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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

いもり池モニタリング調査

2012年05月18日
妙高
 いもり池周辺では、「自然環境」と「利用状況」の変化を長期的にとらえて、今後の国立公園のありかたの参考とするためのモニタリング調査を行っています。今年で5年目となる取り組みで、少しずつ調査のポイントや視点に改良を加えながら続けてきました。

 午後から雲の湧くことの多い妙高山周辺ですので、これまでだいたい午前中にこの調査を行ってきましたが、この日は午後から晴れてきたため午後の作業となりました。個人的には午後の妙高山を撮影しようとすると逆光でうまく撮影できないため、午前中の調査の方がいいのかな、と感じています。
 モニタリング調査ですので定点での撮影は必ず行いますが、周辺も含めた生きものたちの様子や公園施設の状態、利用者の皆さんの様子から駐車状況まで、できる限りの情報を集めるように気をつけています。

 この日は時折強い風が吹き抜ける、ここ一週間で一番暖かく感じた明るい午後でした。木道から林の中を通る遊歩道に入ると湿地に咲くミズバショウ群落を裏側から眺めることができますが、盛りは過ぎていて葉の大きさは50㎝程になっていました。その一方で手前の灌木の下には…




20㎝弱のユリ科のショウジョウバカマが咲いていました。咲いている場所は30㎝ほどしか離れていないのですが、手前はサーモンピンク、奥はピンクと花の色はかなり違っていて訪れる人々を楽しませてくれています。あたりにはスミレの仲間も多く咲いていました。

 対岸の妙高高原ビジターセンター側からの遊歩道入口にある標柱の上には、初めて見る大きめのカメムシが、小さなクモと向き合って風にとばされまいとしがみついていました。




 調べてみると、黒い文様が四つあることからヨツモンカメムシという名がついた寒地系のカメムシで、山地のハルニレなどにみられるとのこと。これも大切な自然情報の一つであると同時に、何回訪れても毎回遭遇する新たな発見は、楽しみながらこの業務に取り組ませて頂く原動力にもなっています。

 木道のあちこちでは撮影会でしょうか、多くの方が歩道脇のミズバショウと春の光に満ちあふれた沢の流れに真剣にレンズをむけていらっしゃいました。




 利用者の皆さんには「笑顔で挨拶!」を心がけてはいますが、木道から湿原に足を踏み入れる方も無くこちらからあえて声をかける必要はほとんどありません。むしろ、ゴミバサミとファイルを持ち、ゴミ袋を腰にぶら下げたどうみても利用者に見えない姿に、
「ごくろうさま。」
「がんばってください。」
「なにをしているの?」と、
声をかけて頂くことの方が多く、また、湿地の陸地化が進んでいるのではないか等の環境変化に対するご意見を頂くこともあります。こういった利用者の皆さんの声を聞く度に、この取り組みの大切さを改めて感じるとともに、一つ一つの声が利用状況を確認するための大切な情報でもあると考え、感謝しながら作業させて頂いています。

 一方で、絵の具のついた紙が無造作に放置されていたり、アイスクリームの持ち手の紙やウエットティッシュ、タバコの吸い殻やお菓子の包装紙などが木道脇の灌木やベンチの下、あずまやの裏にあるのをみつけると大変悲しい気持ちになります。時期的なものかもしれませんが、この日は比較的多くのゴミを調査中に回収しました。美しく貴重な自然をそのまま次の世代に受け継いでいくためにも、ゴミの持ち帰りにご協力をお願いいたします。

 作業を終え、池沿いを通って事務所に戻るみちすがら、ウグイスの長い鳴き声やモリアオガエルのコロロ、コロロという鳴き声が聞こえてきました。多くの生きものの営みと息づかいに元気をもらい、妙高高原の自然に感動しつつ作業を進めることができ、充実した時間を過ごすことができました。

 皆さんも豊かな自然につつまれた癒やしの時間をすごしに、妙高高原まで是非足をのばしてみてはいかがですか。きっと素敵な出会いを体験できることと思います。

いもり池周辺の季節の自然情報や各種イベント等の情報は、
妙高高原ビジターセンターでも提供されています。

電話:0255-86-4599
URL:http://www.myoko.tv/mvc/