中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
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アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、上信越高原、妙高戸隠連山、中部山岳、白山、伊勢志摩国立公園があります。
白山麓はもう寒く、冷え性の僕には辛い季節がやってきました。
中部地方環境事務所管内には3つの保護官事務所があります。
それが白山(白山国立公園)、名古屋(国指定藤前干潟鳥獣保護区)、志摩(伊勢志摩国立公園)にあります。
実は、この3つの事務所の管理する保護区の指定・登録日が11月に集中しています。
11月は中部管内の記念日月間なのです。素敵な響きですね☆
この記念日に関する記事をリレーしていきたいと思います。
では、トップバッターは白山です。
さてさて、11月12日は「白山国立公園指定日」です。
【白い山と呼ばれる白山】
富士山、立山と並び日本三名山と呼ばれる白山。
白山という山(峰)は実は無いことは知っていますか?
最高峰の御前峰(ごぜんがみね、標高2,702m)、
大汝峰(おおなんじみね 標高2,684m)
剣ヶ峰(けんがみね 標高2,677m)
これら三峰を中心として、周辺の山々の総称を「白山」といいます。
白山には、ツキノワグマやイヌワシなどの大型鳥獣が高密度で生息するなど、優れた自然地域として、昭和37年に国立公園に指定されました。
そして、ユネスコの生物圏保存地域に指定されるなど、自然性の高い国立公園として高い評価を受けています。
【鳥獣】
また、全国でも見られると思いますが、「ハクサン」の名前の付く高山植物が多数みられます。
これは、白山にしか生育しない植物・・・というわけではなく、古くから植物調査に入っていたため、名付けられたとのことです。
その他にも様々な高山植物が生育します。
【登山ピーク時に見ることが出来ますよ】
また、白山には禅定道という古道が3つあります。
石川県(加賀)、福井県(越前)、岐阜県(美濃)からそれぞれ山頂への道が開かれました。。
禅定道とは、開祖である泰澄大師が白山を開山してから修行として使用された道です。
禅定道を登るために馬を置いた場所が馬場と呼ばれます。
そのため、禅定道沿いには、宗教的な箇所や史跡などを多くみられます。
白山の山麓には、世界文化遺産である白川郷のある白川村・五箇山をはじめ4県7市町村が関わっており、多くの地域の方々に囲まれ白山は成り立っています。
【ブナオ山観察舎。どこへ行っても冬は雪深いです】
・・・と、つらつらと記載しましたが。
このようなことは地域の皆さんは知っていると思います。
知らない皆さんも、インターネットなどで調べれば出てくると思います。
では、みなさんにとって「白山」とはどんなイメージがありますか??どんな連想ができますか?
【みなさんの白山のイメージ図は?】
豊かな自然。信仰宗教の山。夏や一部の道の一極集中。白い山。などなど。
白山について考えてくれる人の数だけ、様々な意見が生まれると思います。
僕は約一年を通し、白山について考えてくれている人が沢山いるということを実際に出会い、実感しました。
黙々と登る人々を見て、心の中では様々な思いを持って登っているんだろうなと、僕も白山のあり方について考えるようになりました。
今ある「白山」が国立公園であることに対して皆さんは、何を思いますか?
49年前、白山に携わる人々の色々な思いを込めながら、白山は国立公園に指定されたと思います。
国立公園に指定されてからも、環境や利用の良し悪しなど、色々な意見があったと思います。
僕の個人的な意見としては白山の豊かな自然が、人間の手によって切り開かれ、破壊されるのは胸が痛みます。
もちろん、自然保護と登山などによる人間の利用は相反する部分もあり、人が自然に与える影響は果てしなく大きいと思います。
今まで整備された登山道や避難小屋や林道などの造成はそれに当たると思われる方は多いのではないでしょうか??
皆さんもお分かりの通り、人々が生活に快適さを求めれば求めるだけ自然破壊は進みます。
その中で、自然環境を大切にしようという心も芽生えます。
それでも、やはり人間は快適さを求めてしまう生き物なのかと思います。
でも、一見自然破壊のように見える登山道や避難小屋は、登山者が登山道以外の場所に行かないように制限して、他の環境要素を守ろうという意図もあります。あのような高所に登山道を付けることの大変さ・・考えただけでもゲンナリします。
約20年前に持続可能性という素晴らしい言葉が生まれました。
ものすごく簡単に言うと、限りのある資源を大切に使用していこうという言葉です。
白山の自然や文化を通して、今ある施設や道、車などの文明の利器を使うのに、感謝の気持ちなくして生活はできないと学びました。
さあ、皆さんは今の白山に対して何を思いますか?
この己の思いを持つことが大事なのだと思います。
いよいよ来年度は、白山国立公園が指定されて50周年の節目を迎えます。
環境省でも、関係者と一緒にこの記念すべき日を祝う構想を現在練っています。
毎年姿を変える白山は、来年度どのような姿をみせてくれるのでしょうか?
僕の強い私見ばかりの日記となってしまいましたが、藤前干潟を管理する名古屋事務所の玉津アクティブレンジャー、野村アクティブレンジャーにバトンを渡す為に、そろそろ閉めたいと思います。笑
これから白山麓は深い雪に覆われますが、来年度になるとその積もった雪が解け、富山へは荘川、石川へは手取川、福井へは九頭竜川、岐阜へは長良川へと白山から流れます。
このような川は、山と海の恵みを双方につなげる、生き物の大切な移動経路ともなります。
生き物にとって「つながり」というものはとても大事なのです。
そして、そのつながりの途中には干潟があります。
それでは、鳥類にとってとても大切な中継地であるラムサール条約登録湿地の藤前干潟にバトンパスをしたいと思います。
【いつまでもきれいな白山でありますように】