松本

晩秋の乗鞍高原

2022年11月25日
松本 中岡浩貴
 乗鞍・白骨温泉地区アクティブレンジャーの中岡です。
 標高3,026mの乗鞍岳は10月下旬に一度冠雪したものの、11月に入ってからは晴天が続き、冬の到来は例年に比べゆっくりとしています。





 それでも、標高約1,500mの乗鞍高原では、数日前に降った雪の溶け残りが見られるようになりました。そろそろ根雪(雪が溶けずに降り積もっていくこと)となり、本格的な冬が訪れることになるでしょう。
 そんな乗鞍高原から、近況をお伝えします。
 
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●一の瀬園地の修景伐採



 乗鞍高原の南側に広がる一の瀬園地はかつて放牧に利用されており、それによって草原が維持されてきました。
 こうした人の手が入ることで維持されてきた草原を、「半自然草原」と呼びます。
 しかし現在は放牧が行われなくなったため、一帯は放っておくと森林に戻ってしまいます。



 一の瀬園地の草原は、景観として優れているのみならず、他の地域では見られない動植物たちの貴重な生息地にもなっています。
 一旦森林化してしまうと、これらの動植物は住処を失ってしまいます。



 利用方法が過去から変化した現在、一の瀬園地の草原の維持については、当地域に定められている国立公園の管理計画でも課題の一つとして挙げられており、毎年、修景伐採と呼ばれる草原維持活動が行われています。



 先日も、地元の方々がチェーンソーやチッパー(粉砕機)を使って雑木の処理を行い、本格的な冬の到来を前に追い込み作業をされていました。


▲Before

▲After

 グリーンシーズンを通して非常に丁寧に整備してくださったお陰で、見通しが良くなりました。



 現在の伐採材は、薪として灯油に代わる暖房の燃料に用いたり、ウッドチップ化して高原内のトレイル整備資材として用いたりするなど、循環利用がされています。
 一の瀬園地の景観や生態系は、長きにわたって人の手が加わることによって維持され、人々の暮らしもまた、こうした自然の恩恵に支えられています。
 ご来訪の際は、こんな人と自然の関わりを感じながら散策してみてはいかがでしょうか。

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●女小屋の森 木道修繕

 一の瀬園地を奥に進んでいくと、春にミズバショウの群生地として多くの方が訪れる女小屋(めごや)の森というエリアがあります。
 女小屋の森一帯は湿地帯のため、探勝路には木道が設置されています。
 降り積もる落ち葉をそのまま放置しておくと湿気が溜まって木道が傷んでしまうため、歩きやすさのため以外にも、箒やブロワーを使って清掃を行います。



 それでも、入口付近の木道が腐朽して傾いてしまい、通行しにくい状態になっていました。
 このため先日、将来的な全面更新までの応急措置として、金属製の足場を設置しました。


▲Before

▲After

 幅が少し狭くなっていますので、足元に気を付けてご利用ください。

 木道の奥へ進んでいくと、なにやら「誰か」の落とし物が。



  乗鞍高原は、ツキノワグマの生息地です。

 彼らとの不意の遭遇を避けるため、散策の際には熊鈴を身に着け、散策路の各所に設置されている熊避けの管を鳴らすようにしましょう。

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 乗鞍高原内の道路には、すでに凍結箇所が出てきています。自家用車の方は冬タイヤを装着し、お気をつけてお越しください。