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アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2012年3月28日

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2012年03月28日人の交わりにも季節あり

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー 玉津佐知子

 藤前干潟名物のハマシギの群舞が見られるようになりました。
群れをなして旋回、上昇。太陽光を受けた翼は、その角度ごとの輝きを放ち、万華鏡のように形を変えていきます。「自然に勝る芸術はない」。この時期になると、誇らしげにハマシギを眺めてきたのですが、この春はこれまで特別な思いで鳥の楽園を眺めています。

   

   【春は出会いと別れの季節でもある】

 実はこの3月で名古屋自然保護官事務所を退職することになりました。その理由は、健康上の問題からなのですが、踏ん切りがつかない時に、背中を押してくれたのが、民俗学者にして植物学者としても知られる南方熊楠が残した「人の交わりにも季節あり」という一文でした。
 この一文は、熊楠が親友である中国の革命家・孫文にあてた書簡の一節です。
熊楠31歳、孫文32歳の時、二人は、イギリスで出会い、硬い友情を誓います。
 その後二人は、各々の分野で才能を開花させ、中でも孫文1911年のいわゆる辛亥革命で臨時大統領に押され、中華民国を発足の立役者となるのですが、その後、熊楠に会うことを強く望んだ孫文に充てた手紙に書かれていたのが、冒頭の「人の交わりにも季節あり」なのです。
 その意味は、青年期の出会いを春だとすれば、もうわたしたちは大人になって別の世界に生きている。あの友情の季節は終わったのだ、となるのでしょうか。
 孫文は、熊楠の気持ちを察し、会うことをあきらめたといいます。

   

   【ハマシギは、藤前干潟の代名詞となっている】

 思えば干潟には、季節ごとの出会いと別れがあります。渡り鳥同士の出会いと別れ、渡り鳥を求めて訪れる人と人の出会いと別れ。
渡り鳥が北へ旅立ち次の世代を残すように、人もまた中継地で出会いと別れを繰り返しながら、成長をしていくのかもしれません。
またいつか一回り大きくなって、藤前干潟に帰ってきたいと思います。それまで皆様お元気で。お世話になりました。

   

   【藤前干潟にて。左から野村AR,佐藤R】

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