アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
干潟のモニタリング調査を実施しました。
2015年03月02日藤前干潟は、渡り鳥の飛来地として有名であり、
これまで鳥類に関する調査は数多く実施されています。
しかし、鳥類の餌となるゴカイやカニなど干潟に住む
生物について調査した事例は少なく、有用なデータが
ほとんど無い状況です。
そこで名古屋自然保護官事務所では、約3年前より
毎月1回、藤前干潟の2箇所で底生生物(カニやゴカイ、
貝類など)の生息状況を把握するためにモニタリング調査を
実施しています。庄内川河口左岸のヨシ原内及び藤前活動
センター前の干潟に複数の定点を設けて、干潟の泥の中に
どんな生きものがどれだけ住んでいるか調べています。
また、各定点の泥の状態も同時に調べて底生生物と生息環境の
関係も探っています。
【調査を実施している干潟】
2月に実施した庄内川河口左岸のヨシ原内の調査では、
愛知大学の先生と学生さんにも協力してもらいました。
今の季節は生物の出現個体数が少なく、春や秋に比べて寂しい感じです。
【泥の中から生きものを選別する愛知大学の学生さん】
この日は地盤高が高い地点で30×30cm方形の枠内に
カワザンショウガイと呼ばれる小型の巻貝の仲間が
約240個体も確認されました。この巻貝の体の大きさは
5mm以下と非常に小型で、毎年この時期にはたくさん見られます。
シジミやカニの仲間が少なくなる冬季に、彼らが群を抜いて
多く出現する原因が分からないので、ご存じの方は名古屋
自然保護官事務所まで是非お知らせ下さい。
【たくさん確認されたカワザンショウガイの仲間】
これまでの3ヶ年分の調査結果をまとめていると、底生生物の出現種や
個体数、季節変動等の傾向が徐々に明らかとなってきました。
底生生物の出現個体数と種数はともに、春季と秋季に多く、
夏季と冬季に減少する季節変動を示すことが分かりました。
この増減の要因は生息環境(泥の状態)と外気温が大きく
影響しているものと考えられました。
【これまでの調査で確認された生きもの】
【底生生物 出現個体数の季節変動】
今年は藤前干潟を訪れるハマシギの飛来数が特に少なく、
ゴカイやカニなどの餌が減少しているのではないかと不安視されています。
そのため、今後は鳥類の飛来数と底生生物の資源量を関連付けた調査を
していくことが望まれます。
今の季節は干潟で見つかる生きものは少ないですが、これから春に向けて
暖かくなってくると生きものは徐々に増えてくることでしょう。今の時期から
春の初めまでは、カモがたくさん見られる時期でもありますので、
是非藤前干潟に来て観察してみて下さい。