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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

稲永ヨシ原の1年

2013年02月19日
名古屋
稲永ビジターセンターから庄内川沿いに北(上流)へ向かって5分程度歩いた場所に、
ヨシという植物が群生する小さな干潟があります。
私たちはここを「稲永(いなえ)ヨシ原」と呼んでいます。

【稲永ヨシ原。コンクリートのスロープがあるのが特徴です。】

稲永ヨシ原は、国指定藤前干潟鳥獣保護区全体から見ると、
とても小さな面積の場所なのですが、
人と生き物の接点として非常に大事な場所となっています。

ここには、ヨシ原、砂干潟、泥干潟、転石、コンクリートの割れ目という多様な環境が
小規模ながらも集まっており、一度に多様な生き物を見ることができます。
生き物を探し、生き物によってすむ場所が違うことを見て学ぶことのできる
干潟の生き物の観察にはうってつけの場所です。

【子どもたちに大人気のカニもたくさんの種類が見られます。】

また、ここは、冬に訪れる多くのカモやカモメが休み、餌を採る場所となっています。
そして、これを見るためにカメラマンやバードウォッチングをする人が
たくさん訪れます。

【スロープで休むカモとカモメたち】

稲永ビジターセンターや市民団体などが、
稲永ヨシ原の生き物観察会や野鳥観察会、ヨシ刈りなどの
イベントを頻繁に行っている場所でもあります。
また、大学や市民団体によって生き物などの調査も行われています。

【稲永ヨシ原の生き物観察会】

さらに、ここは、堤防の形状から庄内川の水の流れがぶつかる場所となっているため
プラスチック製品などのごみが大量に漂着し、とどまる場所となってしまっています。
地元の方などによる清掃が行われ、維持されている場所でもあるのです。

【地元の方の清掃活動】

この約1年間、私たちはこの稲永ヨシ原の様子を記録してきました。
春に芽を出し、2mほどの長さまで成長した後、
穂を出して枯れるヨシとヨシ原の変化を追うことができました。

【稲永ヨシ原の1年】

今現在、ヨシは枯れており、稲永ヨシ原に棲むカニなどの生き物も影を潜めています。
一見とても寂しい景色が広がっていますが、
先週、泥の中から、小さなヨシの新しい芽が出ているのをみつけました。
3月も終わりになれば、ピンと上に伸びた若々しい緑色をした茎と葉が見られるはずです。

【長さ5cmほどのヨシの芽】

もうすぐ、稲永ヨシ原の生き物たちが活発に活動する季節がまた巡ってきます。
今年も子ども達が生き物をみつけ、喜ぶ声がたくさん聞けたら良いです。
今後もこの稲永ヨシ原を見ていきたいと思います。


 ~藤前干潟 ラムサール条約登録10周年スローガン~
   つなげよう藤前の環、広げよう未来へ。
    みんなで作る人と生きものの絆。