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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

藤前干潟鳥便り~夏の子育て~

2014年07月18日
名古屋
東海地方はまだ梅雨も明けていないのに
非常に暑い日が続いています。
藤前干潟では、ウミネコがたくさん見られる季節になってきました。

【ウミネコ(カモメの仲間)】
*藤前干潟には主に夏~秋に飛来

さて、春から夏は、多くの鳥にとって子育ての季節です。
藤前干潟に訪れるカモやシギ・チドリなどの渡り鳥の中には、
シベリアやアラスカなどの遠い北の地で子育てを行うものがいますが、
藤前干潟周辺で子育てをする鳥もいます。
今日は、この春から夏に藤前干潟周辺で子育てをする鳥を紹介します。


【コアジサシ(カモメの仲間)】*夏鳥
まずは、藤前干潟の夏の顔であるコアジサシを紹介します。
黒いマスクと、魚を捕るために水面にダイブする姿が
凛々しいと人気のある鳥です。
近年、繁殖地が減っており、コアジサシは環境省のレッドリストでは絶滅危惧種Ⅱ類(VU)に、
さらには国際希少種に指定されています。
昨年度末には、環境省から「コアジサシ繁殖地の保全・配慮指針」
発表されてもいます。

本来、コアジサシは河原や海辺の砂礫地や砂浜に巣を作り(営巣)します。
そのため、卵や雛が砂利地に溶け込むような色合いをしています。
しかし、現在は開発などによって自然の砂礫地や砂浜が少なくなり、
コアジサシは工事前の砂利地の空き地などに営巣するようになりました。



その結果、最近では、人の生活とコアジサシの子育てが
軋轢を生じる場面が増えています。
藤前干潟周辺でも、今まで営巣地としていた砂利地が
駐車場になってしまうなどして、コアジサシが営巣できず、
藤前干潟への飛来数が減っていると言われており、
保全の取り組みを求める声が高まっています。


【ササゴイ(サギの仲間)】*夏鳥
続いて紹介するササゴイも、コアジサシ同様に
夏に藤前干潟に飛来して、子育てを行う鳥です。

コアジサシが砂利地に営巣するのに対して、
ササゴイは木の上に巣を作ります。



今年も藤前干潟周辺で子育てを行うササゴイが確認されました。
既に雛は巣立ったようですが、
現在も干潟が出ると、魚を捕りにササゴイがやって来ることがあるので、
夏に藤前干潟に来た際は、干潟の縁の岩陰などを探してみてください。
首をすぼめてじっと魚を待ち伏せしているササゴイが
みつかるかもしれません。


【ケリ(チドリの仲間)】*留鳥
最後に、ケリを紹介します。
ケリは渡り鳥ではなく、一年中藤前干潟周辺で見られる鳥です。


このケリ、田んぼや干潟などの湿地で暮らしており、
巣を田んぼの中やあぜ道、畑に作ります。
巣に近づいた人が、親鳥に威嚇されている場面がよく見られます。
人の生活との距離がとても近い鳥です。

ケリは現在、環境省のレッドリストでは、
生息状況を評価できるほどの情報がない情報不足(DD)という区分に指定されています。
田んぼや畑に当たり前にいた鳥が、知らないうちにいなくなっていた、
ということのないよう、詳しい調査が望まれている鳥でもあります。

今回紹介した、コアジサシ、ササゴイ、ケリは、
それぞれ異なった場所に巣を作りますが、
どれも思いの外私たちのすぐそばで子育てをしています。
鳥の生活が身近にあることをまずは知ってもらえると良いと思っています。