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信越自然環境事務所

報道発表資料

2017年06月01日
  • その他

平成29年度のライチョウ保護増殖事業について

環境省では[絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律]に基づき、文部科学省・農林水産省と共同で策定した「ライチョウ保護増殖事業計画」(平成24年1月)を踏まえ、平成26年4月に「第一期ライチョウ保護増殖事業実施計画」を作成し、効果的かつ効率的にライチョウの保護増殖事業を進めることとしています。同計画に基づき平成29年度のライチョウ保護増殖事業を下記のとおり実施します。

環境省ではライチョウが自然状態で安定的に存続できる状態をめざし、生息域内保全及び生息域外保全の2つを両輪として、主に以下の内容で調査や事業を実施しています。そのなかで、平成29年度に実施する事業についてお知らせします。

生息域内保全

①山岳毎の生息状況の把握

②減少の影響要因の解明

③ケージ内保護方法の技術確立及び実施

④遺伝的多様性に関する調査

生息域外保全

①ファウンダーの確保の技術確立

②ライチョウの飼育・繁殖技術の確立

1 南アルプスにおけるライチョウ保護増殖事業

南アルプスにおいて、保護増殖事業計画及び第一期実施計画等に基づきライチョウの保護増殖事業を実施し、当地域におけるライチョウの保全を進めます。

(1)赤石岳・荒川岳の生息状況調査(現地取材不可)

南アルプスのライチョウ生息域の核心部となる赤石岳・荒川岳においては、近年、詳細な生息状況調査がされていないため、平成26年度に実施した予備調査の結果を踏まえ、なわばり期を中心に個体の直接確認や生活痕跡確認によるなわばり推定調査を実施します。本調査は平成27、28年度と、調査時期直前の調査地に至る林道土砂崩れにより実施できておらず、平成29年度に延期となっています。

(2)ケージ内保護事業(現地取材不可)

孵化後の雛の生存率は降雨量、気温による影響が大きいことが指摘され、また猛禽類、キツネ、テン、オコジョ、ハシブトガラス等による捕食による影響も近年のライチョウの減少傾向の要因として考えられています。ライチョウの保全に資する技術検討の一環として、孵化後の雛の減少を食い止めるために、個体数の減少が著しい南アルプス地域の北岳において、平成27年度よりケージ内保護事業を実施しています。

1)平成28年度の実施状況について

ケージによりヒナの死亡率の高い生後約3週間、ライチョウ3家族を保護したものの、放鳥後1ヶ月間で15羽いたヒナが3羽となり、当地域でヒナがほとんど育っていないことがわかりました。また、放鳥前日にケージがテンに襲われたことも含めて、当地域では捕食によりライチョウの生息が脅かされていることが示唆されました。

ケージを襲うテン(写真提供:長野朝日放送)

2)平成29年度の取り組みについて

6月下旬から7月にかけてライチョウの家族を保護のために小型移動式ケージにいったん収容した後、大型固定ケージへ誘導しその後20日間程度のライチョウ家族の保護を実施します。

(3)捕食者対策事業(現地取材不可)

ケージ内保護方法と並行して試験的な捕食者対策の実施を検討し、当地域でのライチョウの減少要因の解明を行います。

1)平成29年度の取り組みについて

6月から10月にかけて、北岳山荘及び肩ノ小屋周辺において、ライチョウの捕食者と考えられるキツネ、テン及びイタチの捕獲を実施します。捕獲はカゴわななど動物を傷つけない方法を用い、捕獲された動物は山から下ろし飼育する予定です。実施内容については哺乳類の専門家を交え検討しており、モニタリングしつつ状況をみながら対応していきます。

2 乗鞍岳におけるカラス対策について

乗鞍岳において、平成28年度ファウンダー確保事業でカラスによるライチョウ卵の捕食が確認されました。このため、乗鞍岳におけるカラスの調査を実施しています。

(1)平成28年度の実施状況について

現地調査及びヒアリング調査を行った結果、当地域のカラスは乗鞍岳麓の三本滝周辺に常時滞在し、登山者・観光客の食べこぼし等を採餌し、観光バスが山頂方向上がると同時にバスに付いて山頂方向に上がるという動きをしていることがわかってきました。

(2)平成29年度の取り組みについて(現地取材不可)

6月に乗鞍岳山麓から山頂周辺においてライチョウ卵を捕食していると考えられるカラスの試験捕獲(数羽程度)を実施します。

3 火打山における協働型の環境保全活動

環境省及び妙高市では妙高戸隠連山国立公園の火打山において、ライチョウを取り巻く高山の環境を保全することを目的に、平成28年に引き続きイネ科植物の除去などの作業を実施します。

(1)平成28年度の実施状況について

環境省長野自然環境事務所及び妙高市が平成28年6月及び8月にイネ科除去作業と1984年に実施された火打山での植生調査の追調査を実施しました。

1)結果概要

1984年当時と比較して調査地における灌木の樹高が高く成長したことがわかり、灌木の広がりなど30年程度で火打山山頂周辺の植生が大きく変化していることが判明した。当時は遷移等が比較的少ない代表的な場所を調査地として選んでおり、変化を見るということで選定された調査地ではなかったものの、そういった場所でさえ、植生の変化が認められました。なお、イネ科植物の繁茂についての変化は、今回設定した雪田植生等の調査地における分析で明らかにしていく予定です。

山頂付近における同一場所でのお花畑の変化(上:1981年8月頃 、下:2016年9月2日)

(3)平成29年度の取り組みについて

1)イネ科除去作業(7月~8月)(現地取材可)

・設置した10m×10m程度の試験区においてイネ科植物の除去

・周辺植物の開花状況やコケモモ等の矮性低木の結実状況等

2)空中写真による植生変化の解析

・過去と現在の空中写真を比較すること40年程度での植生の変化を解析します。

4 その他の事業について

環境省では上記の事業のほかに、日本動物園水族館協会と共に実施している飼育下繁殖事業をはじめ、生息状況調査や遺伝子解析調査を実施する予定です。

5 現地取材に関するお問い合わせ

安全確保及び事業への影響がある事業については現地取材不可とさせていただきます。事業結果については追ってご報告させていただきます。なお、現地取材可となっている事業についてはE-Mailにて下記までお問い合わせください。

E-Mail : MAKOTO_FUKUDA@env.go.jp

【問い合わせ先】

○長野自然環境事務所 野生生物課

  自然保護官 福田 真 TEL:026-231-6572

(長野市旭町1108 長野第一合同庁舎3階)