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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

真夏の干潟健康診断

2013年08月28日
名古屋
 名古屋自然保護官事務所では、昨年度から
目の前に広がる藤前干潟の水環境とそこに住む、
ゴカイや二枚貝類等の底生生物(ベントス)の
季節的な変動を把握するために簡易モニタリングを
実施しています。稲永公園前に広がるヨシ原周辺にて
8/19に藤前干潟の様子を観察しましたので報告します。

 強い日差しの中、多くのヤマトオサガニたちは
水際でせっせと餌を食べていました。白いハサミが
特徴のチゴガニも軽快なダンスを披露し、干潟を
賑わせています。この暑さの中、彼らは熱中症に
ならないのでしょうか?

 ヨシ原の奥部には、上流から流されてきたと
思われるヨシ片やゴミが多量に漂着しており、
この下にはベンケイガニ類がたくさん身を潜めていました。


【軽快なダンスを披露するチゴガニ】


【ヨシ原に押し寄せるヨシ片(写真左)と漂着ゴミ(写真右)】

 ヨシ原周辺の干潟を歩いていると、卵の腐った
ような臭いが至るところから漂ってきます。
臭いの発生源を調べると足下の泥の中でした。

 干潟の泥を少し掘り返すと真っ黒な泥が顔を出す
とともに、強い硫化物臭が発生していることを確認
しました。黒い泥の中をよく観察すると分解されない
ままのヨシ片が多数混入しており、ゴカイや二枚貝類
等はほとんど見られませんでした。


【黒く変色した泥】

 ここ最近は小雨が続き、台風などの気象
イベントも少ないので、水域内の泥が撹拌されず、
酸素が供給されていないため、効率よく有機物が
分解されていないのではないかと思われます。
また、夏の高温により泥の中の微生物が活性化し、
酸素が多量に消費されます。

 泥の中に酸素が十分に供給されていないと
嫌気性微生物の作用により、ゴカイや二枚貝類等に
有害な硫化水素が発生します。

 昨年も夏期にゴカイや二枚貝類等の出現個体数が
減少する傾向が見られていることから、この時期は
泥の中で暮らすこれらの生物にとっては厳しい生息
環境であることが示唆されます。


【ヨシ原周辺の干潟の様子】

 今後は台風の襲来や気温低下に伴い、泥の
貧酸素状態は解消され、ゴカイや二枚貝類等も
徐々に増加してくるのではないでしょうか?
これから秋にかけて干潟の状態がどのように
変化するのか生き物の様子などをモニタリング
していきたいと思います。