ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [中部地区]

中部地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2010年10月14日

2件の記事があります。

2010年10月14日中部生物多様性物語Ⅱ 絶滅から生まれた名物

国指定藤前干潟鳥獣保護区 名古屋 アクティブレンジャー 玉津佐知子

 名古屋に「守口(もりぐち)漬け」という名物があるのをご存じでしょうか? 
 「えっ!エビせんべいしか知らない?」 実は、そのエビせんべいときしめんと並ぶ名古屋の名物が「守口漬け」。名古屋駅のお土産売り上げベスト3にランクインするほどの人気なんです。
 さてそんな名古屋を代表する味の「守口漬け」ですが、名古屋生まれかというと、さに非ず。発祥の地は、河内の国の守口(大阪府守口市)。守口周辺の伝統野菜である守口大根を使って作られたため、その名が付いた、と言われています。
 それがなぜ、名古屋名物になったかというと、実はここから生物多様性が関係してきます。

    

  *名古屋名物の「ひつまぶし」に必ず付いている守口漬け。
   写真は、名古屋駅で販売されている「日本一名古屋の抹茶ひつ
   まぶし弁当」。協力:株式会社だるま。

 守口大根は、16世紀から20世紀の初頭にかけて、現在の大阪府大阪市から守口市にかけての淀川沿いで栽培されていました。
 守口大根に適しているのは、柔らかく均質な土壌が堆積し、中に石ころや固い層を含まず、土壌の通気性がよく、地下水位が低い場所。それを満たすのが、守口周辺の淀川周辺だったというわけです。
 守口大根は、主として守口漬けとして使われ、あの豊臣秀吉や千利休も食し、やがて東海道の「守口宿」の名物と称されるようになりました。 
 しかし19世紀に始まった淀川の河川改修工事で、河川沿いの環境は激変。これにより守口周辺での守口大根は絶えてしまいます。 
 大阪市守口市の産業農政課の担当者の話によると、いま淀川周辺を掘り起こしても、堆積層がまったく見あたらないそうです。このことから、いかに河川改修が淀川周辺の環境に影響を及ぼしたかを想像することができます。
 守口大根の消滅とともに、絶えてしまった守口漬け。しかし遠く離れた濃尾平野でよく似た種の大根があることから、再生が試みられます。 

    

  *守口大根の日本一の産地を支える「木曽川」。

 栽培の地となったのは、淀川沿いとよく似た環境の木曽川沿いの愛知県丹羽郡扶桑町と、長良川沿いの岐阜県岐阜市。今、扶桑町は、守口大根の生産量日本一の町となり、この二つの産地が、名古屋名物「守口着け」の製造を支えています。
 名古屋に来たら、ぜひご賞味ください。

    

  *これが守口漬け。材料の守口大根は、約1メートル50センチの
   長さがあることから、日本一長い大根と言われている。


 

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2010年10月14日400年前から続く道

上信越高原国立公園 戸隠(~2015.3.26) アクティブレンジャー 赤梅 琴美

紅葉も始まり、ここ戸隠では秋の観光シーズン真っ盛り。

霊山・戸隠山の麓に鎮座する戸隠神社にも、
連日、多くの方々が観光に訪れています。

一番の見所は、なんといっても・・・この杉並木。
この荘厳な並木道は、戸隠神社の奥社へと続いています。


<参道は約2キロ。随神門から奥の1キロ弱に渡って杉並木がそびえます。>

遠い遠い昔、神様が『天の岩戸』を放り投げて出来たのが戸隠山とか。
この岩戸を放り投げたとても力の強い神様こそが、奥社に祀られている
『天手力雄命』(あめのたぢからおのみこと)です。

一方、杉並木が植えられたのは、さかのぼること400年前の江戸時代。
遠い遠い昔から多くの人々を迎えているのです。

この『戸隠のシンボル』とも言える杉並木を保存し、次の世代へ継承するために、地元の皆さんによる活動が行われています。

杉並木と奥社周辺に生える木の、樹種を調べ、樹径を測り、
そして生えている場所を地図に落としていきます。
一本一本・・・とてもとても、根気のいる作業!!


<計測作業中。杉のウェストサイズはどれくらい?>


でも、そうやって出来た樹木地図からは、色々なことが見えてきます。
『こんなところに、こんな木が!』という発見も。

ちなみに、この杉、仲良く並んで立っています。
測ってみると、幹の太さが(小数点以下まで!)全く一緒でした。


<仲良し兄弟杉?>


同じ杉でも、幹の表情が違ってなんだか面白いですね。
近くに立っているけれど、それぞれ違う人生(木生?)を
歩んできたのでしょうか・・・


今もなお、神秘的な雰囲気を漂わせる、戸隠の杜。
これからも、ずっと未来へと受け継いでゆきたいものです。






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