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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

夏の終わりに

2024年09月10日
伊勢志摩国立公園 三好 明
みなさん、こんにちは。
伊勢志摩国立公園管理事務所ARの三好です。
季節は進み、令和6年も9月に入りました。空梅雨のような8月も後半には台風が直撃するなど、自然の厳しさを思い知らされました。
まだまだ蒸し暑い日が続きますが、みなさんくれぐれも体調管理にお気をつけください。
さて、今年の夏ですが、あまりの暑さに昆虫たちが姿を見せてくれません。それは、私自身の観察力のなさや持っているもののなさもあると思いますが、カメラを持って出掛けても、酷暑過ぎるため動植物全体が弱っているように感じます。空振りで終わることやお見せするような撮影ができなくて、本当にいやになってしまいます。言い訳になりますが、そんな訳で、今回は昆虫に関しては少ししか紹介することができませんでした。スミマセ~ン。ですが、最初のかわいいカマキリに出会えたことだけは感謝しています。改めて、動植物はいいな~と思えました。
そこで、今回は志摩市にある横山園地を中心に、園地内やその周辺地域で出会った動植物たちを紹介したいと思います。また、植物の中には、三重県では絶滅に近いような個体や希少な個体も発見することができましたが、基本は園地周辺で普通に見られた植物たちです。できるだけ個性的に撮ろうと努力しましたので・・・。


暑さの中で


【カマキリ】
今日も収穫なしか、と思いながら帰路に着こうとしたところ、桜の枝からこちらを見ている、一匹の大きなカマキリと目が合いました。あまりの嬉しさに「ありがとう」と声を掛けると、「ん、もう~」と甘えたような表情を見せてくれました。かわいらしいですね。


【マイコアカネ】
台風後の湿地に足を向けると、水位もかなり元に戻り、トンボや草花にも活気が感じられるようになっていました。静かに先へ進んで行くと、見慣れない赤トンボが一匹休んでいたので、思わずシャッターを切りました。小さくてとてもきれいです。調べてみるとマイコアカネのオスでしたが、全国的にもとても貴重なトンボらしく、今日はこの子に出会えただけで満足です!
 

【ナナフシ】
最後の最後にやっとのことでナナフシに出会うことができました。ナナフシ目に属する昆虫で、「七」は「たくさん」という程度の意味だそうです。ナナフシモドキとは触角の長さで見分けます。少し涼しくなってきたので、顔を見せてくれたのかもしれません。緑色の目が魅力的です。
 
【メドハギ】
メドハギは、道端や池の土手など日当たりの良いところに生えるハギ属の多年草です。土壌の改良や緑肥としても利用されることがあり、環境保全にも役立っているそうです。古くは、葉や茎を染料として、近年では健康茶に使うことでも知られています(全体を天日干しさせて、お茶のようにして飲むそうです)。本当に小さな花ですが、その持っている力はすごいですね。


【ノアズキ】
かなり山深いところを歩いていると、枝に巻き付くように黄色い花を付けたマメ科の植物が少しだけ顔を見せてくれました。ノアズキはつる性の多年草で、本州から九州の日当たりのよいところに生えます。よく似た仲間にヤブツルアズキがありますが、葉の形状の違いなどから、この子は希少性の高いノアズキだと分かりました。関東地方では相当希少な植物になっています。


【コマツナギ】
この酷暑の中で力強く咲いているのはコマツナギです。本州、四国及び九州に分布するマメ科の落葉低木で、暑さに負けず咲き誇っています。園地では、狭い範囲にのみ群生しており希少です。


【ヤブマオ】
蒸し暑い林の中を歩いていると、大きなヤブマオがかわいい花を満開に付けていました。イラクサ目イラクサ科の多年草で、山地から人里まで幅広い環境で生育します。食指を伸ばしたような花を見るのは初めてで、ちょっと感動しました。


【ヘクソカズラ】
ヘクソカズラは、アカネ科へクソカズラ属のつる性多年草で、葉や茎など全草を傷つけると、悪臭を放つことからその名が付きました。日本最古の和歌集である「万葉集」の中にも「糞葛(くそかずら)」の名で詠まれているそうで、美しいものには・・・です。やぶや道端などに生える雑草ですが、かわいい花を咲かせます。


【センニンソウ】
あちこちに目をやると、センニンソウの花が元気に咲いています。キンポウゲ科の植物で、茎や葉の切断面から出る汁や濡れた花粉に触れると炎症を起こす有毒植物です。見られたときには、触れずに観察しましょう。


【ミクリ】
園地に近い小さな川に、数個体のミクリの花が隠れるように咲いていました。湖沼、水路などに群生する多年草の抽水植物で、草丈は2メートルにもなるそうです。三重県では、ほとんど絶滅に近い状態にあり、個体を確認できたことや、満開の花を見ることができたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。来年も見ることができるかな~。


【アキノタムラソウ】
アキノタムラソウは、茎の上部で分枝し、先端に10~25センチほどの淡紫色の花を付けます。花びらの表面に柔毛
が生えているのが特徴です。山間部で出会いましたが、数個体しか見ることができませんでした。地域によっては希少な植物です。


【クサネム】
湿地に足を運ぶと、クサネムの小さな花が咲いていました。稲作につきものの水田雑草で、稲よりも成長する大型雑草なため、収穫時に種子の混入により米の品質低下をもたらす雑草として嫌われています。ただし、地域によっては希少植物に指定されるなど、複雑な立場にたたされている植物です。

終わりに

いかがでしたか。
今回は、初秋とはいえ、まだまだ夏の暑さを引きづっての撮影となりました。本当に動物や昆虫の姿を見ることが難しく、植物も後半に雨が降るまではぐったりした姿しか見ることができませんでした。昨今、日本の四季が曖昧になってきているのが寂しい限りです。そんな中でも、季節を感じて元気に生きている動植物たちに声援を送りたいと思います。
自然を大切に!
四季を大切に!


【アブラゼミ】