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【開催報告】生物多様性地域対話「生物多様性国家戦略2010」を開催しました
2010.01.14 中部地方環境事務所
環境省・中部地方環境事務所は、平成21年12月22日(火)に生物多様性地域対話「生物多様性国家戦略2010」~生物多様性国家戦略2010(案)説明会~を愛知県名古屋市(ウィル愛知)にて開催しました。
現在、環境省では、平成20年に制定された「生物多様性基本法」に基づき、既存の「生物多様性国家戦略」を見直して、新たな国家戦略を策定する作業を進めています。今回の地域対話は、新たな国家戦略の案について12月10日より1月8日までパブリックコメントが実施されていることを受けて、「生物多様性国家戦略」を地域で考える場を創ることを目的として開催したものです。
企業・NPO・行政など多様なセクターの方々に、多数ご参加いただきました。
1.主催者挨拶
中部地方環境事務所 田村統括自然保護企画官より、年末押し迫った中、多くの方々にご参加いただいたことに対する謝辞と、今回パブリックコメントを実施している「生物多様性国家戦略2010(案)」について、このような機会を通じてご理解いただき、今後も生物多様性の保全を図るため、地域の視点を頂きたいこと、本会合での活発な意見交換を期待していることが述べられました。
中部地方環境事務所 田村省二 統括自然保護企画官
2.第1部 説明会「生物多様性国家戦略2010(案)」
環境省自然環境局自然環境計画課生物多様性地球戦略企画室 堀内室長補佐より、平成21年12月10日に公表された「生物多様性国家戦略2010(案)」についての説明がありました。
今回の国家戦略は、法律に基づいて定められる戦略としては初めてのものとなりますが、既に策定されている「第3次生物多様性国家戦略」からの変更点を主に、策定までの経緯、構成、今回案の目標とその評価、4つの基本戦略([1]生物多様性を社会に浸透させる、[2]地域における人と自然の関係を再構築する、[3]森、川、里、海のつながりを確保する、[4]地球規模の視野をもって行動する)と行動計画についての概略及び生物多様性条約第10回締約国会議について説明がされました。
質疑応答では、
- 100年先を見通した戦略ということではあるが、その具体像としてどのようなものを描いて作成されたのか
- 一般市民は自分の生活の周りでどう活動すればよいのか解らない、一般市民が理解しやすい項目を取り入れ、かつ分かり易いキャッチフレーズが必要ではないか
- 消費行動につながる視点が国家戦略の何処に書かれているのか
- 何故戦略という言葉が使われているのか
- 一般市民の目線でこの戦略をどのように読み解けばよいのか
といった視点での質問が出されました。
説明者からは、市民の日常生活と関係した生物多様性を利用するための開発が日本国内だけではなく海外でも行われていることから、そこにも目を向けて行く必要性と、そのための目印として国際認証など市民が理解を深められるような施策についても触れられていること、最近作成されたキャッチフレーズの紹介、主流化のための取り組みを今後展開してゆくこと、貴重な地域の目線のご意見を今後の参考としてゆきたいこと、などが話されました。
生物多様性地球戦略企画室 堀内室長補佐
3.第2部 ディスカッション「生物多様性国家戦略2010を考える~国際社会・地域社会~」
(1)話題提供
中部環境パートナーシップオフィスの新海氏のコーディネートにより、3人のゲストをお招きしてディスカッションを行いました。初めに新海氏より、今回の戦略でも生物多様性の主流化が取り上げられてはいるが「一般社会に生物多様性を知る人を増やすためにどうすればよいのか、地域に何が出来るのだろうか」というところを中心に議論してゆきたいという趣旨が説明されました。
一人目のゲストとして、名古屋市環境局環境都市推進部生物多様性企画室 増田室長より、現在策定中の生物多様性なごや戦略の概要について紹介がありました。
- 身近な自然を大切にしようと言うことだけでなく、「都市生活者が都市生活を考える」ことが都市域の多い名古屋の生物多様性保全戦略のポイントである
- 生物多様性の認知度を上げ、日常生活に根付かせ、日常生活からの変革を図らなければならない
- 名古屋という1都市だけではなく、そこでの都市生活を支える周辺や上流域などの他の地域と共に生物資源の保全を考えていくことが必要である
名古屋市環境局環境都市推進部生物多様性企画室 増田室長
