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信越自然環境事務所

報道発表資料

2025年07月07日
  • 報道発表
  • 結果報告

中央アルプスにおけるライチョウの生息数増加と分布範囲の拡大について

 環境省では2020年以降、乗鞍岳からの3家族(19羽)と飛来雌1羽の計20羽をもとに、絶滅した中央アルプスにライチョウを復活させる事業に取り組んできました。令和7年4月から6月にかけて令和7年度シーズンのなわばり調査を実施し、中央アルプス全体で83のなわばりを確認し、約190羽が繁殖しているものと推定しました。令和6年度(58なわばり計130羽)からさらに生息数が1.4倍に増加し、中央アルプスでの個体群の復活の取り組みが前進したことが確認できました。(※7月5日現在の速報値)
 また、今回の調査で、中央アルプス最南部の越百(コスモ)山で初めてライチョウのなわばりが確認され、つがいの雌雄と抱卵中の巣が確認されました。このことから、中央アルプスで生息可能な範囲全体(北限:将棊頭山~南限:越百山)にライチョウの分布が拡大したことがわかりました。
 復活プロジェクトのきっかけとなった「飛来雌」については、6月22日の調査で6卵の産卵を確認し、6月28日にヒナ6羽が孵化しているのを確認しました。これにより5年連続での繁殖確認となりました。
  一方、昨年度に那須どうぶつ王国及び大町山岳博物館から野生復帰させた7個体は、3月以降に1個体が確認されたのみです。引き続き生存状況の確認を行い、足環の確認情報の提供を登山者らに呼びかけていきます。
  引き続き、中央アルプスでの生息状況調査を進めるとともに、個体群復活及び野生復帰技術の確立を目的に、動物園飼育個体での野生復帰事業を9月に実施するため、各機関と連携して準備を進めてまいります。
 

1.令和7年度なわばり調査結果

 復活プロジェクトの開始以降、中央アルプス全体でなわばりは約2倍ずつ増加してきており、令和7年度の調査結果によってライチョウの生息が可能となる場所に、ほぼなわばりが形成されたことがわかりました。


図1:中央アルプスにおける推定なわばり数及び生息個体数の年変化
(令和7年度は7月5日時点の速報値)

表1:中央アルプスにおける地域ごとのなわばり数の年変化

 

2.分布範囲の拡大について

 これまで分布が確認されていなかった中央アルプス南部の越百(コスモ)山で、6月8日及び9日に実施された調査によってつがい及び巣が確認されました。

写真1:越百山で確認された雄のライチョウ(6月8日)



写真2:抱卵中の雌(6月9日)



写真3:確認された巣(6月9日)

3.飛来雌の確認状況

 北アルプス方面の山岳から飛来し2015年頃から中央アルプスで生息してきた「飛来雌」と呼ばれる雌のライチョウが、復活プロジェクトで導入された雄とつがいになり、令和7年度も繁殖して雛が孵化したことが確認されました。2021年以降、5年連続での繁殖確認となりました。


写真4:孵化後数日の雛を連れた飛来雌(7月1日)
 

4.昨年度の野生復帰個体の足環と生息確認状況

 令和6年9月に、那須どうぶつ王国の雛2羽及び大町山岳博物館の雛5羽の計7羽を野生復帰し、令和7年度の生存状況を調査していますが、那須どうぶつ王国の1羽が3月と4月に確認されているのみです。引き続き生存状況を確認していくとともに、足環の確認情報の提供を登山者らに呼びかけていきます。

表2:昨年度の野生復帰個体の足環と生息確認状況

 

5.今後の予定

(1)捕食者対策事業(中央アルプス及び南アルプスにて、適宜実施)
 ライチョウが生息できる本来の生態系を取り戻すため、山小屋周辺に居ついたテンやキツネの除去を実施しています。

(2)ライチョウ生息地回復事業(火打山)
 令和2年度から、新潟県妙高市の火打山において、良好なライチョウの生息環境回復を目指し、イネ科植物等の除去事業を行っています。令和7年度は8月20日~22日に実施予定です(妙高市HPにおいてボランティアを募集予定です)。

(3)野生復帰事業(中央アルプス)
 遺伝的多様性の確保及び野生復帰技術の確立を目的に、令和7年度は、雛の他に成鳥も対象として約30個体の野生復帰を実施します。野生復帰個体は那須どうぶつ王国、長野市茶臼山動物園、市立大町山岳博物館、いしかわ動物園の4園を候補とし、移送第1回目は9月10日を予定しています。移送後は1~2週間程度の現地順化を行い放鳥します。
 

お問い合わせ先

環境省信越自然環境事務所 野生生物課 福田
TEL:026-231-6573