アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
【参加報告】第7回ごみと水を考える集い
2018年01月30日ここのところ俄然、あつく盛り上がる(?)藤前干潟から、こんにちは。
アクティブレンジャーの西部です。
大盛況のうちに終了した藤前干潟サイエンスカフェ(1/20実施)の余韻も冷めやらぬ名古屋自然保護官事務所ですが、実はその次の日には、藤前干潟にとってもとても大切な問題「ごみ」を考える集いが催され、我々も参加してきたので、その模様を紹介したいと思います。
参加してきたのは、「第7回ごみと水を考える集い」
藤前干潟では毎年、春と秋にクリーン大作戦という行政・ゴミの専門家・自然保護団体・地域住民・学生ボランティアの方が中心となって行われる大きな清掃活動イベントがあります。昨年度の秋は残念ながら台風で中止となってしまいましたが、毎回1000人を超える多くの人たちがボランティアで藤前干潟にやってきて、干潟やヨシ原のゴミを拾う姿に、私たちも元気をもらっています。
クリーン大作戦の後には、毎回、私たち名古屋自然保護官事務所のメンバーが講師として呼ばれている干潟の観察会も行われています。清掃した場所が生きものにとってどんな場所なのかを知ることが出来ます。
このイベントを実施する母体となっているのが、藤前干潟クリーン大作戦実行委員会なのですが、このような活動と同じように伊勢・三河湾流域で清掃活動をはじめ、自然保護や地域の活性化のため様々な活動を行っている団体や行政が集まり開催されているのが、「ごみと水を考える集い」です。
藤前干潟に流れ着いたゴミ(2017年9月29日撮影)
残念ながら、これが藤前干潟の現状でもあります。
干潟には、大きなゴミから小さなゴミ(自然由来のゴミから人が作り出したマイクロプラスチックなど)まで、様々なものが流れ着きます。
では、藤前干潟でキャッチできなかったゴミはどこまで行くのでしょうか。
皆さんは考えたことがありますか?
流れに乗って、また藤前干潟に戻って来るゴミもあります。
伊勢湾・三河湾では、国土交通省の海洋環境整備船「白龍」が定期的に巡回しているので、回収されるゴミもたくさんあります。
それでもすり抜けて流れ出ていくゴミもあるでしょう。
三重県鳥羽市、伊勢志摩国立公園内に答志島という小さな島があります。
藤前干潟が伊勢湾の最奥部なら、ここ答志島は伊勢湾の玄関口。湾口に当たるところに、伊勢湾の口をふさぐようにして位置するのが答志島です。
三重県答志島での清掃活動の様子(22世紀奈佐の浜プロジェクト:2017年10月8日撮影)
台風21号襲来後の奈佐の浜
この写真は三重県の調査で四日市大学の千葉先生が調査をされたものですが、その調査結果について今回の集いでも報告がありました。
美しい海と海岸線が特徴的な伊勢志摩国立公園ですが、美しい浜もこうして打ち上げられたゴミに埋もれてしまうこともあるのです。
外洋へと流れ出ていく海水に乗って、様々なゴミがここ答志島でもキャッチされます。
答志島でキャッチできなかったゴミは?
もうお分かりですね。
外洋へ、はるかかなた海のどこかへ運ばれていくのです。
中には、いずれ自然に帰るゴミもあるのですが、プラスチックのゴミたちは細かく小さくなりながら海の中を漂い続けます。
そうして、いつしか魚の食べ物としてお腹におさまり、鳥たちの食べ物としてお腹におさまり、やがて私たちはそうした生き物たちのお腹の中に残ったこれらのゴミを目にして、驚くのです。
最近では、南極でも小さなプラスチックのゴミが発見されました。
海中に漂うゴミ、それは目に見えるゴミというだけではなく、実は水質を汚染するような目に見えないゴミも吐き出しているかもしれません。知らず知らずのうちに、水を汚しているのかも・・・
最近では、多くの河川が以前よりもキレイになったと言われますが、水をキレイにする、とはどういうことなのか?ゴミの問題と一緒に考えていかなければいけませんね。
さて、本題からずれてしまいましたが、今回の集いは日々こうしたことを考え、活動する人々の思いが発端となって始まっているものだということなのです。
今年の集いでは、記念報告として庄内川で活動しておられる、NPO法人矢田・庄内川をきれいにする会の間野(あいの)さんから庄内川のアユの遡上についてお話を聞きました。また、中部大学上野研究室の皆さんからはヨシの衰退要因調査の発表や、イオンチアーズ名古屋茶屋で活動する小学生の皆さんによる清掃活動などの報告、名古屋市立名古屋商業高校有志の皆さんによるヨシを使った商品開発といった様々な活動報告がありました。先ほど写真に出した答志島の海岸についても、昨年度は海岸清掃のあとに台風21号が襲来し、せっかくキレイになった海岸が一夜にしてゴミの山となってしまったという三重県の調査報告(四日市大学千葉先生が調査)もありました。
ゴミはどこからやって来るのか?どうしたらこれらを無くすことが出来るのか?
こうした問題を解決するために、清掃活動だけではなく、ヨシを利用した商品を作り販売してはどうか?研究者としてそれに貢献できないか?一般市民としてボランティアで普及啓発が出来ないか?などなど、それぞれの立場でこの大きな問題に取り組む姿がここにありました。人が出したゴミは人が回収することが出来る!そう信じて、それをずっと考え続けて来た人たちの姿は、本当に印象的で、力強いものでした。
私たち名古屋自然保護官事務所でも、こうしたことを伝え、知ってもらい、考えてもらえるように、活動していきたいと思いました。
皆さまもぜひ、自分たちの生活の中で出ているゴミが一体、この先どこへどんな風に漂っていくのか、考えてみて欲しいなぁと思います。
さて、今日はすこーしばかり、耳の痛いお話しでしたが、
藤前干潟の生きものたちは、そんな環境にもめげずに頑張って生きています。
NHK「さわやか自然百景」では、干潟のシギチドリ類やダイナミックな動きを見せるミサゴやハヤブサなどの猛禽類も紹介されていましたね!
(2017年2月に撮影したミサゴ:藤前干潟では1年中見られます。)
藤前干潟情報が続々と登場しており、皆さま、藤前干潟に来てみたい!と思われた方も多いのではないでしょうか(期待をこめて!)?
そんな方は、ぜひ、藤前活動センター、稲永ビジターセンターへお越しください。
センタースタッフが藤前干潟について、いろいろ教えてくれますよ。
http://chubu.env.go.jp/wildlife/fujimae/access/index.html
稲永公園のコゲラ(2018年1月16日撮影)
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