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アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2011年11月20日

1件の記事があります。

2011年11月20日★記念日月間★ 11月20日

伊勢志摩国立公園 志摩 アクティブレンジャー村松さや華

!!伊勢志摩国立公園65周年!!

白山の世良アクティブレンジャー、藤前干潟の野村アクティブレンジャーと続いてきた記念日月間リレー。
最後は、私、村松アクティブレンジャーの務める伊勢志摩国立公園です。

【これまでの記事】
★記念日月間★11月12日(世良アクティブレンジャー) ・・・白山国立公園指定日
★記念日月間★ 11月18日(野村アクティブレンジャー) ・・・藤前干潟ラムサール条約登録日

11月20日は、「伊勢志摩国立公園指定日」です。

そして、本日、昭和21年の指定から65周年を迎えました!
伊勢志摩国立公園は、志摩半島を中心とし、伊勢市、鳥羽市、志摩市、南伊勢町の3市1町を区域とした、「海の国立公園」です。

公園には、「外海」「内海」と呼ばれる海が存在します。「外海」は、熊野灘や太平洋、「内海」は英虞湾(あごわん)のことを指して言います。「外海」を代表する景色には、三島由紀夫の『潮騒』で有名な神島のカルスト地形や、荒波に削られてできた海食崖や海食洞があります。「内海」は、英虞湾に代表されるリアス式の複雑な海岸線、的矢湾や五ヶ所湾で見られる隆起海蝕台地があります。そして、その海岸線には、ハマユウやハマヒルガオ、ハマゴウといった暖地性の海浜植物が彩りを添え、水中に目を移すと、日本有数とも言われる豊かな藻場が広がり、多くのいきものたちのゆりかごとなっています。一口に海と言っても、その景色は本当に多様です。




そして、この自然の景色には、この土地に暮らしてきた人々の暮らしが溶け込んでいます。
伊勢志摩は全国一海女の多い場所で、300年以上の昔に生まれたその文化は今も受け継がれ、現在も1000人以上の海女が活躍しています。そして、真珠のふるさとと言われる英虞湾には、今もたくさんの真珠の養殖筏が浮かび、他にも、カキやアオサノリの養殖も盛んに行われています。また、陸に目を向けると、広大な宮域林(きゅういきりん)に囲まれた伊勢の神宮があります。宮域林は、公園を代表する原生的な常緑広葉樹の森で、トキワマンサクやジングウツツジといった指定植物にも指定されている貴重な植物が見られ、学術的にも貴重な森林と言われています。日本でも有数の歴史を持つ、このような人文景観もこの公園の大きな特徴です。





交通機関も整い、比較的容易に訪れることのできる伊勢志摩国立公園は、全国的にも利用度が高いことも特徴に挙げられます。
一方、市街地を多く含むため、私有地の占める割合が96%と全国一となっています。地元の方々にとっては、身近に日本を代表する自然があるという恵まれた環境である一方、暮らしを営む生活の場でもあるのです。
そんな中で、国立公園の自然を守る立場として活動していると、とても悩ましい思いをするときが多々あります。
そこに暮らす人々の心持ち一つで、良くも悪くも大きく影響を受けてしまうため、地元の方々への普及啓発というのがとても重要になってくると思っています。



横山展望台でガイドをしていると、いろんな方に出会います。
小学生の時に修学旅行で来た方、10年ぶりに旧友と訪れた方、県外にお嫁に行って帰って来られた方。
「当時が蘇ってくるなぁ」「やっぱり素晴らしい景色だねぇ」と、嬉しそうに懐かしむみなさんとお話ししていると、こちらまで暖かい気持ちになります。
私にとっても大好きな景色になっているこの伊勢志摩の風景は、一体どれだけの人の記憶に残る風景になっているんだろう、と思いを馳せたりします。
そんなときは、この方達が次に訪れてくださるときにも、変わらぬ景色が迎えてくれるよう、今の自然が残っていてほしいなぁと思っています。




さて、今回の記念日月間としてリレーでご紹介してきた、白山国立公園、藤前干潟、伊勢志摩国立公園。

それぞれ離れた場所ではありますが、海の自然の保全を考えたとき、私はそれぞれの地域とのつながりを強く感じます。
白山の雪解け水は、長良川を伝って山々の栄養を運び、伊勢湾に生きるたくさんの命を育んでくれます。
藤前干潟をはじめとした伊勢湾岸の干潟は、海を浄化する大切な機能を果たしてくれています。
緑深い山々、広大な干潟、それぞれの自然環境が健康に保たれていることで、豊かな海の自然を作り出してくれます。

海岸の清掃活動を行ったり、海女さんや漁業者の方々の声を聞いたりと、アクティブレンジャーとして現場に出ていると、「海の環境」だけを考えているだけでは、ダメだということを痛感します。
「山」、「川」、「干潟」、「海」、それぞれの地域で保全活動に励んでくださっている方々の思いは、自然のつながりを通して感じることができます。
自然のつながりがそれを守る人のつながりとなって、これから先100周年目を迎えても、変わらない姿のまま、再びこの地を訪れてくださる方を迎えられる場所であり続けることを願っています。


ということで・・・。
世良アクティブレンジャー、野村アクティブレンジャー、村松アクティブレンジャーによる「★記念日月間★」リレー記事を終わらせていただきます。
それぞれの記事、みなさんはどのように感じていただけたでしょうか?
私たちが奮闘する、白山国立公園、藤前干潟、伊勢志摩国立公園、ぜひ訪れてみてくださいね。

★白山国立公園HP http://www.env.go.jp/park/hakusan/
★藤前干潟HP http://c-chubu.env.go.jp/wildlife/fujimae/index.html
★伊勢志摩国立公園HP http://www.env.go.jp/park/iseshima/

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