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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

秋本番

2024年11月08日
伊勢志摩国立公園 三好 明
みなさん、こんにちは。
伊勢志摩国立公園管理事務所ARの三好です。
三重県では10月は雨ばかり降っていたイメージが強く、青空を見た記憶がないほどよく降りました。でも、季節は確実に進んでおり、朝夕の秋虫は良い声を奏でて鳴いてくれています。みなさん、体調管理はいかがですか。
月日が立つのは早いもので、いよいよ11月の始まりです!昼間でも半袖一枚ではさすがに寒くなってきました。季節が進むにつれ、夏の頃に色鮮やかだった花や虫たちは姿が見えなくなりました。変わって草花も渋い色合いのものが多くなり、それはそれでいいな~と思える今日この頃です。
今回は、伊勢市、志摩市、鳥羽市で撮影した動植物を紹介します。
季節は10月後半から11月初旬です。

秋本番

【オギ】
夕日を浴びて、オギ(荻)が宝石のように光り輝いています。季節はもう秋本番です!みなさん、秋を楽しんでいますか?


【ホソヒラタアブ】
食事に夢中なのか、無警戒に後ろ姿を見せているのはホソヒラタアブです。空中で静止するホバリングが得意で、幼虫はアブラムシを食べ、成虫は花粉などを媒介することから、益虫として扱われています。小さいのはよく飛んでいますが、この子は比較的大型でした。

【マツカゼソウ】
すっかり色あせた湿地には、数株のマツカゼソウが美しい花を咲かせていました。ミカン科マツカゼソウ属の多年草で、日本にあるミカン科の植物の中で唯一の草だそうです。小さくかわいい花をたくさん付ける姿は華麗です。地域によっては大変希少な植物です。


【アリ】
セイタカアワダチソウの花には、アブラムシを求めて大きなアリ達が群がっていました。これほどたくさんのアリを見たのは久しぶりです。これから秋も深まり、季節は冬へと向かっていきます。それぞれ一生懸命いまを生きているのですね。


【ナワシログミ】
山林に入ると、ナワシログミの花が満開に咲いていました。グミ科グミ属の常緑低木で、10月下旬から11月上旬に花期を迎え、翌年の初夏に赤い実が熟します。苗代を作る5月下旬ごろに実が熟すことが和名の由来だそうです。地域によっては希少な植物です。


【ウンカの仲間】
秋の暗がりに潜んでいたのはウンカの仲間です。夕方近くになると日が暮れるのは早く、闇と静けさに押しつぶされそうになります。この子もどんな気持ちで寒い夜を過ごすのでしょうか・・・。


【イチョウの実】
イチョウは裸子植物で落葉性の高木です。街路樹や公園樹、寺院や神社などに多く見られます。撮影の日には葉の黄葉には早かったようで、緑の葉っぱがきれいにそろっていました。樹下を見ると、立派な銀杏の実がいっぱい落ちており、うっかり踏んでしまうと独特の匂いが周りに漂ってきます。「生きている化石」として、野生のイチョウは、国際自然保護連合(IUCN)から絶滅危惧種に指定されています。この子も南伊勢町指定文化財(天然記念物)に登録されている個体です。次回、黄金色に輝く全体像をお見せしたいです!


【クサグモ】
山間を歩いていると、きらきら光るクモの巣を発見!近づくと小さなクサグモがモゾモゾと動いていました。四方に張り巡らされたクモの糸は本当にきれいで、こんな小さな空間にも自然の不思議さを感じさせてくれます。

【ウツギの実】
ウツギは、ユキノシタ科の落葉低木で日本固有種です。枝を切ると幹の中心が空洞になっていることから「空木(うつぎ)」と呼ばれているそうで、卯月(現在の5月)のころに白い花を咲かせるため、その名が付いたとも言われています。球形の実は木質で、小さなコマのような形をしています。渋い色合いがいい感じです。


【オオアオイトトンボ】
湿地へ行くと、オオアオイトトンボが翅を休めていました。この時期に出会えるトンボはどんどん少なくなってきており、この子を見たときには感激しました。アオイトトンボとの違いは、腹部ラインや腹端部で見分けられます。地域によっては希少なトンボです。本当にきれいですね!


【カキノキ】
雨が降りしきるなか、「ザ・日本の秋」とも呼べるカキノキの登場です。学術上の植物名はカキノキで、その果実をカキと呼ぶそうです。「桃栗三年柿八年」という言い伝えがありますが、それぞれの木の種から芽が出て実になるまでの月日を指します。その裏には「何事も成し遂げるまでには相応の年月が必要だ」という意味だそうです。勉強になりました。


【アオオビハエトリ】
海岸近くで目線を落とすと、緑色をした小さな生き物が足早に歩いています。ファインダーを通してその姿を追っかけると、アオオビハエトリと目が合いました。「なにか用?」と話し掛けられているようで、こちらが萎縮してしまいます。


【テツホシダ】
湿地にはテツホシダが静かに生息していました。ヒメシダ科のシダ植物で、世界の熱帯、亜熱帯に分布します。非常に地味ですが非常に希少な植物で、日本ではすでに絶滅した地域も数多くあります。大切に見守りたい、と切に思いました。

終わりに

いかがでしたか。
アクティブレンジャーになって初めての秋本番を迎えました。イメージでは華麗な花やかわいい昆虫たちが活発に活動する、一年で一番良い季節かなと思っていましたが、蓋を開けると大間違い!撮影に出ても風景には色が乏しく、生き物に出会うことさえ難しい現実を知らされました。
ですが、専門家にお聞きすると、「見るべきところを見ていないだけ」ということで、例えば、枯れ葉の下や水辺の中など、必ず生き物はいる!という力強いお言葉をいただきました。これまで、目に見える鮮やかな動植物にこだわりを持って撮り続けましたが、今回も含めてこれからは渋い被写体を追っていきたいと思っています。
今後もよろしくお願いします。

自然を大切に!


【シロガネグモ】