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アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2011年11月19日

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2011年11月19日★記念日月間★ 11月18日

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー野村 朋子

皆さん、こんにちは。
藤前干潟にある名古屋自然保護官事務所の
野村アクティブレンジャーです。

白山【山】と名古屋【干潟】、そして志摩【海】のそれぞれの記念日に合わせて
アクティブレンジャー日記を更新していく記念日月間リレーの
第二走者をつとめます。

11月12日の「白山国立公園指定日」に続いて、
11月18日は藤前干潟のとある記念日です。

藤前干潟は国立公園ではないので、国立公園指定日ではありません。
それでは、何の記念日かというと・・・、
藤前干潟が「ラムサール条約」に登録された日なのです。
藤前干潟は国指定鳥獣保護区であり、その一部がさらにラムサール条約湿地に登録され、
保全されている場所です。

【ラムサール条約湿地登録の記念碑】

ラムサール条約は正式名称を、
「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」と言います。
藤前干潟は、干潟の生き物を餌とする渡り鳥が非常にたくさんやってくる
日本有数の湿地です。
渡り鳥の中には12,000㎞もの長距離を移動するものもいます。
そんな渡り鳥たちにとって、渡りの中継地となる藤前干潟の存在は
大変重要なのです。

しかし、藤前干潟は皆さんの想像しているような大自然を感じることのできる場所では
ないかもしれません。
皆さん、自然というと深い森や青い海が広がっている風景を想像しませんか?



藤前干潟の周辺は工業地帯で、緑は少ないですし、
青く透き通った海が見られるわけでもありません。
先に紹介のあった白山のように色鮮やかな花をつける高山植物が
見られるというわけでもありません。
生き物の宝庫である干潟は灰色をしていて、干潟の生き物たちの色も一見地味な印象です。

【藤前干潟の生き物たち】
(※じっくり見ると生き物たちはとっても魅力的で、干潟はとってもおもしろい場所です!)

でも、この工業地帯の真ん中にあることが藤前干潟の何よりの特徴、魅力、
そして存在意義だと私は思います。

それは、藤前干潟が守られてきた歴史に理由があります。
かつて伊勢湾最奥部にあった広大な干潟の中で
1960年以降の大規模な開発で埋め立てされずに唯一残った藤前干潟。
しかし、1981年にこの最後に残った藤前干潟を埋め立てるという計画が
持ち上がりました。
私たちの出すゴミを捨てる埋め立て処分場とするために・・・。

しかし、市民らの反対運動の結果、1999年、この埋め立て計画は中止され、
2002年11月1日に国指定鳥獣保護区に、
同年の11月18日にラムサール条約湿地に登録され、
藤前干潟は将来に渡って保全されることになったのです。

【記念碑にある認定証】

また、こんなに都会に近く、工業地帯の隙間にある藤前干潟だからこそ、
訪れた人に感じてもらえることがたくさんあると思います。
「こんな場所にもこんなにたくさんの生き物がいるんだ!」という驚きを得ると同時に、
川の上流から流れてくる排水やゴミの問題を実際に見て、
私たちの生活と自然が繋がっていることを実感できる場所だと思います。

そして、白山の世良アクティブレンジャーも白山に携わる人々に思いを馳せていましたが、
私も藤前干潟に携わっている人の思いを日々感じながら業務にあたっています。
様々な観点から藤前干潟で活動している人、訪れる人、見守っている人がいます。

藤前干潟の日(11月18日)を記念して先日開催した「藤前干潟ふれあいデー」では、
延べ6,300人もの方の来場がありました。
また、11月12日に行われた藤前干潟のゴミ清掃活動であるクリーン大作戦には
1,500人もの市民の方が参加し、汗を流しました。

都会に近い場所だからこそ、訪れ、関わる人が格段に多いのも
藤前干潟の特徴だと思います。

11月18日の今日、藤前干潟はとっても穏やかです。
冬鳥であるカモが水上で羽繕いをしたり、採餌したりしているのが観察できます。


藤前干潟で過ごす彼らの姿を見ながら、人と自然との共存の難しさを思うとともに、
来年でラムサール条約湿地登録から10年という節目を迎える藤前干潟の
自然と関わる人々の思い、活動が今後も続いていくことを願ってやみません。


それでは、この藤前干潟と伊勢湾を通してつながっている
志摩の村松アクティブレンジャーにバトンを渡したいと思います。
村松アクティブレンジャー、よろしくお願いしま~す!

(※11月19日のアップになりましたが、11月18日に執筆しています。)

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