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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

【~伊勢湾の漂着ゴミを考える~ ①】★藤前干潟に押し寄せる漂着ゴミ

2012年09月10日
名古屋
 今週は、「伊勢湾の漂着ゴミを考える」というテーマで、名古屋自然保護官事務所と志摩自然保護官事務所が協力して連載日記を書きます(計3回)。初回は、藤前干潟における漂着ゴミの現状とゴミ清掃活動への取り組みについて名古屋事務所の上野が担当します。それでは、伊勢湾へのゴミ流出源の一つである藤前地区のゴミの様子はどうなっているのか見ていきましょう。
 藤前干潟の国指定鳥獣保護区内では、庄内川や新川などから流出したゴミが干潟やヨシ原、堤防に多量に漂着します。この漂着ゴミをよく見るとペットボトルや発砲スチロール、プラスティック片などの水に浮くタイプのゴミが数多く見られます。これらのゴミは藤前水域の景観を損なうだけでなく、生き物が誤って食べてしまう、釣り糸や針が体に引っかかるなど生物にも多大な影響を与えています。


【庄内川河口域のヨシ原(写真左)と消波ブロック(写真右)に押し寄せる大量の漂着ゴミ】


【ペットボトルやプラスティックゴミが目立つ】


【ゴミの被害者】

 藤前干潟では、干潟に散在するゴミを撤去する事業が行われている他に、藤前干潟に関わる市民団体や行政、企業などが一体となった「藤前干潟クリーン大作戦」が実施されています。この清掃活動は「ラムサール条約に恥じない藤前干潟にする」「子供達が安心して遊べる干潟や川を取り戻す」「流域全体のゴミや水のことを考えるネットワークを形成する」ことを目的に、2004年から毎年2回、春と秋に開催されています。今年度は10月27日(土)に開催される予定です。
 このように多くの人が藤前地区で一生懸命ゴミ清掃を行っても、都会に面しているために川の上流からゴミがたくさん流れてきて、数ヶ月も経てば再び同じ場所にゴミが漂着するのが現状です。しかし、ゴミ清掃活動を継続して行うことで、少しでも伊勢湾へのゴミ流出負荷を軽減することができます。



【今年の5月に行われたクリーン大作戦の様子】


【一日で集められたゴミ類】

 山、川、海はつながっており、漂着ゴミの問題は一地域だけで解決できる問題ではありません。地域によってゴミの量と種類、ゴミによる被害はそれぞれ異なっており、各地で清掃活動も盛んに行われております。伊勢湾流域から発生するゴミは年々増加傾向にあると言われており、風や海流の影響でその約半数が三重県の鳥羽市に打ち上げられているようです。
 藤前地区をはじめ、伊勢湾流域から流出したゴミは、しばらく漂流した後に、漁業が盛んに行われている三重県鳥羽市の離れ島である答志島に漂着し、流木などが漁網や生け簀などを破壊するなど多大な影響を与えているようです。
 9月8日には、この答志島奈佐の浜で伊勢湾流域である愛知県、岐阜県、三重県から多数の人が参加して海岸大清掃が実施され、伊勢湾流域の一員として藤前干潟のゴミ清掃活動を実施している団体も参加しました。
 それでは、答志島のある伊勢志摩国立公園を管轄する志摩自然保護官事務所のアクティブレンジャーにバトンを渡して奈佐の浜の清掃について紹介してもらうことにしましょう。