アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
旅立ったスズガモ
2011年04月18日
名古屋
藤前干潟は、この季節、干潮時は、野鳥がたわむれ、潮が満ちると、釣り人がやってきます。
こう書くと、大都会名古屋市の中にあって、自然と寄り添える場所、と思う人もいるかもしれませんが、それゆえの悲しい事故も起きています。
*満潮時は、釣り客も訪れる藤前干潟。
先週末、事務所に「干潟でスズガモが死んでいる」という声が飛び込んできました。
職員一同、言われた場所に急いでかけつけると、岩にはさまるようなカタチで一匹のスズガモが横たわっていました。よく見ると首の後に釣り針がかかり、釣り糸が首にからみついています。
潜って餌をとっている時、根掛かりした釣り糸に掛かってしまったのでしょう。微動だにしません。
*一報を聞き、「高病原性鳥インフルエンザ」を疑った佐藤R(左)と4月からのニューフェース野村AR。
*根掛かりした釣り糸で身動きできなくなったスズガモ。
スズガモはいわゆる「冬鳥」で、10月頃にこの地に飛来し冬を過ごし、5月の連休前から、繁殖のため、再び生まれ故郷を目指します。
旅立ちの前に、さぞかし無念だっただろうな、と思った時、スズガモの羽が動きました。「生きている!」。
そこから、お隣の名古屋市野鳥観察館のスタッフとの救出が始まりました。まず、岩にひっかかっていた釣り糸を切り、傷ついたスズガモを段ボールに入れ、観察館に運びました。
*釣り糸の長さは160㎝もあった。
そこで、首にささった釣り針を抜き、からまった糸を丁寧にはずしていきました。はずした釣り糸の長さは、1メートル60センチ。その先には、テンビン、オモリもつながっていました。
クビまわりがスッキリしたせいか、幾分顔色もよくなり、体温も少し上がってきました。
しばらくすると、早く外に出して、といわんばかりにスズガモはしきりと羽を動かすのですが、なかなか飛び立てません。
そこでその日は、大事をとって、一晩、名古屋市野鳥観察館で作った段ボール箱の家で休んでもらうことにしました。
*段ボールの家で休むスズガモ。
元気になったら、翌日、放鳥する予定でした。しかしその日の朝、観察館のスタッフが出勤すると、スズガモはもう冷たくなっていたそうです。
首の後に針がささっても、釣り糸がからみついていても、生きていたスズガモ。お前ほどの生命力があったら、故郷まで飛んでいくことができただろうに。秋にはこどもを連れて、この藤前干潟に戻って来ただろうに。
今朝は、見慣れた藤前干潟が、かすんで見えました。
*スズガモ舞う藤前干潟
【名古屋自然保護官事務所からのお願い】
藤前干潟は、日本有数の渡り鳥の飛来地です。このところ、捨てられた釣り用具やゴミで傷ついたり、亡くなったりする鳥が増えてきています。持参したゴミはぜひお持ち帰りください。よろしくお願いします。
こう書くと、大都会名古屋市の中にあって、自然と寄り添える場所、と思う人もいるかもしれませんが、それゆえの悲しい事故も起きています。
*満潮時は、釣り客も訪れる藤前干潟。
先週末、事務所に「干潟でスズガモが死んでいる」という声が飛び込んできました。
職員一同、言われた場所に急いでかけつけると、岩にはさまるようなカタチで一匹のスズガモが横たわっていました。よく見ると首の後に釣り針がかかり、釣り糸が首にからみついています。
潜って餌をとっている時、根掛かりした釣り糸に掛かってしまったのでしょう。微動だにしません。
*一報を聞き、「高病原性鳥インフルエンザ」を疑った佐藤R(左)と4月からのニューフェース野村AR。
*根掛かりした釣り糸で身動きできなくなったスズガモ。
スズガモはいわゆる「冬鳥」で、10月頃にこの地に飛来し冬を過ごし、5月の連休前から、繁殖のため、再び生まれ故郷を目指します。
旅立ちの前に、さぞかし無念だっただろうな、と思った時、スズガモの羽が動きました。「生きている!」。
そこから、お隣の名古屋市野鳥観察館のスタッフとの救出が始まりました。まず、岩にひっかかっていた釣り糸を切り、傷ついたスズガモを段ボールに入れ、観察館に運びました。
*釣り糸の長さは160㎝もあった。
そこで、首にささった釣り針を抜き、からまった糸を丁寧にはずしていきました。はずした釣り糸の長さは、1メートル60センチ。その先には、テンビン、オモリもつながっていました。
クビまわりがスッキリしたせいか、幾分顔色もよくなり、体温も少し上がってきました。
しばらくすると、早く外に出して、といわんばかりにスズガモはしきりと羽を動かすのですが、なかなか飛び立てません。
そこでその日は、大事をとって、一晩、名古屋市野鳥観察館で作った段ボール箱の家で休んでもらうことにしました。
*段ボールの家で休むスズガモ。
元気になったら、翌日、放鳥する予定でした。しかしその日の朝、観察館のスタッフが出勤すると、スズガモはもう冷たくなっていたそうです。
首の後に針がささっても、釣り糸がからみついていても、生きていたスズガモ。お前ほどの生命力があったら、故郷まで飛んでいくことができただろうに。秋にはこどもを連れて、この藤前干潟に戻って来ただろうに。
今朝は、見慣れた藤前干潟が、かすんで見えました。
*スズガモ舞う藤前干潟
【名古屋自然保護官事務所からのお願い】
藤前干潟は、日本有数の渡り鳥の飛来地です。このところ、捨てられた釣り用具やゴミで傷ついたり、亡くなったりする鳥が増えてきています。持参したゴミはぜひお持ち帰りください。よろしくお願いします。