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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

特定外来植物「オオハンゴンソウ」と妙高高原での駆除活動

2011年09月16日
妙高
 突然ですが皆さんは「オオハンゴンソウ」という植物をご存知ですか?
 「オオハンゴンソウ」は、日本各地で分布を拡げつつある、「特定外来生物」です。
 「特定外来生物」とは、もともと日本にいなかった生きもののうち、日本の生態系などに大きな被害を及ぼすものとして、「外来生物法」に基づき指定されている動植物を指します。この「オオハンゴンソウ」の問題点は、根から他の植物の成長を阻害する物質をだし、在来の植物を駆逐してしまう点にあります。そこで、「特定外来生物」は飼育・栽培・保管・運搬・輸入・販売・譲渡・野外放置等が規制され、定着(帰化)しているものは必要に応じて防除が実施されています。

 環境省妙高高原自然保護官事務所でも、妙高高原地域の笹ヶ峰において一昨年から「オオハンゴンソウ」の調査及び駆除活動に力を入れ始めました。私は今年で2年目になりますが、この「オオハンゴンソウ」、実際に駆除を行ってみると、本当にやっかいな相手だと気付きます。
 地上部分を刈り取っても、主根が残っているとまた生えてきます。しかし、完全に抜き取ろうにも途中で主根が折れてしまったりして、駆除には多大な時間と労力がかかります。さらに、種は小さく量も多くてぱらぱらと簡単にこぼれ落ち、広範囲に広がります。湿った場所を好み、沢伝いに広がって他の植物と混在してしまうので、繁茂状況の確認だけでも一苦労です。このため、広大な笹ヶ峰を環境省職員と環境省パークボランティアとの活動で全てを調査し、駆除することには限界があります。
 このような状況の中、昨年度から上越森林管理署と妙高市及び地元関係者、そして環境省とが一体となって、笹ヶ峰の「オオハンゴンソウ」繁茂を少しでも防除し、生物多様性を保全しようという取り組みがスタートしました。観光協会や地元の民間企業、専門学校のご協力も得て、昨年度は60名ほどの参加者で笹ヶ峰キャンプ場内のオオハンゴンソウを3000株以上駆除することができました。
 ところが、この取り組みを今年度も実施するにあたり、笹ヶ峰キャンプ場内の今年度駆除ポイントの事前調査を行ったところ、昨年度の駆除活動実施ポイントがほぼ元の状態に戻っていました。これには正直驚きました。そこで今年度も昨年と同じポイントで駆除活動を実施する事になりました。

 9月初旬の平日、朝から曇天の笹ヶ峰キャンプ場に入りました。まず、環境省レンジャーから特定外来生物に関してとオオハンゴンソウの見分け方及び駆除方法の説明を、抜いてきたばかりのオオハンゴンソウの実物を見てもらいながら行いました。



 ご覧の通り、笹ヶ峰のオオハンゴンソウは丁度花期でしたので、初めての方でも見分けやすい状態でした。また、上越森林管理署からは、「国際森林年」とオオハンゴンソウ駆除活動と併せて実施する「在来種植栽活動」について説明していただきました。「国際森林年」及び「在来種植栽活動」の詳細については、下記ホームページをご参照ください。

http://www.rinya.maff.go.jp/kanto/joetu/news/230901.html

 一通り説明を済ませてから実際の駆除活動に入りました。今回はキャンプサイト内の群生地を3つのグループに分かれて作業します。
 最初は苦戦する方が多かったのですが、徐々に皆さん慣れてきて駆除のスピードも上がっていきました。



 歩道脇の林の斜面にも、写真のように入り込んでしまっています。このポイントには後から私も入りましたが、野バラでしょうか、トゲで、露出した腕をさんざん引っ掻き半袖だったことをあとで悔やみましたが、長袖でも苦労するポイントでした。

レンジャーも、
森林管理署職員さんも、
専門学校の先生も、
みんな汗だくになりながら、夢中で駆除に没頭しました。

 私は一人でも多くの方にオオハンゴンソウの問題点を理解してもらおうと、時々手を止めて、だれかれかまわず近くにいる人に主根の取り方の説明などを行いながら作業を進めました。

 駆除したものはグループ毎に集められ、記録係の方に各自駆除した株数を各自報告する形で集計していきます。最後に3箇所全ての「オオハンゴンソウ」を一箇所に集め、総数の把握を行いました。



 今回の「オオハンゴンソウ」駆除活動は総勢約70名の参加があり、自己申告ではありますがトータル8000株ほどを駆除することができました。1時間程の作業でしたが皆さん汗だくで、とても長い時間作業していたような気がしました。
 今回の活動を通して、「オオハンゴンソウ」は一度定着・拡散してしまうと駆除が困難な「特定外来生物」であることを改めて強く感じました。今後も地元の皆さんと協力しながら、地道に駆除活動を継続していかなくてはならないと考えています。

 いま、日本は「外来生物天国」といわれるほど、様々な外来生物が、様々なかたちで入り込んできています。日本固有の生きものたちを守り、生物多様性を維持して次の世代にうけついでいくためにも、ここで外来生物による被害を予防するための「外来生物被害予防3原則」を是非お伝えしておきたいと思います。

1.(悪影響を及ぼすかもしれない外来生物をむやみに日本に)
「入れない。」

2.(飼っている外来生物を野外に)
「捨てない。」

3.(野外にすでにいる外来生物は他地域に)
「拡げない。」

 この「外来生物被害予防3原則」を頭のどこかに置いて頂いたうえで、日本固有の生きものたちに目を向けて頂ければ幸いです。

 なお、最初にご説明したように「特定外来生物」は「外来生物法」で「飼育・栽培・保管・運搬・輸入・販売・譲渡・野外放置等が規制」されていますので、安易に駆除等を行うことはできません。「特定外来生物」の詳しい取り扱いについては、下記ホームページ等でご確認の上、正しい知識を得ていただき、皆さん一人一人の理解と適切な対処を切にお願いいたします。

外来生物法ホームページ
http://www.env.go.jp/nature/intro/

<お知らせ>
 妙高高原自然保護官事務所では、来る10月2日の日曜日に、笹ヶ峰ビジターセンター周辺で妙高高原地区パークボランティアの皆さんの解説によるガイド・ウォーク「秋の笹ヶ峰自然教室」を開催する予定です。詳しい内容は下記ホームページ等でご案内しておりますので、ぜひ秋の爽やかな高原と妙高高原の豊かな自然を満喫しにいらしてはいかがでしょうか。
皆様のお越しを心からお待ち致しております。

「秋の笹ヶ峰自然教室」参加者募集ホームページ
https://chubu.env.go.jp/nagano/