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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

園路の手入れ

2013年11月01日
上高地
豊かな自然を楽しんでいただく国立公園ですが、自然の森の中では、木々の光を求める生存競争が行われており、当然ながらその競争に敗れ、あるいは寿命を迎え枯れた木々が散在します。

それらは、樹体の支持能力が衰え、倒木や落枝の危険が生じます。そのため、上高地でも、園路周辺を中心に毎年シーズン中にも点検を行い、保護官や森林官の立ち会いのもと枯損木や危険木の処理を行います。






毎年、手入れしていてもやはり枯れ木は毎年発生してしまいます。
樹木の生存競争はそれなりに、熾烈なようです。


国立公園の中では樹木はとても大切にされています。ただ、そんな樹木でも危険木以外で問題になることもあります。上高地の護岸は、円筒形の金網に梓川の石を詰めた「蛇篭」と呼ばれる景観に配慮したものになっていますが、この上にヤナギなどの樹木が定着し成長してしまうと、本来の護岸としての機能を損なったり、せっかくの梓川の清流や穂高岳の景観が見えなくなってしまいます。このため、蛇篭の上では成長する前のヤナギや草を、地域の方々、パークボランティア、学生ボランティアと協働で刈り払っています。




今年は、暑さも一段落した初秋より、梓川の右岸(下流に向いて左右)を中心に作業をしています。この日はパークボランティアと一緒に活動しました。


始める前はうっそうとし、これと言う眼を引く景観とはなっていなかった護岸ですが、作業を進めると見違えたようにすっきりきれいになり、対岸にそびえる六百山や霞沢岳がいっそう輝き(は言い過ぎかもしれませんが)、距離が近くなったように感じます。




対岸の景色は見てのお楽しみで!


道行く方が次々と歩みを止め、カメラを構えたり、時に腰掛けてお弁当を広げたりしてくれているのをみると、作業してよかったな~と思います。





また、作業前はあまり目立たなかった木々にも注目が集まり、今年は豊作となっていたマユミの実を見つけて、よく名前を聞かれました。





さらには、「切った枝をゴミにするなら、かわいいからちょうだい」と言われる方も少なからずおられましたが、国立公園ではお持ち帰りいただく事は出来ない事をお伝えし、お断りさせていただきました。

余談ですが、混み合った草木の中で、作業をしていると、歩道から『サル? …あ、人か。』とか、『え!? 何かいる。…クマ?』など、姿は見えないけれど物音が…と多少驚かせてしまったようです。「作業中です。」とお声かけすると、『ちょっとドキっとしたよ。』と笑顔が返ってきました。

沢山のお客様とお話しながらの作業でしたが「さすが、上高地。 自然がキレイと楽しめるのも、こうやって手をいれてくれてるからだね。お疲れさん」と言ってもらえたときは、疲れなんてどこ吹く風なくらい、気持ちが爽やかになれました。

閉山まで2週間となってしまいましたが、来シーズンに向け作業を続けたいと思います。