平成24年度中部山岳国立公園上高地地域外来植物分布調査結果等について
2013年07月25日
平成24年度中部山岳国立公園上高地地域外来植物分布調査結果等について
長野自然環境事務所
環境省上高地自然保護官事務所では、平成24年度に中部山岳国立公園上高地地域において、信州大学山岳科学総合研究所及び上高地パークボランティアと協働で、外来植物の分布調査を行いました。
1.経緯
中部山岳国立公園上高地地域には、年間約140万人が訪れ、観光客や登山者、資材運搬・工事用車両等の移動に伴って、多くの外来植物が侵入・定着しています。上高地地域の外来植物については、環境省に登録したパークボランティア(上高地パークボランティア)によって、平成11年から定期的に分布調査が行われ、これまで40種を越える外来植物が確認されるとともに、パークボランティアや学生ボランティアが中心となった除去活動が行われてきました。一方、効果的な外来植物対策の立案・実施には、どこにどの種がどれぐらいあるか、あるいは、増えているか、減っているか、といった定量的かつポイントでの位置情報が重要となります。このため、平成24年度に、環境省上高地自然保護官事務所、上高地パークボランティア、信州大学山岳科学総合研究所(渡邉修准教授)が協働で、GPS機能付きのデジタルカメラを用いた簡易な調査手法を用いて上高地地域の外来植物の分布調査を行いました。
2.外来植物調査(平成24年度)
- (1)
- 調査方法
- ○
- 平成24年6~7月を中心に、上高地地域の平坦部(釜トンネル上~橫尾地区)における歩道・車道沿い、駐車場、園地、ホテル、旅館等の敷地内をくまなく踏査し、GPS機能付きのデジタルカメラで外来植物の写真撮影を行い、位置情報等を記録。なお、外来植物が連続して群生している場合は、20歩おきに撮影。
- (2)
- 調査結果
- ○
- 2,500を超える地点で、国内由来を含む55種の外来植物を確認。
- ○
- 確認地点数が多いのは、エゾノギシギシ、ヒメジョオン、シロツメクサ、オオスズメノカタビラ、セイヨウタンポポ、メマツヨイグサ、ナガハグサの順。
- ○
- 侵略性が高い外来種として外来生物法に指定されている特定外来生物1種(オオハンゴンソウ)、要注意外来生物18種(エゾノギシギシ、ヒメジョオン、セイヨウタンポポ等)を確認。
- ○
- 外来植物が多く分布するのは、日当たりの良い広場(園地)や工事用道路沿い等。
- ○
- 大正池~河童橋は多くの種類の外来植物が確認されたが、明神~徳沢~横尾は種類が減少。
- ○
- エゾノギシギシとセイヨウタンポポで、在来種との交雑個体を確認。
3.外来植物対策(平成24年度)
- (1)
- 除去活動
- ○
- 上高地自然保護官事務所、中信森林管理署、自然公園財団上高地支部、地域関係者等が日常的に施設周辺等の外来植物を除去。発見したオオハンゴンソウ(特定外来生物)はすべて除去。
- ○
- 下記団体がボランティア活動として合計800kg以上を除去。
- ○
- 除去活動にはゼッケンや腕章を着用し、抜き取り又は刈り取り(地上部又は花・種子のみ)で、袋詰めの後、公園外に搬出。
表2 平成24年度上高地地域における外来植物の主な除去活動
実施主体 場所 時期 参加者数 上高地を美しくする会 上高地集団施設地区 8月 50人以上 上高地パークボランティア 上高地集団施設地区 6~10月 のべ54人(計8回) 上高地ネイチャーガイド協議会 橫尾地区 10月 12人 立教大学 上高地集団施設地区 8月 10人 関西学院大学 上高地集団施設地区 9月 15人 - (2)
- 侵入防止対策
- ○
- マイカー・観光バス規制が行われている上高地への長野県側の乗換拠点施設となる「沢渡ナショナルパークゲート」に、靴底に付着した外来植物の種子の除去を目的として、ブラッシング効果の高い種子除去マットを設置。
- ○
- 上高地への唯一の車両の侵入経路となる県道上高地公園線の釜トンネルに、タイヤに付着した外来植物の種子の除去を目的として、地下水を常時流水。
外来植物除去活動 |
種子除去マット |
地下水によるタイヤの洗浄 |
4.今後の取組(平成25年度以降)
- ○
- 平成24年度の調査結果を基に、種ごとに「危険性」「根絶の可能性」「種の同定」の3つの判定基準で、対策の優先度判定(SABC)を行った(表1参照)。
- ○
- すでに侵入・定着した外来植物については、上記の優先度判定に加え、下記①~④の視点を考慮し、地域が一丸となって、効果的な除去活動を継続する予定。
- ①
- 特定外来生物(オオハンゴンソウ)を根絶させる。
- ②
- 高山帯・亜高山帯にオオバコ以外の外来植物を侵入・定着させない。
- ③
- 侵略性の高い外来植物(要注意外来生物等)の生育範囲を縮小させる。
- ④
- 上高地に侵入した外来植物の種類数を減少させる。
- ○
- 新たな外来植物の侵入に対しては、種子除去マット等の侵入防止対策に加え、早期発見・早期除去が重要となるため、平成24年度と同様の分布調査を定期的に実施するとともに、調査結果を基に、効果的な除去活動に向けた更なる検討を行う予定。
(添付資料)
表1 上高地地域外来植物一覧(確認地点数順) [PDF 35KB]
図1 上高地地域外来植物分布図(全体) [PDF 80KB]
図2 上高地地域外来植物分布図(確認地点数上位10種) [PDF 720KB]