中部地方のアイコン

信越自然環境事務所

報道発表資料

2022年11月08日
  • 報道発表

令和4年度10月現在の中央アルプスにおける野生復帰ライチョウの生存状況及び生息個体数について

 環境省では、中央アルプスにおいてライチョウ個体群復活事業を進めています。今年度の8月までに中央アルプスで自然繁殖した家族のケージ保護や、動物園で繁殖させた家族の野生復帰を実施してきました。特に、動物園で繁殖させた家族を再び山に戻した野生復帰事業はライチョウにおいては日本で初めての試みでした。
 野生復帰させた3家族(雌親3羽と雛16羽)と成鳥3羽(雄1羽と雌2羽)の計22羽のうち、10月末現在2家族(雌親2羽と雛7羽)と成鳥1羽の計10羽の生存が確認できています。
 中央アルプスで生まれた雛については10月末までに48羽に標識(足輪の装着)を行いました。今年中央アルプス全域で42羽の成鳥が繁殖しており、野生復帰させた個体のうち、生存が確認できた10羽を合わせると100羽程度が生息していると考えられます。
 次年度の繁殖期には、中央アルプスにおけるライチョウ野生復帰実施計画内で目標設定した30~50つがいに届く可能性があります。

1.野生復帰個体数とその後の生存状況(10月末現在)について

 8月10日に那須どうぶつ王国及び茶臼山動物園から以下の個体を野生復帰させました。車とヘリコプターで各園から中央アルプスへ移送し、その後現地の環境に順化させた後8月14日までにすべての個体を放鳥しました。

▶野生復帰個体内訳(矢印の右側の数が10月末の生存状況)
那須どうぶつ王国
A家族 雌成鳥+雛7羽 → 雌成鳥+雛6羽
B家族 雌成鳥+雛5羽 → 放鳥後確認できず
C家族 雌成鳥+雛4羽 → 雌成鳥+雛1羽

19羽を野生復帰させ、少なくとも9羽が生存しています。

長野市茶臼山動物園
雄成鳥 1羽 → 放鳥後確認できず
雌成鳥 2羽 → 雌成鳥1羽

3羽を野生復帰させ、少なくとも1羽が生存しています。

2園合計で22羽を野生復帰させ、10月末現在、確実に生存している数は10羽です。

2.その他の個体の生存状況

 今年6月までに将棋頭から南駒ヶ岳までの範囲で17なわばり41羽が成育していることが明らかになっていました。
 6月末以降に中央アルプスで生まれた雛の標識調査は8月末から開始し、現在までに48羽の雛に標識(足輪の装着)しました。また、未標識の成鳥についても8月以降に1羽標識しました。
 6月までに確認した成鳥がすべて今も生存していると仮定すると、8月以降に標識した1羽と合わせ成鳥42羽、標識済の今年生まれの雛48羽、生存が確認されている野生復帰個体10羽、合計100羽となります。10月末時点ですべての成鳥の生存状況を確認できていないこと、標識できていない雛数が確認できていないことからあくまで推定数です。標識できていない雛数が多い場合は100羽を超える数が生息している可能性があります。

3.今後について

 10月末時点をもって、本年度の中央アルプスにおけるモニタリング調査を終了しました。ライチョウの生息個体数は繁殖期に生存している個体数を基準としているため、今回の数字はあくまで暫定値となります。一方で、これまでの研究からライチョウは冬期の生存率が高いことが明らかになっているため、現在生息している個体の多くが生き残る可能性があります。よって、次年度には中央アルプスにおけるライチョウ野生復帰実施計画において中央アルプス復活事業の目標としてある30~50つがい(75羽~125羽程度)に到達する可能性があります。
 なお、令和5年度の取り組みについては今年度中に実施される保護増殖検討会を経て決定されます。

お問い合わせ先

信越自然環境事務所野生生物課 小林(026-231-6573)