引き続いて、タレントとしても活躍されている原田さとみさんより、ご自身が取り組んでらっしゃる「タップ・ウォーター・プロジェクト」と「フェアトレードタウン」についてのご紹介がありました。
- 国家戦略についての感想としては、「国家戦略」=「反省文」として受け止められ、今まで当たり前であったことが出来なくなったことは非常に残念なことである
- 自分は、タレントとしてだけではなく、一人の女性・母親としての視点を持って、みんなが楽しくかっこよく行動でき、その結果がみんなに良いこと、環境にも良いことになれば継続的な活動につながってゆくと言う考えの下で、無理のない楽しめる活動を広げてゆくことに取り組んでいる
- 名古屋のお水のおいしさは名古屋の力で何とかなるものではなく、当たり前のものと思っているものに対して感謝する気持ちを持って、それを具体化して行動し、水でつながっている他の地域とつながろうという活動が重要である
- 心ある消費活動、モラルある消費活動が、地域を越える大きな環境活動につながる
原田 さとみ氏
最後に株式会社博報堂DYメディアソリューションの川廷氏より、「環境コミュニケーション、誰にでも届く環境情報の届け方」について、チームマイナス6%の取り組みを事例に、どうすれば自分たちが思っているような環境によいこと、取り組みを広げられるのか、うねりを創ることが出来るのかということをお話ししていただきました。
- 「トップの本気を喚起する」、「横並びの原理で連鎖反応を呼び起こす」、「ヒントを与えて自主的に取り組むことを動かす」。これらをそれぞれてこの原理で掘り起こし、うねりを起こしてゆくことが戦略として必要である
- 流通を動かすためにどう仕組みを作るのかということが大切である
- 生物多様性という概念では解ってはいるものをどうやって、分かり易く打ち出すのかと言うところが難しいところであり、「概念をアクションで提示すること」という当たり前の行動を提示し、自ら実施させ、他人事に聞こえる生物多様性を自分事にすることと、その行動がほめられる仕掛けをボトムアップでおこなうことが大事である
- メディアとの地域連携や中部の流域発想もこの地域として大切なポイントである
株式会社博報堂DYメディアソリューション 川廷氏
(2)意見交換
ゲストの話題提供で、会場の参加者の皆さんも大きな刺激を受けたようで、意見交換の時間では、生物多様性のコアになるような存在(例えば水)についての具体的な行動提示をして欲しいといった要望や、生物多様性のイメージとしては希少種のような貴重なものや美しいものだけが大事だと捉えられる事への危惧感が、参加者の声として出されました。
また、特定の価値観が植え付けられていない小さな子どもたちへの教育の必要性や、地域の昔は当たり前にいた価値のついていない自分の回りにありふれていた地域の生き物たちへの配慮やそのようなことを多くの人たちが理解し行動するムーブメントづくりが大切であることに共感し、そのためにはどのようなことを今後地域で行ったらよいのかということについて、参加者がゲスト等と意見交換を行いました。
まとめとしては、国家戦略は大きなビジョンではあるが、それを担って実行してゆくのは地域の人間であり、その内容が地域のニーズとずれていないかどうか、きちんと確認してゆくことが重要であり、そのためにパブコメに参加するなど行動することが呼びかけられました。
今回の地域対話では「生物多様性国家戦略」のみならず、地域の悩みや市民レベルで感じ取られていることを多種多様な参加者の皆さんで共有することができました。また、生物多様性の主流化を中心として、この場にいた一人一人が行動を広げるヒントを持ち帰り、実施することで、地域から国全体までの生物多様性の保全と持続可能な利用が図られることにつながるとの期待感が醸成されました。
資料
- 1)
- 生物多様性国家戦略2010(案)冊子
- 2)
- 当日説明資料(パワーポイント印刷物) [PDF 4,122KB]
- 3)
- 第3次生物多様性国家戦略パンフレット
- 4)
- COP10リーフレット
- 5)
- 生物多様性なごや戦略(H21.12.22 中間案抜粋) [PDF 2,799KB]
- 6)
- 「生物多様性をどうコミュニケーションするか」 [PDF 446KB]
- 7)
- 環境コミュニケーション・デザイン-“絆”で広げるビジネスチャンス- [PDF 928KB]
- 8)
- タップ・ウォーター・プロジェクト「コップなごや“水!”寄金」とは [PDF 93KB]
- 9)
- フェアトレードタウンなごや推進委員会について [PDF 202KB]