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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

秋の干潟

2017年10月10日
国指定藤前干潟鳥獣保護区 西部理恵

だんだんと半袖では寒くてつらい季節になってきましたね。

藤前干潟からこんにちは。

アクティブ・レンジャーの西部です。

この間、潮の良い日に保護区の巡視をしながら秋の藤前干潟の生きものの様子を見てきました。

この時期は、渡去するシギチドリ類も多いですが、まだまだ残留組も残っていますし、代わって飛来するカモ類もいるので、なんだか賑やかな様子。先日はヨッシ―こと吉塚ARが干潟の人気者トビハゼのことを紹介していましたが、まだ寒さが本格的ではないので、カニやトビハゼといった干潟の小さな生きものたちも元気に動き回っていて、干潟の観察が楽しい季節です。

干潟に飛来したハマシギ

<ちょうど干潟に飛んできたハマシギの群れ>

その日は朝、早めに巡視に出ていくと、途中で鳥獣保護区管理員さんにバッタリ。天気も良く、潮も良い日は、皆干潟に集まります!

藤前干潟で活躍する鳥獣保護区管理員さんは5人いらっしゃるのですが、鳥獣の専門家として保護区を巡視していただいており、いろいろな情報を私たちに教えてくれる貴重な存在です。この日はシギチドリ類のほかカモ類も飛来し干潟が賑やかだという情報をさっそく入手しました。

途中、台風で一部ダメージを受けていたヨシ原の状況も確認しましたが、徐々に回復してきている模様。

しかし、河川の増水によって干潟に堆積していたゴミが増えました。そうした情報も定期的に鳥獣保護区管理員さんから報告されますが、やはり拾っても拾っても溜まります。現在、藤前干潟に溜まっているゴミは河川などから流れ着く漂着ゴミがほとんどですが、中には不法投棄されたゴミもあります。

海岸漂着ゴミ

<台風で倒れたヨシの上に枯れたヨシや流木などの自然ゴミとプラスチック製品などの人工ゴミが堆積する>

ゴミ問題については、語りだすと長くなってしまうのでまた別の機会に。

ちなみに、1021(土)には、毎年春と秋に開催されている「藤前干潟クリーン大作戦」というボランティアイベントがあります。市民団体が呼びかけ、行政、企業、自然保護団体や地元住民の方々が協力して行っている清掃活動です。興味のある方は、ぜひご参加ください。

話が脱線してしまいましたが、私たちは巡視の際に、渡り鳥など生きものの情報だけでなく、こうしたゴミの状況や鳥獣保護区であることを示す制札などが破損していないか、といった現場の状況も把握し関係者の間でで情報共有しています。

さて、ゴミの堆積状況を見ると気分も沈んでしまうのですが、この日はいろんな鳥が干潟に入って賑やかだ、ということでしたので、気をとりなおして先に進みます。ここからは、この日見られた藤前干潟の生きもの風景を一気にご紹介していきましょう。

オグロシギ

<干潟の遠いところにシギチを発見!ピンボケですが、手前側の4羽はオグロシギ。私にとってはオオソリハシシギとの見分けが・・・難しい!>

オナガガモの飛翔

<オナガガモ:まだ数は少ないですが、ピンと伸びた尾が特徴。首が細長く、個人的には泳いでいる姿がとても優雅で好きなカモです。>

ハシビロガモの飛翔

<ハシビロガモ:20羽ぐらいが群れていました。まだエクリプスの個体が多くて雄雌の区別が難しい>

※エクリプス:エクリプスとは、主に繁殖期後半に風切が一斉に抜けて飛べなくなる時期に、外敵から身を守るためにオスがメスと同じような地味な羽色になることを言う。日本に飛来する頃には次の繁殖に向けて徐々に繁殖羽へと変化している途中であることが多く、まだ地味な羽の個体が多い。

