
アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]
大日岳登山道の花や虫たち
2021年06月21日こんにちは。中部山岳国立公園立山管理官事務所の平松です。
6月10日、大日平に設置されている木道の点検を兼ねて、大日岳登山口から大日平までの巡視に行ってきました。登山道にはほとんど雪は残っていませんでしたが、大日平まで進むと芽吹き始めた植物ばかりで、あたりは早春の雰囲気でした。そこで今回はこのときに登山道で見られた花や昆虫を中心に紹介します。
<タニウツギ>
登山口付近では、淡いピンクのタニウツギが花盛りでした。花が一斉に咲く様子はとても見事で美しく、観賞用に植栽されることもある樹木というのもうなずけます。登山口付近ではまだ咲いていますが、ここよりも標高の低い場所ではもう花は終わっています。
<ウワミズザクラとサカハチチョウ>
登山口から少し上に、ウワミズザクラが咲いていました。名前の通り桜の仲間ですが、花の付き方は普通の桜とは少し違っていて、穂状にたくさんの花をつけます。
サカハチチョウは春の山地でよく見られる種類で、翅の白い筋が漢字の「八」を逆さまにしたように見えるのが名前の由来です。春と夏では翅の模様が全く違っています。
<マイヅルソウ>
登山口からひと登りすると、猿ヶ馬場という小さな広場に着きます。マイヅルソウはこのあたりから大日平までの林の下でたくさん見られましたが、この日花が咲いていたのは猿ヶ馬場付近だけでした。茎の上方にある2枚の葉の上に白い花が咲き、その姿は鶴が舞う様にも見えてとても可憐です。
<オオバキスミレ>
猿ヶ馬場から上で咲いていた黄色いスミレの仲間です。黄色いスミレの仲間はそれほど多くありませんが、名前の通り葉が大きいのがこの種類の特徴です。この地域の亜高山帯以上の地域ではキバナノコマノツメという黄色いスミレも見られるそうです。
<ヒゲナガオトシブミ>
猿ヶ馬場付近のシダ類の葉の上にとまっていました。オトシブミ類の特徴は、メスが葉を筒状に巻いて揺籃(ようらん)を作ることです。揺籃の中には卵があり、卵からかえった幼虫はその中身を食べて成長します。まさにゆりかごですね。写真の個体はメスで、オスは頭部がもっと長くなっています。
<シラネアオイ>
猿ヶ馬場からしばらく登った牛ノ首と呼ばれる場所の少し下で咲いていました。大きな花で、咲いていると結構目立ちますが、この日は3輪しか見つけられませんでした。例年5月の終わりから6月の初め頃に咲くようで、花の時期はもう終わりだったのかもしれません。
<タムシバ>
牛ノ首を経て大日平に上がると、そこはタムシバの花園でした。低山では3月に咲いていたというのに、ここでは今が盛りなのですね。ニオイコブシとも言い、花に芳香があると言うのですが、その香りは案外薄くて、鼻を近づけてもかすかに香るのかなという程度でした。
<エゾコセアカアメンボ?>
大日平は国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されています。そこには様々な生き物がすんでいて、写真のアメンボもその一つです。このアメンボは弥陀ヶ原でも記録されているエゾコセアカアメンボという種類かもしれませんが、細部まで観察しないとはっきりとした区別はできません。
<タテヤマリンドウ>
大日平はまだ若葉の芽吹きが始まったところですが、そんな中でも小さなリンドウが咲いていました。タテヤマリンドウです。草丈は10cm足らずで、まだ新緑が少ない草原にひっそりとたたずんでいました。
<チングルマ>
立山はチングルマロードと呼ばれる道があるくらいたくさんのチングルマが見られます。室堂では7月頃にその花が多く見られますが、大日平ではもう咲いていました。小さな植物ですがれっきとした木で、秋に葉が落ちると幹の部分が地上に残ります。
この登山道は、牛ノ首あたりまでの道の傾斜が急で、大日平に出ると緩やかになります。大日平の木道に目立った破損はなく、新緑が芽生え始めた湿原を快適に歩くことができました。立山に比べて登山者は少ないので、その分ゆったりと過ごすことができます。皆さんもぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。
******************
中部山岳国立公園では、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する政府や各自治体の方針を受け、「新しい生活様式」に沿った慎重な行動をお願いしています。中部山岳国立公園へお出かけの際には、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認いただき、3つの密の回避や手指の消毒など、感染防止対策にご協力ください。みなさまのご理解ご協力をお願いいたします。