アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
ライチョウ飼育卵の野生復帰
2020年06月15日中部山岳国立公園管理事務所の関根です。
前回までの日記で、ライチョウの生息域内保全としての南アルプス北岳周辺での取り組みや、中央アルプスにおける野生復帰や移植について書かせていただきました。
今回は、生息域外保全の取り組みを紹介させていただこうと思います。
生息域外保全は、急激に個体数が減少してしまうことを考慮し、野生個体が存在するうちに飼育・繁殖の技術や科学的な分析を行うことを目的に、ライチョウの場合は公益財団法人日本動物園水族館協会の協力で行われています。
平成27、28年度に乗鞍岳で採卵し、その子どもたちが現在6つの動物園で飼育されています。
厳しい環境で生き抜くために動物にとっては消化しづらい物質や、ともすれば毒となるような物質を含んでいる高山植物を主食としているライチョウは、お腹の中に植物に含まれる物質を分解するための腸内細菌を飼っています。ライチョウの雛は、お母さんのフンを食べることでこれらの腸内細菌を受け取っていることが最近明らかになり、飼育個体についてもこの食糞や腸内細菌を活かした飼育技術の開発に取り組んでいます。
人間でも"腸活"がクローズアップされていますが、生きものっておもしろいですね!
飼育下で孵化した雛 H28.7.1撮影(大町山岳博物館提供)
今年度は、中央アルプスのメスが産んだ無精卵と動物園での飼育卵を入れ替え、野生復帰させる予定です。
飼育卵は6/5に中央アルプスの山麓に運ばれ、6/7に8卵の入れ替えが行われました。
卵の入れ替え準備の様子
卵を入れ替えた後の様子
無事に孵化してかわいい雛の姿を皆さんにお届けできることを願うばかりです。
野生下で生きていくので全ての雛が成鳥になれるとは限りませんが、孵化後はケージ保護を行い生存率を向上させる予定です。
この卵の入れ替え作業の前に、巣探しが行われました。これは簡単な事ではありません。
巣探しを通してライチョウをもっと知っていただけると思いますので、次回の日記で紹介したいと思います!
6月上旬の中央アルプス駒ケ岳の雪解け状況
現地の情報も随時アクティブ・レンジャー日記にUPさせていただければと思います。
詳しい資料は、信越自然環境事務所HP内トピックス、ライチョウ保護増殖事業等についてに掲載しています。
また、癒しのライチョウフォトアルバムもぜひどうぞ!
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