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信越自然環境事務所

報道発表資料

2022年04月22日
  • その他

令和4年度ライチョウ保護増殖事業(生息域内保全事業)の実施について

 環境省では「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」に基づき、文部科学省・農林水産省と共同で策定した「ライチョウ保護増殖事業計画」(平成24年1月)を踏まえ、「第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画」(令和2年4月)を作成し、ライチョウの保護増殖事業を進めています。令和4年度に実施予定の中央アルプスにおける個体群復活事業をはじめとする生息域内保全事業の内容について、以下のとおりお知らせします。取材を希望される場合は、ご一読いただき下記連絡先までお願いします。

1.中央アルプス国定公園駒ヶ岳周辺における事業

 第二期ライチョウ保護増殖事業実施計画及び中央アルプスにおけるライチョウ野生復帰実施計画に基づき、環境省レッドリストにおけるダウンリストを念頭に置き、生息地を分散させ地球温暖化等による絶滅リスクを低減させるため、ライチョウが絶滅したとされる山岳における個体群復活試験を実施しています。中央アルプスでは平成30年8月に雌1羽が確認され、令和2年度には個体群の安定している乗鞍岳から19羽を移植しました。令和3年度には中央アルプスにおいて移植したライチョウ19羽のうち18羽が生存しており、すべての個体が繁殖に参加していました。また、飼育下で増やした個体を再び中央アルプスに戻すことを念頭において、那須どうぶつ王国及び長野市茶臼山動物園へ中央アルプスで繁殖した家族それぞれ1家族を飼育下に導入しました。令和3年秋の時点で中央アルプスに生息していたライチョウの数は約40羽と推定されています。これらの事業を受けて令和4年度については以下の事業を実施します。

(1)中央アルプスにおける生息域内保全事業

 令和4年に生存しているライチョウの個体数やなわばり位置を確認する調査を行います。その後、個体の生存状況やライチョウがなわばりを構えた位置に応じて、最大6家族をケージを用いて保護します(以下、「ケージ保護」という。)。ケージ保護の対象とした家族の雛が孵化した後は家族ごとにケージに収容して7月上旬から8月上旬まで家族を捕食者や低温から守り生存率向上に努めます。併せて、ニホンザルの追い払いや捕食者対策試験を実施し、ケージ保護を実施しなかった家族の生存率向上に向けた事業も実施します。これらの事業は、長野県をはじめとする関係機関や地域住民等と連携を図りながら進めます。また、中央アルプスにおいて広くライチョウの目撃情報を収集するため、株式会社ヤマップと連携しながら登山者からの情報を集めます。

(2)日本動物園水族館協会加盟動物園へ導入した中央アルプス由来家族の野生復帰事業

 令和3年度に中央アルプスから導入し、那須どうぶつ王国と長野市茶臼山動物園で飼育しているライチョウを繁殖させ、2園で合計6家族(那須4家族、茶臼山2家族)の繁殖を目指します。野生復帰を行う前に、雌親及び新たに生まれた雛に対し野生個体と類似した腸内細菌叢を有しているかどうかや、野生復帰させた後に中央アルプスに生息するライチョウに感染させてしまうような病原体を保有していないかなどを確認した上で、最大5家族と雄の成鳥1羽を中央アルプスに野生復帰させます。これは生息域外となる動物園において安定した繁殖を図り、再び中央アルプスに戻すことで個体群復活に寄与することを想定した計画です。家族を野生復帰できると判断した場合は、8月上旬にヘリコプター及び自動車を用いて移送を実施します。
 野生復帰させた家族は中央アルプスにおいて1週間程度ケージ保護により現地環境に慣らした後、野生環境に放鳥します。放鳥後は定期的にモニタリングを実施し、生存状況を追跡します。

2.妙高戸隠連山国立公園火打山(ひうちやま)周辺における事業

 ライチョウを取り巻く高山の環境を保全することを目的として、環境省及び新潟県妙高市では、妙高戸隠連山国立公園の火打山地区において、平成28年度より生息の阻害要因であると考えられるイネ科植物の除去等の作業を実施し本来の生息環境の回復を目指します。令和4年度は、令和3年度に実施した山頂直下試験区(50m×50m)及びライチョウ平試験区(60m×40m)の2箇所で事業を継続することに加え、ライチョウに好適な生息環境を増やすために現試験区に隣接した新たな試験区の設置も検討します。イネ科植物除去事業と並行して、試験区画内の植生の変化、ライチョウの利用状況等を調査します。

3.南アルプス国立公園北岳周辺における事業

 ライチョウの個体数の減少が著しかった南アルプス国立公園北岳周辺において、平成27年度から令和元年度までケージ保護を実施し、その結果、ケージ保護を開始した平成27年度から個体数が約3.5倍まで増加しました。一定の個体数が回復したため、令和2年以降はケージ保護を実施せず、北岳山荘及び北岳肩ノ小屋周辺において実施する捕食者対策を中心にモニタリングを継続することとなりました。令和3年度は令和元年度よりもなわばり数が減少していることが明らかとなりましたが、ケージ保護の再開はせず、これまで実施してきた捕食者対策を継続するとともに、新たな捕獲方法を検討したりするなどして対応する予定です。

【今年度事業の取材について】

◎上記1.については現地取材に制限があります。事前調査及びケージ保護の結果については定期的に信越自然環境事務所より情報提供を行いますが、現地にて取材を希望する場合は別途ご相談ください。動物園から中央アルプスへの野生復帰における家族移送時の現地取材(中央アルプス高山帯での取材)の受入れを検討しておりますが、多くの要因から実施の可否も含め移送予定日(8月上旬)が近づいた頃に再度ご連絡いたします。

◎上記2.については取材が可能です。

◎上記3.については非公開とします。

※上記各事業は、現時点での予定であり新型コロナウイルス感染症、山小屋及び気象条件等の状況により事業内容に変更が生じる場合があります。

※取材を希望される方は、事前に社名、代表者氏名、取材名簿、取材方法(写真、カメラ等の機材状況)、連絡先(電話、FAX、E-mail)を下記までご連絡の上、あらかじめ日程の調整をお願いします。なお、天候や現地の状況によっては直前に変更をお願いする場合がありますのであらかじめご承知おき願います。

【連絡先】
○中央アルプス国定公園及び妙高戸隠連山国立公園での事業(主に上記1.2)について
 信越自然環境事務所 野生生物課
  生息地保護連携専門官 小林 篤
 TEL:026-231-6573 FAX:026-235-1226  E-Mail:ATSUSHI_KOBAYASHI@env.go.jp
(〒380-0846 長野市旭町1108 長野第一合同庁舎3階)
○南アルプス国立公園での事業(主に上記3)について
 南アルプス自然保護官事務所
  自然保護官 雨宮 俊
 TEL:055-280-6055 FAX:055-280-6056  E-Mail:SYUN_AMEMIYA@env.go.jp

添付資料

図1.ライチョウが生息する主な山岳(事業実施場所参照用

■ 問い合わせ先
環境省 信越自然環境事務所(直通:026-231-6573)
所長:堀内 洋
野生生物課長:有山 義昭
生息地保護連携専門官:小林 篤