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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

伊勢志摩国立公園での出前授業 in 2022

2022年09月22日
志摩 小林祐介
みなさん、はじめまして。
4月から伊勢志摩国立公園管理事務所に着任しました、アクティブレンジャーの小林祐介です。
東北地方は岩手県から、この伊勢志摩へやってきました。
気候も風景も、言葉や文化も異なるため、少し戸惑いはありますが、毎日新鮮な気持ちで業務にあたっています。
アクティブレンジャー日記では、日々の業務を通して、わたしが見聞きし、体感した伊勢志摩国立公園について綴っていきたいと考えています。
どうぞよろしくお願いいたします。
さて、伊勢志摩国立公園管理事務所では、伊勢志摩国立公園や自然環境への理解、また環境保全の啓発を目的として、アクティブレンジャーが近隣の学校へ出前授業を行っています。
今年度に予定していた出前授業がひととおり終了したので、この場を借りて振り返ってみようと思います。
出前授業は、5月の下旬から始まりました。
志摩市の代々木高等学校の生徒のみなさんに、海岸の環境について出前授業を行いました。
海岸を見渡してみると、実にさまざまなものが流れ着いています。
まずは、ビンゴゲームを行いながら、それらの漂着物を分類してもらいました。
漂着物をレジャーシートに集めている写真
集めた漂着物を確認!
漂着物をビニールシートの上に分けていきます。
流木や海藻などの自然の漂着物が多いなか、空き缶やペットボトル、お菓子の袋や洗剤の容器など、わたしたちの生活から出たごみも目立ちました。
このことから、わたしたちの生活と海がつながっているのだとわかります。
漂着するごみを減らすためには、わたしたちの生活から出るごみを減らしたり、ごみを捨てるときのきまりを守ったりしていくことが大切なのです。
そんな漂着物の多い海岸であっても、枝葉を伸ばし、花を咲かせている浜辺の植物たち。その特徴について、高校生のみなさんに実際に触れてもらうことにしました。
まずは葉を観察します。ワックスをかけたようにつやつやしていて、厚みのある感じ。とげがあるものもありました。
続いて、海浜植物を掘り上げて根の観察を行います。結構深くまで掘らないといけないようです。
コウボウムギの根を掘って観察している写真
コウボウムギ、根を傷つけないように……
海浜植物は、厚い葉で強い日差しや潮風から身を守り、深く、または広く根を張って、砂地でも風に飛ばされないようにしています。
長い時間をかけて獲得してきた生き物の知恵、さまざまな環境に適応していくしなやかさに、わたしたちも教えられることがあるように感じます。
夏も近くなり、木々の緑も目に鮮やかです。
6月から7月にかけて、伊勢市内の小学生のみなさんを対象に、水生生物の調査を行いました。
生徒にたも網の使い方を説明している写真
みなさん、たも網の使い方を真剣に聞いています
さあ、お待ちかねの生き物採集と観察です。どんな生き物が見つかるかな?
虫かごの中のサワガニの写真
サワガニがたくさん捕れた!
バケツから出ようとするアカハライモリの写真
アカハライモリは逃走準備中
採集した生き物を確認している写真
捕まえた生き物から、水のきれいさを調べます
川に暮らす生き物の中でも、水のきれいさを教えてくれる生き物(指標生物)がいます。
この川では、「きれいな水」に暮らす生き物であるサワガニやヘビトンボの幼虫が多く観察できたので、水質がよいことがわかりました。
調査した伊勢市横輪町の川は、伊勢神宮の背後にある豊かな森や山から流れ出たものです。
そうした豊かな森や山から流れ出た川だからこそ、たくさんの生き物を育む環境があるのですね。
残暑も幾分かやわらいだころ、志摩市の志摩高等学校の生徒さんが、フィールドワークで横山にやってきました。
横山には、英虞湾を一望できる展望台があり、周囲には里山の自然が残っています。
しかしこの日はあいにくの雨。そこで、横山ビジターセンターの展示をじっくり見学することにしました。
ちなみに、横山ビジターセンターは今年の3月にリニューアルしています。
4面スクリーンVRシアタールームである「おとしゃい伊勢志摩」をはじめ、館内も一新。ぜひご来館ください。
生徒がビジターセンターを見学している写真
伊勢志摩国立公園の説明を、興味深そうに聞いてくれました
雨も小降りになってきたので、横山展望台へ向かいます。
横山展望台から雨の英虞湾を眺めている写真
改めて英虞湾の景色を眺める生徒のみなさん
横山には、環境省の整備したもので5つの展望スペースがあり、その場所ごとに、見える景色や迫力も違ってきます。
生徒のみなさんはいくつか展望スペースをめぐり、志摩市の様子を空から確認していました。
その瞳には、伊勢志摩地域がどのように映っているのでしょうか。

ビジターセンターに戻ってきて、生徒のみなさんから事前にいただいていた質問に回答しました。
質問の内容から、みなさんがどのようなことに興味や関心があるのかがわかります。
そういった興味・関心を今後にどう活かしていくかは、アクティブレンジャーの手腕にかかっていると感じています。
各学校の要望に沿いつつ、生徒のみなさんに伊勢志摩国立公園の持つ様々な側面について知ってもらったり、考えを深めてもらったりするためには、アクティブレンジャー自身が、伊勢志摩国立公園についての見識を十分深めておかなければならないと痛感しています。
着任してからもう半年。残りの半年で、もっと伊勢志摩地域を歩き、見聞きし、体感し、わたしなりの伝えられるものを増やしていきたいです。