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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

【日本のいのち、つないでいこう!COP10まで1日前】

2010年10月15日
志摩
《養殖イカダから見る「生物多様性」》
伊勢志摩といえば、イセエビ・アワビ・サザエ・カキ・ノリなどなど・・・たくさんのおいしい海産物も魅力のひとつ♪そして、そんな海産物を育てるための養殖イカダは、いたるところで見かけられます。 

伊勢志摩で、たくさんのおいしい海産物が取れる理由は2つ。
1つは、沿岸に続く大陸棚があるおかげで、太陽の光が海底まで差し込み、海藻類がよく育つから!そのおかげで、海中の酸素量が増え、海藻を食べて育つアワビやサザエなどのエサ場にもなっているんです。
そして、2つめの理由は、伊勢湾に流れ込む木曽川・長良川・揖斐川などの大きな川が、山からの栄養をたっぷり含んだ水を運んできてくれるから!その水は、太平洋を北上してきた暖流の黒潮とゆっくりぶつかって、静かで生きものたちがたくさん暮らせる豊かな海を作り出します。

そんな恵まれた豊かな海域があったからこそ、ここ伊勢志摩ではおいしい海産物が取れ、養殖文化が発展できたんです。伊勢志摩に来てからはおいしい海の幸とたくさん出会いましたが、その度にこの地域の海の豊かさを感じます。


英虞湾に浮かぶ養殖イカダ(志摩市阿児町鵜方「横山展望台」から)


この養殖イカダのある景色は、伊勢志摩国立公園を代表するリアス式海岸が美しい志摩市の英虞湾(あごわん)でも見られます。どんどんと空気が澄んでくるこれからの季節は、もやが取り払われ、緑豊かな島々や複雑な海岸線の海の色がいっそう際立って、一年の中でもっとも美しい時期を迎えます♪

そして、わたしが好きなのが、夕日の沈むころの景色。
イカダの間を縫うように走る船が作り出した波が、夕日に照らされてキラキラと輝く様は、時間を忘れて見入ってしまうほどとっても美しい光景です。

自然の中に人工物があるとがっかりすることがよくありますが、この養殖イカダは、英虞湾の景色を他にはない「ただ一つだけのもの」としてよりステキに見せてくれる大事な要素になっていると私は思っています。
地元の人々が英虞湾と深く関わりあいながら生活してきた歴史を教えてくれる、なくてはならないものです。


英虞湾の夕景(志摩市大王町波切「桐垣展望台」から)


その土地ならではの歴史や文化の育まれる基盤には、その土地ならではの自然環境があります。伊勢志摩のように、海と共に生きる地域では、養殖文化や海女文化が生まれたり、それぞれの環境に合わせて、違った営みがあり、多様な歴史や文化は築かれていきます。
人間以外の生きものだってそう。環境に合わせて姿や暮らし方を変えていく生きものにも、ひとつひとつ違った深くて多様な歴史があるのです。

他にはない「ただ一つだけのもの」だから、大切で魅力的。
好きな景色や、おいしい食べ物、生物多様性について考える入り口はどこにだって広がっています。生物多様性の保全を地球規模で考えると壮大なテーマに思えてしまいますが、わたしたち一人一人ができることは、これからも残していきたい「ただ一つだけのもの」を見つけることが始まりであり、またそれはいちばん大切なことであると私は思っています。



☆お知らせ☆
生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の開催を、より身近に感じてもらえるよう、現在、名古屋国際会議場(COP10会場)に隣接する白鳥地区では、生物多様性をテーマとした国際的な発表・交流展示会『生物多様性交流フェア』が行われています。
世界中の「ただ一つだけのもの」を探しに出かけてみませんか?



★全国のアクティブ・レンジャーが綴る「日本のいのち」
日本のいのち、つないでいこう!

★環境省 生物多様性ホームページ
生物多様性-Biodiversity-

★COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト
生物多様性条約COP10/MOP5日本政府公式ウェブサイト