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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

南陽海岸堤防の土盛りに住んでいるのは?

2012年07月25日
名古屋
 藤前活動センター前の南陽海岸堤防には幅約1.5m、長さ約10mの土盛りが堤防階段を挟んで東西に2カ所存在します。この土盛りは藤前干潟協議会において議論され、少しでも生き物が住めるような環境を造成しようと堤防施工者が誰でも簡単にできる技術で環境創造したものです。土盛りは他の場所の堤防工事で掘削して出た土を使用しており、完成した南陽堤防の傾斜部分に置かれました。この土盛りが作られてから約1.5年経ちますが、大雨や台風が通り過ぎてもその形を維持したまま存在し、現在では草が覆い茂り殺風景な堤防の一部が青々としてオアシスのようになっています。 



【南陽海岸堤防に造成された土盛りの様子】

 この土盛りを良く観察してみると誰かの巣穴や草の動きがあり、「キキュッ!」という鳴き声も聞こえてきました。どうやらここにはたくさんの生き物たちが暮らしているようです。あちらこちらに空いている巣穴がどうしても気になったので穴の中を枝でやさしく刺激し、お邪魔してみると穴の中から毛むくじゃらの逞しい足が数本出てきました。しばらくすると体全体を現したので確認すると赤い体と爪が特徴のベンケイガニでした。他の巣穴には黒っぽいクロベンケイガニが暮らしていました。直径1~3cm程度の穴は全てベンケイガニの巣穴であることが分かり、いずれも甲幅2cmほどの小型個体でした。堤防の完成により、内地と海が遮断されてしまい、普段海に近い内陸に住んでいて海に放卵する陸生カニたちは困っていましたが、この土盛りを利用することで険しい堤防を乗り越えなくても海にすぐ出ることができるようになりました。


【ベンケイガニ類の巣穴】



【巣穴から出てきたベンケイガニ】
 
 この土盛りにはカニの他にもバッタやコオロギ、フナムシ、ゲジゲジ、ツチガエル等がこれまでに見つかっているので、今後も新たな生き物が住み着くことでしょう。