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中部地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

藤前干潟もうひとつの物語Ⅲ「男の顔」

2009年06月18日
名古屋
 朝、恒例の巡視で一匹の鳥がわたしの頭をかすめるように飛んでいきました。黄色いクチバシをした、翼と尾羽が細くとがった小ぶりの鳥。藤前干潟の初夏の主役コアジサシです。


 
 実はこの時期のコアジサシのおとうさんは、大忙し。なぜなら妻や生まれたばかりのこ子どもに餌を運ばなくてはならないからです。 
コアジサシは、海岸や埋立地、川原などの砂地や礫地にコロニー(集団繁殖地)を作り、繁殖します。春、つがいとなり、子どもが生まれるのがちょうどこの時期。藤前干潟で餌をとっては、妻や子の待つコロニーに運びます。
 出動タイムは、干潟の潮が引き始める干潮前。水深が低くなればなるほど獲物を狙いやすくなるからです。しかもこの時期の干潟は、ボラの稚魚が泳ぎ回る絶好のエサ場。水面から5~7メートルぐらいの上空から水面を見ながら停空飛行し、これはという魚をみつけると、猛スピードでダイビングして魚をとらえます。その様子から、鯵刺(あじさし)という名前が付いた、ともいわれています。


 
思えば、コアジサシのオスは、春から餌を捕り通しです。春の繁殖前は、メスへの求愛のために。そしてめでたくペアになったら今度は妻のため、子どものために・・・。
 水中に果敢にダイビングするその顔は、まさに男の顔でした。久しぶりにたくましい男の顔を見た気がしました。



 6月の下旬になると、子どももようやく飛べるようになり、おとうさんは、妻と雛をつれ、藤前干潟に餌をとりにくるというから、今から楽しみです。コアジサシの餌取りは、例年でいうと、7月上旬まで見られるとか。先週は350羽のコアジサシが確認されたそうです。  
 生きとし生けるものが集う藤前干潟にこの機会にぜひ遊びにきてはいかがでしょうか?
 それではまたアクティブレンジャー日記でお会いしましょう。
 ~COP10まであと1年と3か月~