケン現象に似た現象>
山頂付近には神社の大きな建物と一番山頂部に雄山神社峰本社が建立されています。いつから雄山山頂に御本社があったかははっきりとわかっていませんが、一番古いもので寬永18年(1641)の棟札が残っています。
江戸時代になると、立山信仰は盛んになり、欲や迷いを断ち切り、心身が清らかになることを願って禅定登拝する人が多くなりました。明治以降には、外国からのアルピニズムが入り、スポーツ・レジャー的要素が強い近代登山が始まりました。現代の登山でも、自然に触れることによる心身のリフレッシュや健全化を求めて、多くの人が山へ行くのを考えると、昔も今も山へ登ることに共通するものがあるのではと感じさせられます。
○過去の投稿はこちら
第1回目 歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その1 立山駅から美女平
第2回目 歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その2 美女平から弥陀ヶ原
第3回目 歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その3 弥陀ヶ原から室堂
第4回目 歩くアルペンルートを歩こう!~立山の魅力~その4 室堂平
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