トウネンとヤマトオサガニ

<トウネンとヤマトオサガニ:こうしてみるとトウネンって小さな鳥なんですね。羽繕いに一生懸命でした>

キリアイ2羽

<この写真だけ次の日に撮影した写真:藤前干潟では数が多くないので見られたらラッキーなキリアイ。トウネンと良く似た姿をしていて、トウネンの群れと一緒にいると私にはさっぱり見つけることが出来ません・・・>

ヤマトオサガニ

<甲羅干し中のヤマトオサガニ。背は泥がカラカラに乾いて真っ白。干潟に同化していますが、目が慣れてくると沢山のヤマトオサガニを見つけることが出来ます。>

干潟からヨシ原にかけて連続した自然環境のある場所では、ヤマトオサガニだけでなく、チゴガニやコメツキガニ、アシハラガニやクロベンケイガニといったたくさんのカニが生息しています。

先日(9月23日)は、稲永ビジターセンターで「カニパラダイスへレッツゴー!」というなんとも楽しい観察会もあって、まだまだ元気に動き回るカニたちをみんなで観察して楽しみました。

2017年9月23日カニパラダイスへレッツゴー

<9月23日開催の観察会の様子:まずは堤防の上から静かにカニの行動観察>

藤前干潟では、こんな風に漂着ゴミにも負けずに今日もたくさんの生きものが暮らしています。

けれど、ゴミがどんどん増え続けると、いつか彼らの生きていく場所を奪ってしまうことになるかもしれません。

藤前干潟のレンジャーの口癖、「ゴミを出すのも人間、拾うのも人間」。

動植物はゴミを拾うということは出来ないので、人間が拾わない限り無くなることはありません。いつかは私たちに跳ね返っても来る問題でもあるので、日ごろからゴミを減らすなどの心がけをしていきたいですね。

というわけで、先ほども少し書きましたが、近々、藤前干潟では大規模なゴミ拾いボランティア活動が行われます。我々自然保護官事務所のメンバーも参加し、ゴミ拾いの後には干潟観察会を行います。興味のある方は、ぜひご参加ください。

■藤前干潟で行われる今後のイベント

<藤前干潟の清掃活動「藤前干潟クリーン大作戦」>

 日 時:平成29年10月21日(土)

 場 所:愛知県名古屋市港区

申込み:当日受付

 問合せ:藤前干潟クリーン大作戦実行委員会事務局

TEL:090-8421-1037

     MAIL:suzuki.1@re.commufa.jp

詳 細:http://cleanupfujimae.jimdo.com/

 主 催:藤前干潟クリーン大作戦実行委員会

<藤前干潟 藤前活動センターと稲永ビジターセンターの企画展>

 藤前活動センターと稲永ビジターセンターでは、企画展を実施中です。

 藤前干潟の不思議な生きものたちのことや、生きものたちを苦しめるゴミの話など、

 企画展をとおして、今の藤前干潟を知ることが出来る展示になっています。

★ 藤前活動センター ★

「ガタモン・ワールドにようこそ!~干潟の小さな生きものが果たす大きな役割~」

 藤前干潟に生息する大きさ数ミリの生きものたち「ガタモン」。

 小さな生きものたちの世界をのぞいてみよう!

 期 間:平成29年7月30日(日)~12月17日(日) 9:00~16:30

     (毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、第三水曜日は休館)

 場 所:藤前活動センター2階(名古屋市港区藤前2-202)

 入館料:無料

問合せ:藤前活動センター

     TEL:052-309-7260、FAX:052-309-7261

★ 稲永ビジターセンター ★

「ゴミファイターになろう!」

 ゴミ埋め立てから保全された干潟という歴史を持つ藤前干潟。

 しかし、生活の中でどうしても出てしまうゴミを減らすにはどうする?

 すごろくやみんなのアイディア募集など、楽しみながら学ぼう!

 期 間:平成29年8月1日(火)~10月31日(火) 9:00~16:30

     (毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、第三水曜日は休館)

 場 所:稲永ビジターセンター1階(名古屋市港区野跡4-11-2)

 入館料:無料

問合せ:稲永ビジターセンター

     TEL:052-389-5821、FAX:052-389-5822