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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

干潟の「黒いツブツブ」の正体は?

2013年03月15日
名古屋
 最近、藤前干潟は春に近づいて潮の干満の差が
大きくなってきました。干潮時には広大な干潟が広がり、
シギやチドリの仲間がエサを探して目まぐるしく動き回る
光景が観察できます。
 
 干潟の上では、まだ生き物の姿はほとんど見られませんが、
転石の下には、イシマキガイ等の巻き貝の仲間やコツブムシ、
ヨコエビの仲間がたくさん身を寄せ合って春を待っているようでした。



【干潟でエサを探す水鳥たち】



【転石の下に群がるコツブムシ類(写真左)と石の下に身を潜めるイシマキガイ(写真右)】

 干上がった干潟の表面をよく観察すると、何やら黒い小さな
ツブツブがたくさん散在していることに気づきます。それらは
干潟の上を非常にゆっくりと移動していたので、手に取って
よく観察すると、米粒くらいの小さな巻き貝でした。
 
 このツブツブの正体は、「カワザンショウガイ」という
小さな巻き貝の仲間です。米粒サイズでも立派な大人です。
藤前干潟には、このカワザンショウガイの仲間が数種類
生息することが知られています。それらは小粒で、よく似た
形状をしているので、どれも同じ種類に見えてしまいます。



【干潟の表面や転石の下に群がるカワザンショウガイ類】

 30×30cmの方形枠の中に、どれだけのカワザンショウガイが
生息しているのか、調べてみました。ピンセットを使って
一個一個拾い上げ、カウントしていきます。



【方形枠の中から取り出したカワザンショウガイ類】

 すると、干潟の陸に近い場所では約220個体(N/0.09㎡)が
確認され、水際ほど個体数が少なく、場所によって生息数が
異なることがわかりました。カワザンショウガイは、どうやら
水が苦手のようで、陸地に近いやや乾燥した干潟上でたくさん
見つかりました。

 彼らは干潟表面の有機物や微細藻類等を食べており、
干潟のお掃除屋さんとして働いています。体はとても小さいですが、
個体数が大変多いので干潟の浄化主体の一員として重要な役割を
担っているのではないかと思います。

 ぜひ、藤前干潟に足を運んで、カワザンショウガイを
探してみてはいかがでしょうか?