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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

しめ飾り

2021年01月07日
志摩 小川美代子

 伊勢志摩国立公園パークボランティアでは、自然保護に活用するための調査や研究活動を行っています。

 12月には、伊勢志摩地域の「しめ飾り」調査の一環で、しめ飾り作りを行いました。

 しめ飾りは神域や善良な人の家を魔物に示し、近づかないように知らせる印です。

 材料ですが、わら、ダイダイ、アセビ、ユズリハ、ヒイラギ、ウラジロ、シデ(半紙で作った紙の飾り)などです。志摩地方の米の収穫は8月が中心。しめ飾り作りにわらが必要だと気づいたときには米の収穫が終わっていて、確保できるかどうか心配でしたが、パークボランティアが集めてきてくださいました。他にも、ヒイラギやダイダイなども提供していただきました。アセビ、ユズリハ、ウラジロは確認しながら収集したり、シデを作ったりしました。

 伊勢志摩地域のしめ飾りは、横綱と垂れの大きく二つに分かれます。わらをきれいに整えて、横綱として50本程を3束、垂れとして30本程を5束作ります。横綱は3束をねじりながら編み込み、垂れはその横綱につけていくという行程になります。

<横綱>            <垂れ>          <完成>

  

 私は、力まかせに作業をして形がいびつになってしまいましたが、パークボランティアは作り慣れていて、短時間にきれいなしめ縄ができていました。ここまでにおよそ90分、思ったよりも時間がかかりました。

 次は飾り付けです。

 それぞれの飾りにも、意味があることが分かりました。

わら・・・日本人の主食である米に感謝し、豊作を願います。

ダイダイ・・・ユズリハとあわせて「代々ゆずる」。子孫繁栄を願います。

アセビ・・・毒のある葉で魔物をよせつけないようにします。

ウラジロ・・・葉の裏が白いことから、清い心を表します。

ユズリハ・・・新葉が成長してから、旧葉が落ちるので、スムーズな世代交替を祈ります。

ヒイラギ・・・魔物が入らないように葉の鋭いとげで退散させます。

シデ・・・神域であることを魔物に知らせます。

木札・・・家内安全や商売繁盛などを祈ってつける守り札です。

 飾りは、飾る順番が特に決まっているようではありませんが、飾る位置はおおむね決まっていました。ユズリハ、ウラジロ、木札は中央の垂れに、アセビ、ヒイラギは左右の端の垂れに、シデは間の2・4番の垂れに、ダイダイは横綱の太い方から1・2番目の垂れの間、横綱につけます。

 志摩地域は木札に「笑門」が記されているものが多いですが、伊勢鳥羽地域では「蘇民将来子孫家門(そみんしょうらいしそんかもん)」(旅の途中の須佐之男命(すさのおのみこと)に宿を貸して、もてなした蘇民将来の子孫である)と記されたものが多いです。

<ウラジロ>          <ユズリハ(ヒメユズリハ)>   <アセビ>

  

<ヒイラギ>         <木札・蘇民将来子孫家門>

 

 出来上がったしめ飾りは、端がふぞろいだったり、ほつれていたりなどいつも買ってくる既製品とは違っていますが、自分で作ると愛着が生まれるものです。最後に下手な字で木札に「笑門」を書いて仕上げ、自宅の玄関に飾りました。

<完成したしめ飾り>

 年が明けて3日、玄関の戸を開けたら、ヒイラギが落ちていました。「魔物が入り込む・・・」とあわてながら「このしめ飾りで一年間大丈夫だろうか。きちんと玄関についているだろうか。」と不安になりました。実は、この伊勢志摩地域は一年中しめ飾りが玄関などで飾られている風習があり、私の家でもずっとそうしてきました。この先、嵐や台風が来るたび、しめ飾りは大丈夫かなと悩む年になりそうです。