アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
【日本のいのち、つないでいこう! COP10まで100日前】
2010年07月08日
万座
○レンゲツツジ・高山蝶そして人間○
先日の6月26日(土)に生物多様性条約締約国会議(COP10)開催記念行事として、“自然を見る・感じる~レンゲツツジ咲く「湯ノ丸山」編~”を開催いたしました。
この自然観察会は“自然に触れながら生物多様性について考えていただく”事を目的とし、参加者の方へは「目はもちろん耳など五感を使って自然を感じてみてください」とお願いし、開始しました。様々な鳥のさえずり、雨の音、周囲のニオイ、湿原・人工林・自然林等の環境、標高の高低で生きている植物の違いや、同じ植物であっても色や大きさなど「個性」があることを湯の丸山に登りながら実際に見て感じていただきました。
山頂到着間際でまさかの霧。湯ノ丸山山頂からの眺望を楽しんでいただきたかったのですが、、、残念でした。本来、晴れていたらこんな感じ↓
【湯の丸山頂西側】
いかがですか、この眺望。手前の鋭く尖った山は烏帽子岳、奥には北アルプス山脈が確認でき、南西方向には富士山も見ることができます。今回は残念ながらこの景色は見ることはできませんでしたが、参加者の皆さんにはまた是非湯ノ丸山に足を運んでくださいとお願いしました。
昼食を山頂で済ませ、60万株とも言われているレンゲツツジ(ツツジ科 ツツジ属 レンゲツツジ種)群落へ向かいました。辺り一面見渡す限りのレンゲツツジ。壮大な自然の絨毯に囲まれて皆さん大満足でした。
【ツツジ平(コンコン平)】
ちょっとここで湯ノ丸山のレンゲツツジ群落の歴史に触れてみましょう。
昔々・・・湯の丸牧場が明治37年に開牧し、約200~300頭もの牛が放牧されていました。レンゲツツジは、毒性があることから牛には食べられず残り、他のズミやカラマツの幼木、雑草を牛が食べることにより生育環境が整えられ群落を形成することができました。しかし、昭和50年代に牛肉の輸入自由化が始まり、安価で購入しやすい輸入肉が入ってくるようになり、それにより日本の畜産業が衰退していきました。その影響は湯の丸牧場へもやってきました。放牧頭数の減少、さらには牧場の廃止へとつながってしまい、放牧により成り立っていた湯ノ丸山のレンゲツツジ群落が危機的状況となってしまったのです。牛により食べられていたズミやカラマツの幼木・周囲の雑草の成長により、十分な光を受けることができなくなり、レンゲツツジの生育環境は一気に悪化。それではマズイ!と地元自治体や関係者が協力し、保全活動を開始することとなり、放牧の再開を行いました。ただ、放牧頭数は40頭前後と開牧当初よりも激減しました。そして現在、放牧頭数は15頭前後と大幅に減少していますが、高木の伐採や下草刈りなど人間の手による環境整備も平行して行われています。
そうなんです!このレンゲツツジの美しい景色はレンゲツツジ自身の生命力・牛や昆虫による環境整備・そして我々人間の力などのバランスによって今見ることができているのです。
※保全活動に興味のある方はこちらへお問い合わせください↓
湯の丸レンゲツツジ保存会事務局:0279-97-3405 嬬恋村郷土資料館内
植物の他にもこの湯ノ丸山を生息地とする生き物はたくさんいます。たくさんの昆虫も暮らしており、またその保全活動も行われています。自然観察会ではその活動についても紹介しました。
【鹿沢万座パークボランティアによる解説】
昆虫の中でも、ベニヒカゲ(タテハチョウ科 ベニヒカゲ本州亜種)・ミヤマシロチョウ(シロチョウ科 ミヤマシロチョウ種)・ミヤマモンキチョウ(シロチョウ科 ミヤマモンキチョウ浅間山系亜種)という湯ノ丸山周辺の自然環境を必要としている高山蝶がいます。実はこの3種は、それぞれ人間による盗掘や生息地の開発・森林化により食樹(幼虫の餌)が減少し生活環境を奪われ、激減している蝶たちです。これらの蝶を保全していこうと、こちらもまた地元関係者を始めとした我々人間によって、パトロールやモニタリング調査などを日々行い、保全活動を行っています。
このように今回の自然観察会では、生物多様性をキーワードに湯ノ丸山の自然状況を解説していきました。参加いただいた皆さんから、「自然の見方が変わった気がして有意義であった」「生物の多様性といった目線でものを見ていきたい」などのご意見を頂戴し、我々スタッフも手応えを感じる事ができ嬉しく感じました。
あなたの、そして人間の生活に欠かせないものはなんでしょうか?では、それは何から作られているか考えた事はありますか?思い浮かぶ多くのものが自然由来のものであるはずです。そして、その自然を構成しているのが、「生態系」「種」「遺伝子」の3つのレベルからなる“生物多様性”です。
私たち人間は生物多様性の恩恵を受けて生きています。人間活動により失われてしまった生物多様性は数多くあります。また、人間活動により守ることのできる生物多様性もあります。まずは、日常生活を振り返っては見ませんか?そして、生物多様性の保全・自然環境の保全について目を向けてください。生物の多様性のために自分のできることがきっと見えてくると思いますよ。
