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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

藤前干潟もうひとつの物語Ⅴ 「天を仰ぎて・・・」

2009年09月03日
名古屋
 「天に仰ぎて唾す」ということわざがあります。その意味は、「天に向かって唾をすれば顔にかかるように、悪いことをすると、かえって自分がひどい目に会う」。
 唐突に、なぜこんなことわざを書いてしまったのかというと、鳥獣保護区に捨てられたゴミを見た時、不意に浮かんできたからです。
 自然をないがしろにすると、いつかひどい仕打ちが返ってくる・・・。そんな思いがこみ上げてくるほど、捨てられたゴミはひどいものでした。
 

  ◇干潮時の藤前干潟

 どこの自然保護官事務所でも同じ悩みを抱えているのではないか、と思いますが、名古屋自然保護官事務所の気がかりは、ゴミが与える野生生物への影響。というのも、かつて釣り人が捨てていった釣り糸に鳥がひっかかり命を落としたことがあったからです。

 まず目につくのが、ペットボトルに代表される漂着ゴミの多さ。夏場は一緒にビーチサンダルが流れてくることもあります。その他、消火器やタイヤが泥まみれになって河川岸に打ち寄せられていることもありました。
 しかしこれはまだ序の口。人目のつかない割合が高くなるほど、モラルが低下するようで、チューブやホースといった産業廃棄物。ふとん、家具、テレビ、冷蔵庫、洗濯機といった生活用具が、山となってあちこちに点在しています。


  ◇目を覆いたくなるゴミ

 実は、名古屋自然保護官事務所は、ゴミ問題がきっかけとなって誕生した、と言っても過言でないほど、藤前干潟は深くゴミ問題に関わってきました。
 1984年日本最大規模の渡り鳥の飛来地「藤前干潟」に名古屋市の「ゴミ最終処分場」計画が持ち上がり、市民運動をきっかけに、環境への関心が高まり、環境庁(当時)など行政の努力を経て、2002年11月、国指定の鳥獣保護区、そしてラムサール条約に登録されます。こうして、05年に名古屋自然保護官事務所は誕生したからです。
 
 
  ◇秋の訪れを告げるアオアシシギ
  
 ゴミの処理場計画からも守られた鳥獣保護区藤前干潟を、今度は不法投棄のゴミから守るため、名古屋自然保護官事務所では、この度「不法投棄防止」の看板を設置しました。
 「天を仰ぎて唾す」。自然をないがしろにして、仕打ちを受けないよう、残された自然を大切にしていきたい、と考えています。

 地球を考える会議「COP10」まであと1年とわずか。