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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

ヨシ原の変遷

2012年06月15日
名古屋
 稲永公園前の永徳スリップ周辺には小規模なヨシ群落が存在します。この場所は現在、写真のように堤防護岸できれいに整備されていますが、以前は良好なヨシ群落が堤防沿いに広がる場所でした。護岸工事が始まってから完成までの期間、取り残された小さなヨシ群落は少しずつその姿を変えており、近年はヨシがパッチ状に散在するようになりました。また、岸近くのヨシ原の根がむき出しになっている場所や、土砂やゴミが堆積して陸地化が進行し、陸生植物が混生する場所も見られます。さらに、ヨシ原の前に広がる干潟の底質も以前に比べてやや堅くなり、底生生物の分布も変化しています。地元の人々によれば、これらの環境変動は護岸工事が始まった頃から見られているので、もしかするとこの影響があるのでは?というお話でした。


【パッチ状に生育するヨシ原(黄線部分)】

 工事によって潮流が変化することで細かい粒子の泥が沖に流され、結果的に干潟が粗粒化したのかもしれません。また、この底質変化に伴ってヨシの分布が不連続となり、底生生物の生息分布も同時に変化したのではないかと考えられます。



【陸地化が進行するヨシ原】



【ヨシの根元にゴミが堆積している様子】

 岸際のヨシ原は大潮満潮時であっても冠水することは無く、常に陸地となっていること、さらにヨシ原内に漂着した流木やゴミ類があまり移動せずその場に留まって存在することから、台風や大水時に砂利やゴミ等が一度に多量にヨシ原に漂着してヨシの根元を覆った状態となり、通常の潮汐変動ではこれらが海へ流出せずに陸地化が進行しているのではないでしょうか。
 このように当水域の環境変動は護岸工事を含めた物理化学的要因が影響している可能性もあるので引き続き底生生物の変動とともに見守っていきたいと思います。