先日の6月26日(土)に生物多様性条約締約国会議(COP10)開催記念行事として、“自然を見る・感じる~レンゲツツジ咲く「湯ノ丸山」編~”を開催いたしました。
この自然観察会は“自然に触れながら生物多様性について考えていただく”事を目的とし、参加者の方へは「目はもちろん耳など五感を使って自然を感じてみてください」とお願いし、開始しました。様々な鳥のさえずり、雨の音、周囲のニオイ、湿原・人工林・自然林等の環境、標高の高低で生きている植物の違いや、同じ植物であっても色や大きさなど「個性」があることを湯の丸山に登りながら実際に見て感じていただきました。
山頂到着間際でまさかの霧。湯ノ丸山山頂からの眺望を楽しんでいただきたかったのですが、、、残念でした。本来、晴れていたらこんな感じ↓
【湯の丸山頂西側】
いかがですか、この眺望。手前の鋭く尖った山は烏帽子岳、奥には北アルプス山脈が確認でき、南西方向には富士山も見ることができます。今回は残念ながらこの景色は見ることはできませんでしたが、参加者の皆さんにはまた是非湯ノ丸山に足を運んでくださいとお願いしました。
昼食を山頂で済ませ、60万株とも言われているレンゲツツジ(ツツジ科 ツツジ属 レンゲツツジ種)群落へ向かいました。辺り一面見渡す限りのレンゲツツジ。壮大な自然の絨毯に囲まれて皆さん大満足でした。
【ツツジ平(コンコン平)】
ちょっとここで湯ノ丸山のレンゲツツジ群落の歴史に触れてみましょう。
昔々・・・湯の丸牧場が明治37年に開牧し、約200~300頭もの牛が放牧されていました。レンゲツツジは、毒性があることから牛には食べられず残り、他のズミやカラマツの幼木、雑草を牛が食べることにより生育環境が整えられ群落を形成することができました。しかし、昭和50年代に牛肉の輸入自由化が始まり、安価で購入しやすい輸入肉が入ってくるようになり、それにより日本の畜産業が衰退していきました。その影響は湯の丸牧場へもやってきました。放牧頭数の減少、さらには牧場の廃止へとつながってしまい、放牧により成り立っていた湯ノ丸山のレンゲツツジ群落が危機的状況となってしまったのです。牛により食べられていたズミやカラマツの幼木・周囲の雑草の成長により、十分な光を受けることができなくなり、レンゲツツジの生育環境は一気に悪化。それではマズイ!と地元自治体や関係者が協力し、保全活動を開始することとなり、放牧の再開を行いました。ただ、放牧頭数は40頭前後と開牧当初よりも激減しました。そして現在、放牧頭数は15頭前後と大幅に減少していますが、高木の伐採や下草刈りなど人間の手による環境整備も平行して行われています。
そうなんです!このレンゲツツジの美しい景色はレンゲツツジ自身の生命力・牛や昆虫による環境整備・そして我々人間の力などのバランスによって今見ることができているのです。
※保全活動に興味のある方はこちらへお問い合わせください↓
湯の丸レンゲツツジ保存会事務局:0279-97-3405 嬬恋村郷土資料館内
植物の他にもこの湯ノ丸山を生息地とする生き物はたくさんいます。たくさんの昆虫も暮らしており、またその保全活動も行われています。自然観察会ではその活動についても紹介しました。
【鹿沢万座パークボランティアによる解説】
昆虫の中でも、ベニヒカゲ(タテハチョウ科 ベニヒカゲ本州亜種)・ミヤマシロチョウ(シロチョウ科 ミヤマシロチョウ種)・ミヤマモンキチョウ(シロチョウ科 ミヤマモンキチョウ浅間山系亜種)という湯ノ丸山周辺の自然環境を必要としている高山蝶がいます。実はこの3種は、それぞれ人間による盗掘や生息地の開発・森林化により食樹(幼虫の餌)が減少し生活環境を奪われ、激減している蝶たちです。これらの蝶を保全していこうと、こちらもまた地元関係者を始めとした我々人間によって、パトロールやモニタリング調査などを日々行い、保全活動を行っています。
このように今回の自然観察会では、生物多様性をキーワードに湯ノ丸山の自然状況を解説していきました。参加いただいた皆さんから、「自然の見方が変わった気がして有意義であった」「生物の多様性といった目線でものを見ていきたい」などのご意見を頂戴し、我々スタッフも手応えを感じる事ができ嬉しく感じました。
あなたの、そして人間の生活に欠かせないものはなんでしょうか?では、それは何から作られているか考えた事はありますか?思い浮かぶ多くのものが自然由来のものであるはずです。そして、その自然を構成しているのが、「生態系」「種」「遺伝子」の3つのレベルからなる“生物多様性”です。
私たち人間は生物多様性の恩恵を受けて生きています。人間活動により失われてしまった生物多様性は数多くあります。また、人間活動により守ることのできる生物多様性もあります。まずは、日常生活を振り返っては見ませんか?そして、生物多様性の保全・自然環境の保全について目を向けてください。生物の多様性のために自分のできることがきっと見えてくると思いますよ。